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「インスリンの働き」初級講座⑤ 体脂肪の合成を促す

「インスリンの働き」初級講座
イントロ+まさかの修了書授与
②血糖値を下げる
③ブドウ糖の取り込み
④タンパク質の合成を促す 
⑤体脂肪の合成を促す ←今回
⑥語る前にセリフを覚えましょう
⑦インスリンが多すぎると困るわけ

今回のテーマは…

インスリンが
体脂肪を増やす!


このネタは、以前もちょこっと出てきました。

インスリンによって、ブドウ糖が脂肪細胞に取り込まれ、体脂肪に変わる、というお話ですね(初級講座③)

ブドウ糖以外に、体脂肪を増やす材料がもう一つあります。

当然、答えは「脂肪」です!
どちらかと言えば、こちらの方がメインの材料です。

今回は、食事から摂った脂肪とインスリンの関係について、書いてみます。

今回もインスリンのお仕事は、取り込み促進合成促進


食事から摂った脂肪は、まず倉庫へ

脂ののったお肉とか、ミックスフライとか、脂肪たっぶりのお料理を食べたとしましょう。

当然、食後は、血液中の脂肪の量が増えます。

中性脂肪は、脂肪酸を3本たばねたもの

ちなみに、食品中の脂肪の約9割は中性脂肪なので、血中に増えるのはもっぱら中性脂肪です。

食後の中性脂肪値は、食前の2倍くらいまで高まります(ピークは食事をしてから2時間後くらい)。

増えすぎたものは、ちょうどいい範囲に戻さないといけません。

そこで、ひとまず倉庫にいれておくことになります。中性脂肪の場合、倉庫となるのは脂肪細胞です。

脂肪細胞は、大容量の倉庫

脂肪のちょっとやっかいな事情

今までのパターンと同じで、細胞の中に送り込むところでインスリンが働いています。

例によって、一歩ずつ足元を確かめながら進んでいきましょう。

脂肪の場合、今まででてきたブドウ糖やアミノ酸とは少し事情が異なります。

まず、中性脂肪はバリバリの脂肪なので、水と反発します。からだの中はほとんど水の世界ですから、自由に動けません。

そこで、血液中を移動する時には、中性脂肪はリポタンパクの中に詰め込まれています。

リポタンパクは、脂肪をのせて血液中を移動する船のようなものと考えてください。

「リポタンパク」は通称。ちゃんとした名前は「リポタンパク質」

リポタンパクの構造は、こんな感じ。
内部は、油の分子がギュウギュウに詰まっています。

水となじむ分子が表面をカバー

よく名前を聞くリポタンパクは、LDLHDLですね。
そちらは、コレステロール(これも油の分子)を運ぶ担当です。

今回登場しているリポタンパクは、中性脂肪を運ぶ担当の方。
一応名前を紹介しておくと、VLDLとかカイロミクロンになります。

やっかいな事情 その2

さて、水の苦手な中性脂肪ですが、船に乗せてもらうことで、ひとまずスイスイ動けるようになりました。

でも、その先にまた問題が……

中性脂肪が「脂肪細胞(倉庫)に入りたい」と思っても、そこまでは船が運んでくれないのです。

「お客さん、アッチはこの船の周遊ルートから外れてるんですよ」

このリポタンパクは、血管の壁を通過することはできません。
血管の向こう側にある脂肪細胞には行き来できないのです。

この血管(毛細血管)は1層の細胞でできている

同じカットですが、水と油で色分けしてみました。

細胞膜は脂肪でできている。脂肪細胞は約75%が脂肪

黄土色ゾーンは油の分子には居心地の良い、油の世界です。

それ以外の水色の部分は、すべて水の世界になります(間質液は、細胞を浸している液体)。

リポタンパクを出たら、そこから先はほとんど水だらけ

中性脂肪たちは、泳げません。
と言うか、水の中に入ることさえできません。水にちょっとふれただけで、反発してはじき飛ばされてしまいます。

すぐ目の前に脂肪細胞があっても、自力ではとてもたどりつけません。

脂肪を取り込むメカニズム


では、どうするか?

脂肪を取り込むための仕掛け
が用意されています。

それが、リポタンパクリパーゼという酵素です。

リポタンパクリパーゼは、血管に張り付いている

このリパーゼは、中性脂肪のつなぎ目をチョキチョキ切って、脂肪酸にします(中性脂肪は脂肪酸の3本パック)。

脂肪酸なると、多少は水になじみます。
リポタンパクから抜け出して、脂肪細胞へ泳いで渡ることができます。

毛細血管は極薄(細胞1層)なので、スルッと通過できる。

ようやく、インスリンの登場

この取り込みのプロセスで、インスリンが働いています。

脂肪細胞の細胞膜には、お馴染みのインスリンの受容体。
受容体にインスリンがカチリをはまると……

インスリンの働くパターンはいつも一緒ですね

脂肪細胞の中でリポタンパクリパーゼの合成が促進されます。

このリパーゼは、血管で作られているわけではなく、脂肪細胞で作られ、血管細胞へ送られているのです。

省略していますが、受容体から活性物質は出てますよ

細胞に脂肪酸を取り込んだら、3本ずつまとめて中性脂肪にします。
この合成作業も、インスリンによって促進されています。

ここも活性物質出てますよ〜 安心してください

ということで……

脂肪細胞はインスリンに
とってもお世話になっています。

インスリンがないと、中性脂肪を
うまく保管管理できません。

ですから、初期講座④では札を3本上げていたわけですね。

脂肪細胞が集まってできているのが、脂肪組織

インスリンは多すぎても少なすぎても困る

冒頭で出て来たフレーズを思いだしてください。

インスリンが
体脂肪を増やす!

実は、このこと自体は特に問題はありません。

食後は中性脂肪値が通常の2倍くらいに高まります。それを血中から取り出して一時保管する(=体脂肪にする)のは必要なことだし、自然な成り行きです。

ただ、インスリンを過剰に分泌させる食事をしていると、体脂肪が不自然に増えてしまいます。これは、好ましくありません。

特に体脂肪を増やしやすいのは、糖質と脂質の両方が多い食事です。

当然、砂糖+脂肪もマズいですよ!

このパターンの食事だと食後は血液中に……
 中性脂肪が増え
 ブドウ糖が増え
 インスリンが増えますね。

インスリンが増え過ぎると、リポタンパクリパーゼも量産されます。血液中の脂肪が景気よく取り込まれ、体脂肪が一気に増えてしまいます

減量したい人には、悪夢のような状況…


逆に、インスリンが少なすぎても
困ったことになります。

糖尿病患者さんは、インスリンを十分に分泌することができないので、リポタンパクリパーゼの数が少なくなります。

そのなると、血液中の中性脂肪を倉庫へ移せません。

結局、中性脂肪は血液中を漂い続けることに……

脂肪細胞に入れない中性脂肪が血液中にだぶつく結果になり、中性脂肪値が上がってしまいます。

糖尿病のある方は、脂肪の摂り過ぎに注意です

初級期講座⑥に続く……


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