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小説とか詩歌とか

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幻視者になりたい。
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#文章

【短歌】天使が言った 他

【短歌】天使が言った 他

マジカル☆ロリィタ
満月がいちごの色に染まるとき覚醒したるマジカル☆ロリィタ
ミルフィーユみたいにパニエを重ねては午前零時に飛びたつわたし
メイドって呼ぶなお前のためじゃないシャドウもリップも愛想笑いも
大人ってただの仕掛けよ綿あめでお腹をみたしたい日もあるの
お茶会はあなたをずっと待つために開かれてるのはやく見つけて
封蝋がわたしの熱で溶かされてどこにも行かぬ手紙を閉じる
細やかなフリルの海にた

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【一行小説】リカちゃん人形の分娩室

【一行小説】リカちゃん人形の分娩室

1.灯台から身を投げた女が、まっ赤な人魚となって発見された。

2.解体書にしたがうと、始めに蝶の唇をきりおとしたほうが良いとある。

3.メッキのはがれた回転木馬は、真夜中になると廃線をわたり、本物の馬のつがいを見にいった。

4.あの眼医者は視力検査で昆虫と鳥の種類ばかりを当てさせる。

5.ないはずの四〇四号室が煙のようにあらわれて、さみしいひとを閉じこめてしまうという噂だ。

6.薄いカー

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【短編】鳥かごのなかの少年たち

【短編】鳥かごのなかの少年たち

 ……君が人間だったらよかったのにね。って、カケルが言ったから、ぼくはそのとおりになった。夜のあいだだけ、人間になった。どうして昼間は元のすがたのままなのか、考えるまでもなく、彼の言葉が不完全だったからなのだけど、せっかく鳥かごから抜けられたのだ。外へ出てみたい。ぼくはカーテンを引いて、いつもカケルがやっているように窓を開けた。ベランダに足を踏みいれてあたりを見まわす。見わたすかぎり、知らない形ば

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【短編】まよなかデパート

【短編】まよなかデパート

 狭いひとり用の寝台のなかで、ふたりの鼓動が響きあっている。おぼつかない指先どうし、私たちはそれぞれの輪郭に触れあっていた。まだ裸になっていないのに、彼の身体は冷たい。冷たくて、しっとりとしている。冬のはりつめた空気みたいだ。
「新しいのにしようかな」
 窓から射す月のひかりを見て、私はつぶやいた。
「なにを」
「カーテンを。一緒に暮らしていくならさ、もっと新しくて特別なものが欲しいでしょ。ふたり

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