『YI STUDIO の名言散歩』雑感その3

 私は現在『YI STUDIO の名言散歩』という場所で名言集を作っている。これについて雑感を書いているところ。

 さて、噂については「いかにもあの人なら言いかねない」「あの人のキャラに合うセリフ」というのがポイントである。

 さらに噂の主人公は、噂を広めるグループの人間の知識上に共通に存在する人間でなければならない。
 近所のあの人ならあの人自身に確かめて「なんだ本当の所は事実ではないのか。あー誤解でごめんね。」ですむが、有名人となると身近な人とは限らないから「皆知っている人だが事実をすぐに確かめる事は困難である」ということが何日間も起こって来る。
 そうなると日数がたつにつれ噂だけがどんどん広まるが、本当の事実を確かめる行為はこの期間中なされないままということになる。
 有名人自身だって、自分も楽しめるようないい噂なら、事実でなくても放置して、「実際の自分とは一寸違うが有名であるかっこいい自分の一人歩きの姿」これを巷の人間と共に楽しむだろう。
 うまく庶民を操作して「有名人キャラ」としてのキャラクター像をこしらえてこれをさも事実のように広めておく、自己プロデュースがうまい、あるいは事務所などのプロデュースがうまい有名人だって存在する。メディアなんていくらでも事実からの距離は作れるのだ。
 現在のタレントやアイドルは、このあたりの操作作業が非常にうまい人達である。事実もきっとまざっていて、本当の姿と仕事上での姿の見せる分量をうまくコントロールしていて、人気者として君臨している。

 現在の有名人は自分でSNSさえ駆使できるのである。

 また有名人らしく自らを創作することさえ可能である。(要するに操作したり創作する能力を本当に高いレベルで自分で所有していれば、可能であるということになる。またこの辺りの理屈を、こうして私は説明する能力については、ある程度持ち合わせているかもしれない。しかしSNSの世界でわざわざ自分自身の「皆に定着させたいイメージ」を広める労力については全く持ち合わせていないのと、あまり興味がないので、せいぜいここで≪雑感≫をふと思いついた日にそっと書く程度なのである。そのかわり人気取りやウケ狙い目的で、わかりやすいネタだからといって、とりあげて大袈裟に騒いだりする人間ではない。派手なばかりで中身の伴わない行動をしなくても、今まで私の思う価値観に寄り添ってくれる親しい人々は、変わらず必ずリアルでは一緒にいてくれたのだから、自分の中ではまあ納得できているかなとは思っているし、今の所こんなものなんだろうと思っている。もしもなんだか周りにいた人がいなくなっていく、とかそういう経験をするようになったら、その時は改めて自分を振り返る事だろう。)

 しかしマリー・アントワネットはSNSのない時代に存在していたので、言い訳や事実ではないという主張を側近にしか言えなかった。

 この可哀想な主張を、マリー・アントワネットの心底味方とは限らない側近たちがどう料理するかは藪の中である。またマリー・アントワネットは、側近たちが自分の良心と闘うほどの人物として果たして値するかどうかという問題が存在した。側近がどう事実を扱ったかは、後世の人間に伝わったおもしろおかしい彼女に関しての噂が示しているのである。
 ただし国民に憎まれた彼女の死因はあまりに悲劇的である。

 彼女はいかにも当時の国民の気持ちを逆撫でしそうなキャラクターのイメージだったのだ。
 また誤解を事実ではないという主張を周辺の人間に守ってもらう力がなかったのである。第一当時の宮廷の外にいる庶民ともなれば、バルコニーで手を振る王族を見る機会があっても、言葉を直接交わせるわけがないのだから、その人柄を知りうる手立てはないのである。

 では彼女の夫であるルイ16世はどうであったか。

 同時代の人間でしかも夫婦であるし、当時の権力者の国王の身分であるが「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない。」なんて彼のセリフとして広まらなかったし、別に彼が「首飾り事件」の関係者として、たとえばマリーの為にとあの首飾りを欲しがったとか、そういう話で広まったりしているわけではない。
 仮の話として、夫婦なんだから一緒におやつをいただきながら「あの首飾り豪華だったしやっぱ買う? あ、もうパンないの? 今夜はもうこのおやつ食べたら寝よっか?」とかあいつは言ってやがったと噂を広められても別におかしくはなかったのだ。
 国庫を危機に至らせた原因として槍玉に挙げられた、マリー・アントワネットの最も近辺に居て、王族としてほとんど同じ立場でいたのにもかかわらず、この噂の種にされなかったくらいだった。周辺の人間はマリー・アントワネットのすぐそばにいるルイ16世に対し、おもしろおかしい悪意のある噂を流さない程度には彼を嫌っていなかった、といえるのだ。
 しかし気の毒なのは、ギロチンの改良について意見を述べるくらいこの方面に強かった彼の死因であった。

 その人が言ったとされる言葉と、その人の人柄のイメージは、一致していることで広まりやすいのではないか。さらに革命直前であったから、フランスの人々は非常に不満を抱えていた状況下にあった。実際にはフランスの国庫は16世の治世以前からとっくに深刻な赤字だったので、別にマリー・アントワネット一人が贅沢三昧で使い切ったわけではない。有名人が人気を失うと、タイミングの悪い時はこんなことにまでなるのだろうか。

 惜しみなく不満は論理性を奪ふ。

 このような領域を扱ったものはあるようなので、手に入れば読みたいなという程度の時点で、私は単に今つらつらと書いてみただけなのだけれど、とにかくこの時代の有名な王家夫妻の例は、私には非常に印象的なのである。

 マリー・アントワネット(1755-1793)
 ルイ16世(1754-1793)

『YI STUDIO の名言散歩』雑感その1
https://note.mu/yistudio/n/nfd0747fa9c28
            雑感その2
https://note.mu/yistudio/n/n9e437c4e7ed0
            雑感その3
https://note.mu/yistudio/n/na75154623edd
            雑感その4
https://note.mu/yistudio/n/n92c04a701770
            雑感御礼1-4
https://note.mu/yistudio/n/n1554d8d5d37c


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