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YellowHouseロゴデザインについて

デザイン事務所を作ろうと思い立ち、次の日にはすでに即席のロゴができていた。思いついてからの行動が早いのは、ぼくの数少ない長所のひとつである。

屋号については悩まなかった。覚えやすく、デザイン事務所らしい名前。それでいてストーリーがあるものがいい。

そういった条件から逆算して事務所の名まえはゴッホの絵画「黄色い家」にちなんで「Yellow House」に相成った。ゴッホがアルルに築こうとした貧しい芸術家同士の相互扶助的理想郷を、オンライン上で築こうと考えたのだ。理想をいえば、ぼくと同じようにスキルや才能を持ちながら世界とうまくやれない人材を集めて協力しあえるような事務所にしたかった。なんか社会主義っぽいですね……ちなみにいま、ぼくはひとりでやっているんですけど。

名刺プレビュー

上はロゴデザインと同時進行していた名刺デザイン。QRでwebサイトに飛ばす、裏面はロゴだけ、電話番号とメールアドレスはアイコン化して文字情報を可能なかぎり削ぎ落す、という基本設計は共通で、何パターンか案出。いちばん下が決定案の表裏だ。

デザイン候補を見返すと、シンボルマークである「家」をどう表現するかで悩んだあとが読み取れる。最終的には子どもでも描けるようなごくシンプルなものを採用した。あと、名刺という小さな枠組みのなかでどこまでデザイン要素を盛り込めるかみたいなのは試した、けどけっきょくいちばん余白を大きめにとった形に落ち着いている。ぼくとしてはまいにち目にするものなので、目を引くものより飽きないデザインにしたかったのだ。

ちなみに予想どおりではあったけど、名刺を渡すと「不動産屋さん?」って言われることが多くて閉口した。ただ、屋号はYellow Houseのほかには考えられなかった。だいいち、社名を考えるのに何日もかけているわけにもいかない。仕事はこれから山積みなのだ。将棋でも、熟考するより直感の一手が優るというし。いや、考えるのが面倒だったわけでは、けっしてない……。


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で、さらに翌日にはwebサイトができていた。えー。これは、もう、多動とかいう一種の病気なのかもしれない。なお、原始人みたいにタグを手打ちしている……おいおい。HTMLとCSSがわかるぶん、文明の利器wordpressがぎゃくに使いづらいんすよね……これはまあ課題にするとして。

骨組自体はすぐにできたけど、同時進行で仕事の案件をいくつか獲ってきてもいたので、完成といえるまでには時間がかかった。仮にもデザイン事務所のwebサイトである。サイト自体が、ポートフォリオになっていなければならない。だから、シンプルな作りにしているものの、デザイン面でも技術面でも力を入れたつもりである。申し訳程度にjQueryで動的要素を入れたのも、そういうやらしいアピールなわけです。

配色についてはロゴ、名刺、webサイトと、すべて黄色×白×グレーの3色でまとめている。思えば、デザインするとき黄色をよく使うんですよね、ぼくは……。黄色ベタ塗りにimpactとか、一点イラストとか。

イラスト練習

思えば、子どものころから黄色が異常なほど好きだった。大人になったいまでも、黄色を効果的に用いたアート・ワークにはとても惹かれる。

▼セックス・ピストルズの名盤「勝手にしやがれ」。あまりに有名。


▼ビートルズの「イエロー・サブマリン」


▼SF文学の最高峰ヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞した、文学とアメコミの融合「ウォッチメン」のアート・ワーク


▼チーズはどこへ消えた?とかもいいですね。

ぼくのイメージでは、黄色は明るくポップで幼児性を示すとともに、どこか「狂気」を内包する色なのだ。たとえば、精神病者を連行する「黄色い救急車」なんて都市伝説がある。シャーロット・パーキンス・ギルマンによるサイコ・ホラー小説「黄色い壁紙」。ガストン・ルルーの「黄色い部屋の謎」。そもそも黄色を愛した画家ゴッホも自殺しているし。そうした色の二面性に惹かれていたのだろう。

古来より、キリスト教社会では、黄色は忌み嫌われる色だった。中世の宗教画をみても、裏切り者ユダの衣服は黄色で描かれることが多い。ナチス政権下においては、ユダヤ人は黄色い星を身につけさせられた。偉大な芸術家たちが好んで黄色をアート・ワークに用いたのは、その色がアウトサイダーの象徴、体制への反逆の旗印だったという背景もあるんじゃないか。これはぼくの考察。ゴッホはもともと牧師だし、そういう意識がないわけないと思うんだよな。ますます、世界の流れに逆らってひとりでデザイン事務所をやろうって身には、ふさわしい色だ。

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最後に、Yellow Houseのロゴフォントについて。ロゴフォントには最初、Source Sans Proを使っていた。ただ、最終的にはFuturaに落ち着いている。ミーハーですね。。大好きなVolkswagenの広告で使われてるやつだ。かわいい。もちろん、造形の完成度や使ってるだけで通ぶれるって理由で選んだわけではない。Futuraは、工芸・写真・デザイン・建築の総合教育を行ったドイツの芸術学校バウハウスで生まれたフォントだ。その理念は、産業と芸術の融合。一種の理想郷をめざす姿勢は社会主義と結びついて、Futuraは戦時下においてナチスからの弾圧を受けた――だけどその混乱を生き抜いて、アポロ11号の銘板に刻まれ月に行く栄誉にあずかり、いまもなおデザイナーが選ぶ人気ナンバーワンフォントとして、しぶとくも燦然と生き残っている。

そんなFuturaは、ラテン語で「未来」を意味しているそうだ。

各位、やっていきましょう。


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