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アルバムレビュー

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漫然とアルバムを聴いていると印象を忘れてしまうので、アルバムを聴きながら1曲づつ感想を書き留めてみることにしました。特にジャンルレス。その日選んだアルバムを聴いてレビューしていき… もっと読む
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2022年1月の記事一覧

Jethro Tull考:22年ぶりのオリジナルアルバムThe Zealot Gene(2022、UK)リリースに寄せて

Jethro Tull考:22年ぶりのオリジナルアルバムThe Zealot Gene(2022、UK)リリースに寄せて

ジェスロタル度 ★★★★☆

ジェスロタルは18世紀の農業者でUKの農業革命を牽引した偉人。その名前を由来にしたバンドがジェスロタル。日本で言えば上杉鷹山をバンド名にした、みたいなバンド。もともと初期にさまざまなロックパブで演奏するときにバンド名をころころ変えていたらしく(最初の頃は下手だったのかあるいはトラブルメイカーだったのか、とにかくライブハウスからリピートで呼ばれることがなかったようで名前

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Steve Vai / Inviolate(2022、US)

Steve Vai / Inviolate(2022、US)

音の変態度 ★★★★☆

音の魔術師、と呼ばれるVai先生。ギタリストとしてよりルックスがどんどん奇術師みたいになってるからな気がしなくもないけれど、貴重な「大道芸としてのギタープレイ」を伝承する御方。もともとバンドは大道芸みたいなものだし、60年代のギタリストは手品みたいなところがあったからね。バイオリンの弓でギターを弾いて見せたジミーペイジとか、手元を隠して弾いていたリッチーブラックモアとか(

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THY ROW / Unchained(フィンランド、2021)

THY ROW / Unchained(フィンランド、2021)

ワイルドR'n'R Meets NWOBHM度 ★★★★★

先日、宇多田ヒカルの新譜の記事を書いたんですよ。そうしたら「あなたへのおススメ」で宇多田ヒカル関連がたくさん出てくるようになって、「もうわかったねん」と。いや、好きだしいいアルバムだと思ったから書いたんですけどね、これだけたくさん出てくると食傷気味に。凄い話題になっているんだなぁということとトレンドの凄さというものを感じるわけです。ふだ

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Obscura / A Valediction(2021、ドイツ)

Obscura / A Valediction(2021、ドイツ)

「チョットワカル」メタラー向けおススメ度 ★★★★★

「完全に理解した」のダニング=クルーガー効果なるものがある。

これは学習などで少しわかるようになると「もう全部分かった」みたいになる現象のことだけれど、これって音楽ジャンルについても当てはまる気がしていて、たとえばメタルって似て聞こえるじゃない。だからちょっと聞くと「だいたい同じに聞こえる」「だいたいパターンがわかった」となる。で、そこから

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Battle Beast / Circus Of Doom(2022、フィンランド)

Battle Beast / Circus Of Doom(2022、フィンランド)

北欧パワーメタルおススメ度 ★★★★★

今やフィンランド国内ではナイトウィッシュに次ぐ地位まで上り詰めたフィンランド・メタルシーンの大物、バトルビースト(BB)待望の新譜。もともとメインソングライターであったアントンカバネン(Gt)は脱退しビーストインブラック(BIB)を結成しています。BBはメタリカ、BIBはメガデス、みたいな立ち位置かも。双方に影響を与え合いながら作品群をリリースている印象。

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宇多田ヒカル / Badモード(2022、日本)

宇多田ヒカル / Badモード(2022、日本)

Producer – A. G. Cook (曲: 2, 3), Jason "Poo Bear" Boyd* (曲: 9), Nariaki Obukuro (曲: 4, 5, 7, 8), Sam Shepherd (曲: 1, 6, 10), Skrillex (曲: 9), Utada Hikaru

世界レベルのJ-POP ★★★★★

J-POPのトップアーティスト、宇多田ヒカルの新作

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Fit For An Autopsy / Oh What The Future Hands(2022、US)

Fit For An Autopsy / Oh What The Future Hands(2022、US)

モダンなアグレッション表現の完成度 ★★★★★

US、ニュージャージーで2007年に結成されたデスコアバンド、フィットフォーアンオートプシー。本作はドイツのニュークリアブラストレーベルからリリースされた3年ぶり6作目のアルバムです。TIDALのレコメンドに出てきて、冒頭聞いてみたら引き込まれたので全体を聴いてみました。最初聞いた感じだとけっこう硬派なメタル感があったんですが、Metallumでは

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Juçara Marçal / Delta Estácio Blues(2021、ブラジル)

Juçara Marçal / Delta Estácio Blues(2021、ブラジル)

奇妙だけれど新鮮 ★★★★★

昨年9月にリリースされた後、ずっとワールドミュージックチャートに入っているアルバム。まずはe-Latinaの解説文からどうぞ。

「ワールドミュージック」の枠を超えて、「オルタナティブロック」の枠でもベストアルバムなどでちらほら見かけた気もするアルバムです。なんとなく実験的なヒップホップとも言える音像だからかな。デジタルなトラックということですが使われている音は生音

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Dymytry / Revolt(2022、チェコ)

Dymytry / Revolt(2022、チェコ)

メインストリームメタルの完成度 ★★★★☆

まずは簡単なバイオを。

チェコではかなり人気のあるバンドのようで、チェコ語のWikiがかなり充実しています。だいたいWikiの文章量と人気は比例する。チェコ国内ではある程度メインストリームの成功も収めているのでしょう。TIDALのレコメンドで結構大きく出てきて「チェコのバンドか」ということで興味を持って聴いてみました。ワールドミュージック+メタルなの

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Power Paladin / With The Magic Of Windfyre Steel(2021、アイスランド)

Power Paladin / With The Magic Of Windfyre Steel(2021、アイスランド)

メロスピ王道度 ★★★★★

馬鹿だ! こいつらは馬鹿だ!(熱狂)。

メロスピっていいですね。1曲目、2曲目と疾走曲が続いたので嬉しくなってしまいました。底抜けなメロスピバカ一代感。爽快。今年メタルアルバムのレビュー1発目。ストリーミング解禁は1月だったのですがリリースは2021年の11月だった様子。2021年の「メロスピこの1枚」はこのアルバムですね。枯れたジャンルかと思っていたけれどなんだか

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マキシマムザホルモン / ヅラ対ヅラ【Dhurha VS Dhurha】(2022、日本)

マキシマムザホルモン / ヅラ対ヅラ【Dhurha VS Dhurha】(2022、日本)

エンタメ完成度 ★★★★★

頑なに楽曲をネット配信しないアーティストと言えば山下達郎、中島みゆき、チャゲアス、そしてマキシマムザホルモンであろう。この4組に共通しているのが、、、楽曲をネット配信していないということだ。他に特に共通項はないね。

さて、そんなマキシマムザホルモンの久しぶりの映像作品である。毎度「DVD」になるようなタイトルで今回はDhurha VS Dhurha(ヅラ対ヅラ)。ヅ

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Shujaat Husain Khan, Katayoun Goudarzi / This Pale(2021、インド/イラン)

Shujaat Husain Khan, Katayoun Goudarzi / This Pale(2021、インド/イラン)

インド古典音楽への誘い度 ★★★★☆

モンゴル、トルコと来たので今日はインド音楽を聴きたいと思う(厳密にはそれぞれロシア≒トゥヴァ共和国とデンマークなのだが)。そういう意味では今日も純粋なインドではなくインド+イラン(ペルシア)。今日も最初にLatinaの解説を貼っておく。

もともと北インド古典音楽(ヒンドゥスターニー音楽)はイスラム、ペルシアの影響とインド音楽がまじりあってできたものだからこ

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AySay / Su Akar(2021、デンマーク/トルコ)

AySay / Su Akar(2021、デンマーク/トルコ)

新世代ワールドミュージック感 ★★★★☆

始めにe-Latinaの紹介文を引用しておく。

トルコ音楽好きなら楽しめるだろう。かなりトルコ色が強く感じるがそれは異質感からで、本国のトルコ音楽に比べるとやはり洗練というか、欧州、北欧(デンマーク)らしさがあり、クールな感覚がある。トルコ色を強く持ちながらオランダを起点に活動するAltın Günにも近い感覚があるが、こちらの方がエレクトロニカとか北

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Khöömei Beat / CHANGYS BAGLAASH(2021、トゥヴァ@ロシア)

Khöömei Beat / CHANGYS BAGLAASH(2021、トゥヴァ@ロシア)

おススメ度 ★★★★★ホーメイビートはロシア連邦を構成するトゥヴァ共和国出身の6人組のバンド。ホーメイ(喉笛)はモンゴルのイメージが強いが本場はどうもトゥヴァのようだ。以前、The HUの記事でも取り上げたがUSの盲目のギタリストがホーメイに魅せられ、本場の達人とコラボレーションをしにいく「ジンギスブルース」という映画がある。この舞台もトゥヴァだった。実際にモンゴルに行ったときにウランバートルでホ

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