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Power Paladin / With The Magic Of Windfyre Steel(2021、アイスランド)

ギター×2、キーボード入りの6人編成

メロスピ王道度 ★★★★★

馬鹿だ! こいつらは馬鹿だ!(熱狂)。

メロスピっていいですね。1曲目、2曲目と疾走曲が続いたので嬉しくなってしまいました。底抜けなメロスピバカ一代感。爽快。今年メタルアルバムのレビュー1発目。ストリーミング解禁は1月だったのですがリリースは2021年の11月だった様子。2021年の「メロスピこの1枚」はこのアルバムですね。枯れたジャンルかと思っていたけれどなんだかんだ毎年1枚は面白い、新鮮さを感じさせるアルバムが出ているのが素晴らしい。しぶといジャンル。

バイオグラフィを兼ねてメーカーの紹介文を。

《メーカー販促資料より》
ニュークリア・ブラストの創始者マルクス・シュタイガーが古巣と決別し、新たに立ち上げたアトミック・ファイアー・レコードによる第一弾契約新人アーティスト、パワー・パラディン。時代の寵児となることを約束された彼らが、LAメタルの香りすら漂わせる強力すぎるヨーロピアン・パワー・メタルでアルバム・デビューを果たす!

【日本語解説書封入/歌詞対訳付き】

ヘヴィメタル界最大のレコード・レーベルとして君臨するニュークリア・ブラストの創始者であるマルクス・シュタイガーが、古巣と訣別して立ち上げた新レーベル、アトミック・ファイアー。そんな彼らが第一弾契約アーティストとして世に送り込むのが、アイスランドの若手6人組パワー・メタル・バンド、パワー・パラディンである。結成は17年。これまでにネット上でシングル曲を1曲発表しただけであるから、生粋の新人と言って良いだろう。

この度リリースとなるのが、そのデビューアルバム『ウィズ・ザ・マジック・オブ・ウィンドファイアー・スティール』である。ハロウィン、エドガイ、ラプソディ、ブラインド・ガーディアンといったレジェンドたちから影響を受けたという彼らだが、そのサウンドは、決してただの焼き直しには終わらない。そのキャッチーなサビには80年代のLAメタルの香りすら漂う。ヘヴィメタルのツボを押さえつつもオリジナリティにあふれ、実にパワフルでヘヴィ、そしてメロディックでキャッチー。アトミック・ファイアーが目をつけたのも納得の文字通り、脅威の新人の登場である。

ニュークリア・ブラストを世界最大のメタル・レーベルにまで育て上げたマルクス・シュタイガーは、今アトミック・ファイアーで新たな伝説を作り出そうとしている。そしてパワー・パラディンは、その伝説の一角を担っていくことだろう。時代の寵児となることを約束されたバンド。それがパワー・パラディンだ。

【メンバー】
インギ・ソリソン(ギター)
アトリ・グンラウグソン(ヴォーカル)
ビャーニ・エギル・オグムンドソン(キーボード)
エイナル・カール・ユーリウスソン(ドラムス)
ビャーニ・ソール・ヨハンソン(ギター)
クリストレイフ・ソルステインソン(ベース)

タワレコ商品ページ

最初はストリーミングサービス(TIDAL)のレコメンドに出てきてとりあえずジャケットをチェック、1曲目を聴いて笑いがこみあげてきて(典型的なメロスピすぎて!)「聴くぞ」と思っていたら最近Twitterでも話題になっているし、2021年間ベストに選んでいた方もいました。けっこう話題盤の様子。Burrn!で91点のレビューがついたようなのでそれも一因ですかね。後、アトミックファイア第一弾アーティストという話題性もコアなメタラーのアンテナに引っかかったのかも。そうした前評判の期待に見事にこたえるブライテストホープ枠。同じレーベルメイト(ニュークリアブラストからアトミックファイアに移っている)であるハロウィンの影響を強く感じさせるサウンドながら、よりメロディアスで「メロディの奔流」感があります。クラシカルというよりもうちょっと欧州民族音楽的なものも感じさせるというか。同じアイスランドのOphidian Iも「メロディの奔流」感があったから、アイスランドはとにかくメロディ重視する音楽的土壌があるのかも。メロスピ好きなら聴くと楽しめると思います。おススメ!

1.クレイヴン・ザ・ハンター 00:05:33 ★★★★★

疾走、メロスピ、切り込むツインソロに絶叫スクリームが切り込んできてメロディアスなボーカルラインとパワーコードのリフが絡み合う。凄いな! 80年代のきらびやかなメタルと欧州メタル感、ジャーマンというより北欧メタルに近いな。北欧的センスで解釈したNWOBHM。金切り声ハイトーンシャウトが潔い。ベタだがなんだか一周回って新鮮だな。UKのTanithのような「不思議なビンテージ感」がある。ジャケットの世界観も完璧というかデザイン学校で「ファンタジックなパワーメタルのジャケットの王道的イメージを描きなさい」というお題に提出したら満点をもらえそうだ。ツインリードにキーボードもいるリード楽器の多さとそれぞれがメロディを主張するアクの強さ。メロディとしてはものすごく新しいわけではないのだけれど、潔さが凄い。

2.ライチャス・フューリー 00:05:15 ★★★★★

ちょっと民族音楽的な風景からスタートするが、すぐにツーバス疾走。王道パワーメタルにどんどんよっていった頃のガンマレイみたいだな。この曲はジャーマンメタル感がある。ただ、どこか透明感があるのはキーボードが入っているからか。お、サビがちょっとマイケルキスクっぽい節回し。ブリッジミュートしながらメロディアスなリフを刻むのはカイハンセンのトレードマーク感があるからガンマレイとかハロウィン感があるのか。そういえばハロウィンもニュークリアブラストだっけ。一緒にアトミックファイアに移ったのかな。あ、移ってるね。ということはハロウィンとレーベルメイトなのか。

3.エヴァーモア 00:04:34 ★★★★☆

なんらかの風景、刀を研ぐような音、哀切なピアノの響きが入ってくる。けっこうリリカルな響き。しかしこれ全楽曲に邦題つけてもよかったのに。カーカスみたいに。そこまでやるとネタ感が強まりすぎるという判断か。お、これもきちんとパワーコードの刻みとメロディアスなボーカルが入ってくる。この辺りはハロウィンっぽいメロディラインを感じる。ジャーマン味があるのはレーベル色か。ただ、音像はどこか北欧らしい透明感がある。あと、ツインリードだが両方でソロを弾くときはリフが重なっていない。つまり純粋に「ギター×2+キーボード」以上のオーバーダブはない。これがTanithっぽさというかNWOBHM的な感じがあるんだろう。ライブ感があるというか。前2曲にくらべるとミドルテンポだが別に遅くはなくそこそこ速めの曲。

4.ダーク・クリスタル 00:05:59 ★★★★☆

ドラマティックなオープニング、「YouはShock!」みたいなユニゾンで切り込んでくるリフ(聴けば言いたいことが分かる)。そこからパワーコードの刻みリフがスタート。いやぁ、ツボを分かってるね。王道、正統派パワーメタルを80年代~90年代の1.2倍速ぐらいでやっている感じ。でもドラゴンフォースほどじゃない。(ブラジルの)ヒブリアを最初に聞いたときに一番感覚が近いか。どこかユーモラスでスラッシーな疾走感もあるのが面白い。間奏部でハロウィン的なメロディが出てくる。Eagle Fly Freeのヴァースだね。これはオマージュだろう。メロディが耳に残る、リードトラックかな。

5.ウェイ・オブ・キングス 00:05:13 ★★★★☆

パワーコードの刻みがずっとなり続けている。ブリッジミュートだよねメタルは。やっぱりコードを掻き鳴らすと別のジャンルというかニューメタル、ポストメタルな感じはする。こういうメロスピ系の作品ってネタ切れというかだいぶ出尽くした感じは受けていたのだけれど意外と毎年コンスタントに名盤というか「新しい感じのするアルバム」が出ているんだなぁ。Beast In Blackの「From Hell With Love(2019)」Victriousの「Space Ninja From Hell(2020)」とか。このアルバムもストリーミング解禁は2022年1月だったがリリース自体は2021年11月だったようなので2021年枠とすれば2021年のメロスピ名盤はこれだな。

6.ライド・ザ・ディスタント・ストーム 00:04:58 ★★★★★

再びスピードアップ、というか今まで全体的にBPMは早いのだけれど、1,2が疾走感があったのでそれ以降の曲がややミドルテンポに感じさせていたがここで疾走感がある曲に。とはいえBPMは冒頭2曲よりはやや遅めかな。とはいえテンションアップ感がある。朗々と歌い上げるメロディ。なんだろうなぁ、特にメロディセンス自体が目新しいわけでもないのだけれど、全体として新しい感じ、フレッシュな感じがするのはなぜなのだろう。編曲の妙と全体から出てくる陽性とメロディの奔流感なんだろうな。クラシカルというより伝統音楽、民族音楽的なメロディアスさを感じる。アイスランドのバンドってメロディの奔流、みたいな感覚があるのだろうか。同じくアイスランドのOphidian Iもそんな感覚があった。余白をすべてメロディで埋める、みたいな。

7.クリーチャーズ・オブ・ザ・ナイト 00:05:40 ★★★★★

SE、そして曲名のコールからメロディアスなリフが切り込んでくる。おお、盛り上がりが持続している。後半は盛り上げてくるタイプのアルバムだな。しかしリフで切り込んできたもののヴァースはボーカルラインが低めのメロディライン、ちょっとパターンを変えてきた。シンガロングなボーカルライン。低音部から高音に駆けあがっていき、サビではハイトーンスクリームを響かせる。ベタだけれど盛り上がる曲。途中では少しスペーシーな感じ、浮遊感のあるパートに。コードが響いているがメロディが少なく、音がだんだんと重なっていく。ずっとメロディの奔流だったからメロディのありなしで緩急が付くのか。比較的長尺の間奏部でソロが続く、各楽器隊の見せ場か。

8.イントゥ・ザ・フォービドゥン・フォレスト 00:07:34 ★★★★☆

また威風堂々としたスタート。とにかく全曲メロディアス。これはOphidian Iだと「ワンパターン化」で最初は衝撃を受けたがだんだんアルバムの途中で緊張感が薄れていく感じがあったのだけれど、このアルバムはBPMで緩急がついていることや歌メロのパターン、それぞれの曲で打ち出してくる音域にバラエティがあるせいか聞き飽きない。この辺りはレーベルの力、プロデューサーの力もあるのだろう。メロディセンス・作曲能力はあるのだろうから、それを取捨選択する力が問われる。新人バンドとは思えない「アルバムとしての聞かせ方」の完成度がある。基本的に5分ぐらいの曲でしっかり楽器隊の見せ場を作る曲が続いてきたが、最後2曲は7分程度の曲でやや長めでクライマックス感を出しているのだろう。とはいえいきなり10分の曲まではいかず、7分ぐらいで抑えているのもアルバム作りの妙を感じさせる。やや長尺曲だけあり、ドラマもじっくり展開していき壮大な感じ。基本は高速エイトビートながらコーラスはバタバタとしたツーバスが続く。このエイトビートがどこかマーチングバンド感があるというか、ハキハキしていて中音域が強調されていて聴きやすい。そこまで機械的ではないがバタつき感もなくいいバランス。ただ、こういうドラマティックな長尺曲よりはまだ疾走曲の勢いの方が現段階では魅力的かも。ライブだと違うかもだけれど。

9.ゼア・キャン・ビー・オンリー・ワン 00:06:53 ★★★★☆

こちらはミドルテンポで来る曲。ちょっとリズムにはメイデン感もあるかな。メロディアスでドラマティックな曲。前の曲と感想はあまり変わらず。こちらの方がオーケストレーション、つまりキーボードの比率が高いかな。ドラマティックに終了、アルバム最後までしっかりと世界観を描き切っている。

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