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『展覧会 岡本太郎』を浴びて来た

 10年以上前に岡本太郎の展示に足を運んだ時は、鑑賞しているだけでやけにエネルギーを使い、疲れてぐったりした記憶があります。

 だけど今回の、“岡本太郎の作品で埋め尽くされた世界”に対峙した後の印象は、居心地は決して良くないし心は落ち着かないけど、疲れたというより「浴びた!」という感じでした。
 若さゆえの感受性を失った鈍さがそうさせたのか、自分の中にうっすら出来た揺るがないもののおかげで彼に立ち向かえたからなのか……はわかりませんが。

 一つ違いがあるとするなら、私が以前岡本太郎作品を鑑賞したのは川崎市岡本太郎美術館でした(かつて川崎市に暮らしていたことがあったので、そういう意味で岡本太郎作品を見るととても懐かしくなります)。
 彼の作品のための場所で展示された作品群と、ちょっぴりよそ行き感のある展覧会は、マイルドさや尖り方が違うのかもしれませんね。


 とは言え、今回の『展覧会 岡本太郎』に足を運び、全身で岡本太郎のかけらを浴びて、岡本太郎の作品と同じ空間にたくさんの人がいて、自分がその中に居るという事実は、本当にいいなと思った次第です。
 私は美術館の作品はもちろん、それを見ている人々がいる空間を見るのも大好きなので……。

 あと、久々の岡本太郎作品との対峙なので、せっかくだから彼の著作『自分の中に毒を持て』を読んでから挑みました。かつての自分が珍しく本に付箋を貼っていたのですが、何を意図しているのかはもう読み取れませんでした。何を考えていたんだろう、自分は……。


 それでは、『展覧会 岡本太郎』で自分の心に残った印象的な作品や空間をいくつかご紹介します。
 ※撮影可の範囲内で撮った写真ですのでご安心を。また、作品名や展覧会構成は公式作品リストを参照しました。


絶好の展覧会日和! 平日でしたが、上野公園も東京都美術館内も人が多く感じました。


会場を入ってすぐのところで「お話聞かせて?」と言わんばかりにこちらを見ている『若い夢』。
オリンピックをテーマに描いた『跳ぶ』。ベタッと塗る色味の印象が強いけど、先に向かった音楽で言うところのシューゲイザーみたいな色使いになるの面白い。
岡本太郎と言えば赤と黒。『赤』のキャプション、“真っ赤なテントを切り裂くと、その上には虚空の闇が広がったいたかのよう”という文言に痺れました。


まさに岡本太郎、という真っ赤な色をした壁と絵画のコントラストに目と心臓を射抜かれます。
一部が雑誌の表紙に使われていた『装飾』。左端の犬みたいな何かが可愛いような不吉なような。


モザイクタイルの『太陽の神話』。ある意味ドット絵みたいなものなので、「岡本太郎の絵をドット絵再現するの大変そう!」なんて思いました。
いのちのどんちゃん騒ぎって感じがして、『第4章 大衆の中の芸術家』の空間は好きでした。青山のこどもの城にある『こどもの樹』は好きだったので、小さな彼に再会出来て嬉しかったです。


『明日の神話』とドローイング。これがこうなるの……? という驚きと納得感。


最後を締めくくるのは『第6章 黒い瞳の深淵──つき抜けた孤独』。隈取りのような色合いで縁取られた瞳(のようなもの)が描かれ、ふとこちらは我にかえる。


お見送りしてくれるのはちょっと可愛い『太陽の塔』と反転した岡本太郎氏。


 久々の岡本太郎ワールド、本当に心の栄養であり刺激であり、天国のような地獄を見たような素晴らしい時間でした。
 今回の記事は写真をたくさん載せましたが、写真ではあの空気感はなかなか伝わらないと思うので、可能な方は訪問をおすすめします。

 秋に行くと決めていた展示に早速足を運べて良かったです。他の展示も始まるのが待ち遠しいです。


 「展覧会 岡本太郎」の最新情報は公式ホームページにてご確認ください。

 


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© 2022 Aki Yamukai

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