天から降り注ぐ音色
生まれて初めてその楽器の音色を生で聞きました。包み込まれるような優しさと美しさ、崇高な調べに魅了されました。
私がこれまで抱いていた雅楽の印象が変わった瞬間です。
小さな楽器から奏でられている音にもかかわらず、まるで教会の中にいて天井から降り注いでくる光を浴びているような神聖な響きのある音色でした。
その楽器は雅楽の演奏で使う笙(しょう)と呼ばれるものです。
【笙(しょう)】
笙(しょう)は長さが50センチくらいで、17本の竹管を束ねた楽器です。その内の15本の竹の根元には金属のリードがついていてハーモニカのような仕組みで息を吐いても吸っても音が出るそうです。
パイプオルガンのルーツだと伺い驚きました。
私が笙(しょう)の音色を聞いたのは雅楽師の東儀秀樹(とうぎひでき)さんの講演会です。
東儀さんは奈良時代から現在まで1300年間、雅楽師を世襲してきた楽家で、宮内庁楽部に在籍していた頃はひちりきと言う楽器を主に演奏していて、琵琶や太鼓、歌、舞などもなさっていたそうです。
最近の活動は、皆さんもよくご存じだと思いますが、様々なジャンルの音楽とコラボして雅楽の魅力を一般の方に広めています。
私にとっての雅楽とは、これまで皇室の式典などの時に演奏されている、独特な調べで、庶民とは遠いものだと言う印象でした。
でも、今回東儀さんの講演でその音色を生で聞くことで印象が随分変わりました。静かでありながら大きく空間を包み込むような独特の音色だったのです。
講演で学んだことですが、日本の雅楽は平安時代から1300年もの間、ほとんど変わることなく今に伝承されていて、伝統文化が変化なく現代に残っているというのは世界的にみてもとても珍しいんことなんだそうです。
それは庶民からは遠くはなれた雅なものであったがゆえに、よくも悪くも変わらなかったんだとおっしゃっていました。
【雅楽に使われる中心的な楽器】
この日は笙(しょう)の他、主旋律を演奏する篳篥(ひちりき)と龍笛(りゅうてき)と呼ばれる楽器も紹介され、その音色を聞くことができました。
※中央が笙(しょう)右が篳篥(ひちりき)左が龍笛(りゅうてき)
【篳篥(ひちりき)】
篳篥(ひちりき)は長さが18センチ程の小さな竹製の縦笛で、西洋のオーボエのもとになったと言われる楽器だそうです。
音から音への移り変わりがとても滑らかで心地がいいものでした。
【龍笛(りゅうてき)】
龍笛(りゅうてき)は長さ40センチ程の横笛です。篳篥(ひちりき)が演奏するメインメロディーを装飾する役割の楽器だそうです。
笙(しょう)が「天の光」篳篥(ひちりき)が「地上の人の声」龍笛(りゅうてき)が「天と地を行きかう役割の持った楽器」だそうです。
雅楽が奏でる宇宙を思わせる不思議で雅な世界はそうした楽器で作られていることを知りました。
講演を聞いて、雅楽にとって東儀さんのような語り部がいることが素晴らしいと思いました。1300年も前から変わらない遠い世界の音楽を私たちの日常に近づけてお話してくださったからです。
雅楽の魅力を知る貴重な時間になりました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《知らん楽器を描くんが難しかったわい》
夕飯後も一生懸命イラストを描いているばあばと
「私は笙(しょう)と篳篥(ひちりき)と龍笛(りゅうてき)もう分かったよ、知らん楽器でどうしようかと思たけど、描いてみて楽器のことは覚えたよ」
「難しかったんじゃね」
「ほうよ、笙(しょう)は見たことも無いし、面白い楽器じゃねー、そんなに美しい音色なんじゃったら生できいてみたいねー」
母はイラストを描くのに本当に苦労していました。足りないところがあると思いますがお許しください。私は今度はコンサートでじっくり聞いてみたいと思いました。
【ばあばの俳句】
秋晴れの願い叶うか夢散歩
コロナ禍でずっとお預けになっている母のお出かけは大きな夢になっているようです。「夢散歩」になりました。秋晴れになっていても感染拡大で中々外出できない思いを詠んでいます。
イラストの母「いったい何時出掛けられんんだろう」そんな表情で描かれています。もうそろそろ限界かも知れません。
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また明日お会いしましょう。💗
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