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友情はアジサイ色

◇◇ショートショートストーリー


雨を受けてよりいっそう青さが増しているアジサイを眺めながら、鈴は幼馴染みの順子の言葉を思い出していました。

「このアジサイものすごく綺麗じゃけど、私は、青いアジサイより赤かピンクが好きじゃなー」

「順ちゃん、知らんかった、アジサイの色は土壌で変わるんよ、アジサイのアントシアニン言う色素が土壌に反応するんじゃと、土にアルミニウムが含まれていたら青い花が咲くんよ、ほじゃなかったら赤やピンクになるんよ」

「へー、アジサイは同じ株でも、土壌で花の色が違うんじゃねー」

「アジサイの花言葉知っとる、移り気、浮気、無情なんじゃと」と順子が言います。

「あんまりええ花言葉じゃないねー、移り気、浮気、無情か・・・」と鈴、順子は「七変化言われるんが分からいね」と、納得していました。


順子と鈴は同じ幼稚園から、大学まで地元で、ずっと仲良しでお互いを分かりあっていたはずでしたが、ある時から二人は仲違いしてしまいます。

二人が疎遠になったのは、大学の一年先輩の誠との出会いからでした。

大学の音楽サークルに入った二人は、世話好きの先輩が好きになったのです。誠は、おっとりした順子に、好感を持っていましたが、積極的な鈴は、機会あるごとに誠を誘って、彼の心をとらえたのです。

彼を最初に好きになったのは順子で、入部したての頃、誠への気持ちを鈴に打ち明けていました。鈴は誠には興味がありませんでしたが、順子の思いを聞いてから誠を見ていて、いつの間にか愛情を抱くようになり、彼にアタックしたのです。

それまで仲良くしていた二人の友情に亀裂が入るのはあっと言う間でした。二人は会うことがなくなりました。鈴が誠とは、大学を卒業してすぐに別れた事を知りましたが、順子は鈴を許す事ができませんでした。親友に裏切られた思いをずっと引きずっていたのです。

大学を卒業してから6年、順子は通勤途中で事故にあい、リハビリ生活を送っていました。

鈴はそれを知ってお見舞いに行くべきかどうか悩んでいました。きっと彼女は私を許さないだろう、行っても会ってくれないかも知れない。

「順子に、今の気持ちを伝える方法はないかなー」と考えた鈴は、自宅の庭のアジサイを植え替える事にしたのです。

アジサイの土壌を変えて、違う色のアジサイの花を咲かせようとしたのです。

植え替えて数週間、青だった株にピンクのアジサイが咲きました。その花を摘んで鈴は、順子の病室に向かったのです。


「順ちゃん、久しぶり、入院してるって聞いたんで、お見舞いに来たんよ」

「あー、ありがとう、悪いねー」

「庭のアジサイ持ってきたんよ、飾ってや」

「あれっ、鈴のとこのアジサイ青い花じゃったろ」

「うん、植え替えたんよ、順ちゃんが赤い色が好き言よったろ、ほじゃけん、赤い色になるように土を替えたんよ」

順子は、思いもよらない鈴のお見舞いに、少しためらいながらアジサイの花を眺めていました。

「土が変わったら、花の色が変わるんじゃね、へー・・・」

鈴は、今こそ伝えなければと思い「順ちやん、ごめんね、私、今はとっても後悔しとるんよー、先輩とは別れたし、もう会ってないよ、私、アジサイが青からピンクに変わったみたいにこれからは変わるけん」と友情を壊してしまった自分を悔いる言葉を伝えました。

順子はアジサイを見つめながら「ピンクのアジサイはかわいいねー、この色好きよ、青がこんな色になるんやねー」そう言うと順子も、長い間の心のつかえが取れて、清々しい気持ちになりました。

自宅に帰った鈴は、庭のアジサイを眺めながら、もう一度順子のお見舞に行こうと決めました。


【毎日がバトル:山田家の女たち】

《七変化とはよう言うたもんじゃ》


お昼ご飯におうどんを食べた後のばあばとの会話です。

「恋で友情が壊れることもあると思うよ、ありがちよね、ほじゃけど、和解のきっかけがあって良かったわい

「アジサイの色を青からピンクに変えたけんねー」

「二人の関係が元に戻るんにはまだ時間が必要かも知れんけど、アジサイはええきっかけになったわい、七変化とはよう言うたもんじゃ

愛をとるか、友情をとるか、なかなか難しい選択ですが、あなたならどちらをとりますか。私は・・・・。


【ばあばの俳句】


電飾の映ゆる出湯や夏の宵


観光松山のシンボル、道後温泉は今、再生のために、営業を続けながら改修工事が行われています。それに合わせて、様々なプロジェクトが展開されていて、プロジェクションマッピングもその一つです。道後温泉本館を背景にして手塚治虫の名作アニメ「火の鳥」とのコラボレーションの映像が見られます。

母は大好きな道後に多くの人に訪れて欲しいとこの句を詠みました。プロジェクションマッピングは第三弾「そして未来へ」です。

道後温泉本館北側で毎日18:30~21:30に上映しています。幻想的で見ごたえがありますよ。


▽「ばあばの俳句」「毎日がバトル:山田家の女たち」と20時前後には「フリートークでこんばんは」も音声配信しています。お聞きいただければとても嬉しいです。

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私のアルバムの中の写真から

また明日お会いしましょう。💗

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