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遠くからあなたを見ていた

◇◇ショートショート

順次はその日お気に入りのミュージシャンのコンサートを聞いてご機嫌でした。「最高だったなー、心にビンビン響いてきて、よかったー、今度は誰かを誘っていこう、この感動を共有しなくっちゃ、とりあえず落ち着こう」とカフェに立ち寄りました。

お気に入りのカフェはビルの4階にあって、窓が一段と大きくガラス越しに街の様子が一目でわかる明るく開放的なお店です。その見晴らしのいいカフェの窓際で、彼はコンサートの余韻に浸っていました。

順次はぼんやりと外の様子を見ています。

「今日は平日だから、横断歩道の人の姿もまばらだなー、信号待ちの人は4人か、あれっ、あの人大丈夫かな・・・」

信号を待っている人の一人が腕をぐるぐる回しています。車いすの若い男性でした。鮮やかなオレンジ色のTシャツ姿で両腕を何度も回しているのです。

「介護の人はいないんだ、たった一人で大変だなー、きっと車いすを操作するのに力がいるんだろうな・・・、あっ、信号が変わった、段差は無いけど上手く渡れるかなー」と思ってみていると

渡り始めてすぐに彼の膝の上に置いてあった四角いボックスがゴロンと道に転げてしまい、必至で拾おうとしますが手が届きません。

順次は僕が傍にいたら拾ってあげるのにとハラハラしながら見ていました。何人かが彼を気にしながら通り過ぎていきます。

「何だよ、拾ってあげればいいじゃないか、どんなに急いでいたってそのくらい出来るだろう」と思いながら見ていると、少し後ろから急いで駆け寄る女性がいました。

長いワンピースでサラサラのロングヘア―、何とも柔らかなイメージの女性です。彼女は車いすを通り過ぎて、四角い箱を拾うとオレンジ色のTシャツの彼に渡しました。笑顔です。

順次には彼女の微笑みが天使に見えました。信号の青いランプが点滅していました。すると彼女は後ろ側に回って、車いすを優しく押して横断歩道を渡ったのです。その素早さは見事でした。

順次はガラス越しに女性の親切な行為を見て、心が温まり、そして彼女の人間性に釘付けになりました。

車いすを押して横断歩道を渡り切るとワンピースの天使は、オレンジ色のTシャツの彼に軽く会釈をして風のよう去っていきました。

順次はコンサートの余韻よりも、その親切な行為の温かさに浸りながらコーヒーを口に運んでいました。

「素敵な人だったな―、あんな人がいるんだなー」そう思ってふと店の入り口を眺めていると入ってきたのです、さらさらのロングヘア―をなびかせながら素敵なワンピース姿の彼女が。

その時、順次はその場の空気が止まったかと思いました。

その女性は、テーブルで待っていた友人グループに手を上げて、天使の笑顔で微笑みました。

その時です、順次の恋が始まったのは。


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【毎日がバトル:山田家の女たち】

《今は人が殺伐としとるけんねー》


お昼ご飯にすき焼を食べた後のばあばと。

「人に優しいんはええねー、私らしてあげたいと思ても出来んのよほじゃけどそんな人は少ないんじゃないん

「誰かが見ていると思たらするかも知れんけどねー」

「誰かに見られとる思てするんはいかんわい、心が優しないと、誰も見て無いところではできんのよ、今は人が殺伐としとるけんねー、たまには優しい人がおるけどね

「優しくありたいね」

「この間、私がショッピングモールで店が分からずに困っとたらお店まで連れて行ってくれた人がおった、ありがたかったんよ」

人の優しさに触れた時、人は幸せな気持ちになるものです。


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【ばあばの俳句】

シイタケの付け焼き旨し夕支度


シイタケが美味しい時期です。母は焼いたシイタケをポン酢につけていただくのが大好きで、秋のごちそうです


シイタケお付け焼き旨し夕支度A

テーブルに並ぶまでの焼けている香りがたまらないようです。実は私も大好きです。シイタケ嫌いの方には申し訳ないのですが、あの香りと食感はたまりません


最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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私のアルバムの中の写真から

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また明日お会いしましょう。💗

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