【詩】アイロン掛けと給与計算
「アイロン掛けと給与計算は似ている」
給与計算がどんな仕事か聞かれたら
ワイシャツにアイロンを掛けるようなものと答えるようにしている
単調だけど 一定のリズムがあり
ひとつずつ物事をあるべきかたちに
もしくはあるべき場所に整えていく
いくつかの工程があり
決して一気にぱりっと綺麗にならないけれど
時間を掛けて 丁寧に折り目を正していく
ボタンのないエレベーターの中で
左右のポケットの小銭を瞬時に数えるような
ハードボイルドな職業ではないけど
角度を変えて 見方を変えて
理論値と計算結果の差分をつぶしていく
誰がやっても同じでしょ
AIに取って代わられるでしょ
10年後にはない仕事でしょ
もっと創造的な仕事に時間をつかわなきゃ
よく言われるし
その通りだと思うときもあるけど
世界は 誰がやってもいいことを
誰かがやらなきゃいけなくて
誰かのために手を動かす人々の群像でもある
襟や袖は慎重に
ボタンの間の皺も忘れずに
今日も 何気ない作業に
さりげなく自分の味がにじみ出ますように
魔法は使えないけど
きっと神が細部に宿りますように
今月も 当たり前のことを
当たり前に終わらせることができますように
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