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【小説】「きみはオフィーリアになれない」

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謎の魚「オフィーリア」をめぐる、現代社会を生きる3人の群像劇。
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2020年7月の記事一覧

「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #080

 瀧本は美穪子のそばに寄った。白雪姫のように目を瞑っているその顔は、間違いなく美穪子だっ…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #081

 美穪子の分身、つまり、動いている美穪子とは別の、眠ったままの美穪子は、瀧本は見ることが…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #082

「えっと、川嶋さんははじめまして、ですね。先ほどはお会いはしていませんね」 「……?」  …

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #083

「僕はあらゆる人の意識のネットワークを繋ぐことができます。そして、自分自身が、そのネット…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #084

「誰だ?」 「誰でしょう。開けてみたらどうでしょうか」  瀧本は、頭の中を整理していた。仁…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #085

「やっぱりダメです。クラゲさんに会うことはできません」  暗闇の奥からエイジと名乗る少年…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 後編 #086

「何のことだ?」  表情には出さないようにしていたが、瀧本は全身汗だくだった。自分の意識の中の世界で汗をかくということがありえるのかはわからないが、とにかく、はっきりとわかるほど汗をかいていた。  自分はなぜ、こんなところにいるのだろう?  色々なことが自分の周りを通過していった。  色々な人が、自分の周りをすり抜けていった。  すべての日常は、やがては洗い流される。  いまは当たり前にそこにあると思っているものが、  ゆっくりと、  時間をかけて、  溶解し、  崩れ、  

「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #087

episode5 川嶋美穪子(前編)  瀧本の様子がおかしいと感じたのは、安達凛子という女性がク…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #088

 世間の普通の人は、自分ほどぼんやりしていないのだ、ということに気付いたのはまだ小学生の…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #089

 急に無口になった美穪子は、みんなに気味悪がられた。両親は心配し、あらゆる病院に連れてい…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #090

*  安達凛子が二度目にクリニックに来たのは、それから数日後のことだった。安達凛子は前回…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #091

 これまで、何か自分に不安なことがあったとき、瀧本がそばにいてくれて、話を聞いてくれた。…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #092

 美穪子が何も言えずに黙っていると、電話は切れた。もう終わりだ、と美穪子は思った。江利子…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 川嶋美禰子 前編 #093

 時間をかけて、少しずつ菓子作りに挑戦していると、叔母が色々と料理を教えてくれるようになり、美穪子の生活には張りが出てきた。とてもささやかだが、確かに喜びが感じられる生活だった。いつか瀧本に食べさせてあげることができるかもしれない、と思った。  美穪子はヨロヨロと立ち上がると、買い物に行かなければ、と思った。もう冷蔵庫にほとんど食材は残っていないはずだ。もうこんなに遅い時間になってしまっている。急いで立ち上がると、それだけで少しだけ心持ちが軽くなったような気がした。  近所の