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【小説】「きみはオフィーリアになれない」

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謎の魚「オフィーリア」をめぐる、現代社会を生きる3人の群像劇。
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2020年6月の記事一覧

「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #050

 その日から兄は猛勉強をはじめた。うちには学習塾に通うだけの余裕はなかったので、学校の熱…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #051

*  あれから一年以上も経ってしまいました。かんなです。わたしのことを覚えていますか。こ…

やひろ
4年前
29

「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #052

 夏、瀧本はひとりでかんなのいる団体を訪れることにした。そのための準備はしていたし、親に…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #053

 しばらくすると、白塗りの軽トラがやってきた。周囲には瀧本以外は誰もいなかったので、迎え…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #054

 かんなは先導していた女性と二言三言、言葉を交わすと、来て、案内してあげる、と瀧本の手を…

やひろ
4年前
29

「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #055

 たき火の火に当たりながら流暢に語るかんなを見ていると、自分が感じた、この集団に対するき…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #056

 かんなに会いに行くという目標を抱えて生きていた瀧本は目標を失い、自分が何を目指しているのかわからなくなった。旅行から戻って来て、自分の部屋でひとりきりでいるときに、ふと、あのコミュニティと、現在、自分が暮らしているこの町はいったい何が違うのだろう、とぼんやり考えた。この町での暮らしは、あのコミュニティでの暮らしよりも立派なものなのだろうか。少なくとも、ここにいても、自分は幸福だ、ということを実感したことなどなかった。  季節が移り変わり、瀧本は受験生になった。家を離れて、遠

「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #057

 函南はちらりとこちらを一瞥する。函南は黒ぶちの眼鏡をかけていたが、その奥の瞳は意外と幼…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #058

 函南の部屋は二階の角部屋で、神経質なぐらい綺麗に片付けられていた。ただ、机の上には乱雑…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #059

 すっかり変わってしまった兄は説教がましいことは何も言わなかったが、ふと、付け加えるよう…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #060

 母親と合流し、その日の午後に兄のいる病院に着いた。兄が事件に巻き込まれた場所からはかな…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #061

 瀧本は、混乱し、興奮している相手に対し、どのように対応すれば相手が落ち着きを取り戻すの…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #062

 一瞬、函南の言っていることがかんなの所属していたコミュニティにいた連中と重なり、瀧本は…

やひろ
4年前
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「きみはオフィーリアになれない」 瀧本達郎 前編 #063

 瀧本が発見したのは、かんなではなく、かんなの母親だった。かんなの母親に会ったのは、かんなを連れて隣町の本屋に行った日だけで、しかも化粧をしていない顏だったので印象が違ったが、間違いない、と瀧本は思った。かんながここにいる可能性もあるのでは、と隅々まで画像を確認したが、かんなの姿はどこにもなかった。瀧本は安堵したが、まだ安心はできない、と思った。かんなとかんなの母親は、そもそもコミュニティの違う支部に所属していたのだ。この画像は、かんなの母親が所属していた支部のものに違いない