見出し画像

技術と経験に裏打ちされた人間愛。『仮病の見抜きかた』國松淳和


こちらの動画「内科医が話すストレスと自律神経の話」SNS医療のカタチONLINE vol.10」があまりにおもしろかったので、ご著書も読みたくなって入手。期待以上におもしろかったです。

小説風になっているし、医療知識のない私のような読者のために3部構成になっていて、1部(エピソード)と3部(プロローグ)だけ読めば、専門知識を必要最低限にして、エピソードを楽しめるというわけ。海堂尊『チーム・バチスタの栄光』シリーズ好きには、不定愁訴ってとっつきやすいし。

さて、本書に出てくるのは、病院とはあまり縁のない私からすれば、とてもバリエーション豊富な心と身体の病を持った人たちの話。でも、どれもそれなりに共感できるし、充分想像できます。世間一般の感覚だと、「心」と「身体」は別物で、心の弱い人がストレスやら何やらで身体を壊すといったものだけれど、必ずしもそうではなくて、心も身体もつながっていて、故意と偶然の境目もあいまいで、実は病気と健康の境目も曖昧。

すっきりするミステリ小説が好きな人には物足りないかもしれないけれど、人間ってのは多かれ少なかれ割り切れないものだっていうことが、だんだんわかってくる年齢に達した私には、かなり満足いく「曖昧」な内容です。

物事を「シロ」「クロ」つけないと気がすまない(=理解できない)のは子供だけだと思っていたけど、実は大人にも「シロ」「クロ」つけないと理解できない人たちが結構いることを最近知りました。実は、私もかなり最近まで世の中は白黒つけられるものだと考えていた部類。そんな私には、この本は1冊の処方箋のようです。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?