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ライトで楽しいお仕事モノ。『校閲ガール』宮木あや子


大好きなファッション誌の編集になることを夢見て、出版社に入社した河野悦子。でも、配属されたのは作家の文章をチェックする校閲係。私はたまたま仕事で関係があるので、「校閲」と聞けばいぶし銀のプロをイメージします。でも普通、「校閲」って聞いたこともない人の方が多いんじゃないでしょうか?

そんな、一般的には地味な「校閲」をテーマにすれば、普通なら三浦しをんさんの『舟を編む』みたいな話になりそう。でも、宮木さんは校閲のお仕事と、おしゃれ大好きな女の子を組み合わせて、がっちり校閲のお仕事をさせつつ、ミステリ風にライトに楽しい小説にしたのが本作。表紙もかわいくて、中学生の娘もさっそく食いつきました。

男性的でこだわりがくせになる文章が西尾維新さんなら、宮木あや子さんは女性的できっぷがいい文章。読んでいて元気が出て、しかも笑えるコメディです。専門的な知識は、ほどよいスパイス。宮木あや子さんの他の本も読んでみたくなること、うけあいです。

シリーズ第二弾は『校閲ガール ア・ラ・カルト』。本作は、悦子が主役じゃなくて、脇役たちの物語。一作目がおもしろかっただけに、ちょっと肩透かしですが、出版と校閲をめぐるエピソードになっているので、それなりにおもしろかったです。

今回登場するのは、悦子と同期入社で雑誌編集者の森尾、ジェンダーレスな校閲者の米岡、悦子と同期入社で文芸編集者の藤岩、そして悦子と仲の悪い文芸編集者の貝塚や悦子の上司(あだ名はエリンギ)、エロミス作家の本郷大作。私が好きなのは、森尾さんと貝塚さんのエピソードかな?

『舟を編む』を読んだ私は、つい貝塚くんをオダギリジョーで脳内再生して、ヘビーローテーションしてます。藤岩ちゃんも好きだけど、彼女の男性の趣味がうーん…っていうか、文学部男子にちょっとリアリティが感じられないかも。東大というよりは、京大っぽいイメージがあります(あくまで、イメージです)。

そして、完結編は『校閲ガール トルネード』。憧れの雑誌編集部に移った悦子が見たものは、自分の理想とおおきくハズレたファッション雑誌の現場でした。ライトなお話でも、こういう苦さがきっちり散りばめられているのが、このシリーズのおもしろさの重要ポイントなのかもしれません。

校閲の仕事をおもしろおかしく紹介しつつ、あまい恋愛要素も皆無ではないけれど、主人公のお仕事や人生をメインに描いてくれた宮木さんに感謝。本屋モノとか編集モノって、どうしてこんなに楽しいんでしょう。大好きです。石原さとみさんでドラマ化されたらしいので、ドラマを気に入った方は、ぜひ原作も読んでみてください。おすすめです。


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