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ネガティブ・ケイパビリティのすすめ

こんにちは。あすぺるがーるです。


前回の記事で、「希望する脳」 のはたらきを高めるのに、ネガティブ・ケイパビリティを身につけるのが有効、という話をしました。

「希望する脳」 のはたらきが高まると、プラセボ効果が起こり、症状の改善が期待できます。


では、そもそもネガティブ・ケイパビリティとは何なのでしょうか?


ネガティブ・ケイパビリティとは?

ネガティブ・ケイパビリティは、どうしても答えが出ず、対処もできない事柄に耐える能力のことを指します。

この概念は、19世紀の詩人ジョン・キーツが弟たちに宛てた手紙の中で言及し、20世紀の英国の精神科医ウィルフレッド・R・ビオンが再発見したものです。


ヒトの脳は、わけの分からないものや不快なものと遭遇すると困惑します。

そして困惑状態を回避するために、それに意味づけをし、理由や証明を求め、何とか分かろうとするのです。


しかし、そのはたらきは完璧なものではありません。

物事を「分かった」 と認識した時点で、その物事への理解は止まってしまい、それ以上深まらなくなってしまうことが軒並みあるからです。


さらに、どうあがいても誰にも分からない、どうすることもできないことも存在します。

というより、どうあがいても誰にも分からない、どうすることもできないことの方が、この世界には多いのが現状です。


そんなとき、未発達の知識や情報で物事を性急に解決しようとせずに、物事が不確実で未解明な状態のなかでやっていく能力が、ネガティブ・ケイパビリティです。


分かった 「つもり」 が…

白杖を持っている方がスマホを使っていると、「スマホを使っているということは目が見えるのだから、本当は白杖は要らないのではないか」 などと非難されることがあるそうです。


しかしそれは、大きな間違いです。


まず、白杖を使っている方全員が全盲とは限りません。

わずかに視力はあるものの、視覚が著しく制限されるロービジョンと呼ばれる状態の方もいらっしゃいます。


次に、全盲の方でもスマホは使えます。

スマホには画面に出ている情報を読み上げる機能など、目の見えない方でも使いこなせるような工夫がなされています。


これは、分かった 「つもり」 による差別です。


どうしようもない現状の元で

発達障害や精神疾患を持つ方は、「どうあがいても誰にも分からない、どうすることもできない」 現状の元にいる方が大多数だと思います。


症状はどれくらい良くなるのか。

周囲からの理解と配慮は受けられるのか。

将来どうなるのか。


誰にも為す術がないことや、もしかしたら変わるかもしれないけどすぐには変わらないことが、人生にたくさん溢れている状況でしょう。

そしてその症状ゆえに、「分からないこと」 に人一倍不安を抱えやすいのも事実です。


こんな状況下を生き抜くために必要なのは、一体何なのでしょうか。


専門家や同志による治療やライフハックは、もちろん必要だと思います。

しかしそれ以上に、不確実で分からない状況を生き抜く、ネガティブ・ケイパビリティが、何よりも求められていると私は思います。


身につけるには?

では、そのネガティブ・ケイパビリティを身につけるためには、どうしたらいいのでしょうか?


ビオンは、著書『注意と解釈』の末尾に、このような文章を記しています。

ネガティブ・ケイパビリティには、記憶と理解と欲望を捨てて初めて行き着ける。


先の白杖の方のスマホ利用の話でいうと、

スマホは目で見て使うものという、誤った 「記憶」

目の見えない人はスマホを使えないという、誤った 「理解」

他の障害者の事情など見なかったことにしたいという 「欲望」

これらを捨てて、ようやく差別から抜け出せるのです。

差別から抜け出せば、たとえ真実を知らなくても 「その人の事情があるのだろう」 と、白杖の方がスマホを使っている状況を容認することができます。


これに倣うと、発達障害や精神疾患を持つ方がネガティブ・ケイパビリティを身につけるのに必要なのは、

「自分は健常者だ」 という、誤った 「記憶」

「発達障害の人は就職できない」 などの、誤った 「理解」

「障害のない人と同じように生きたい」 という 「欲望」

を捨てることだと、私は思います。


でも、ネガティブ・ケイパビリティを身につけることは、とても難しいことです。

だからまずは、専門家につながり、ライフハックを収集し、社会保障を受けることから始めましょう。







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