嶺渡

山梨県の片隅で文化財担当をやっています。 東京から移住し、銃猟も始めました。狩猟、山岳…

嶺渡

山梨県の片隅で文化財担当をやっています。 東京から移住し、銃猟も始めました。狩猟、山岳信仰、狼、岩、修験。 2018年の七ツ石神社再建事業を中心に、活動や御縁を語ったり。

マガジン

  • 帰山の遠吠え

    移住者が神社を再建するまでを、その狼に纏わる生い立ちと共にまとめました。失われかけた文化の、反撃の狼煙となるように。まだ見ぬ仲間へ向けた、遠吠えのように。

最近の記事

オオカミを迎えた日

6月6日、丹波山村にオオカミの剥製がやってきた。 茨城県の個人宅で所有されていたハイイロオオカミだ。 剥製や刀剣を収集していたお家だったが、東日本大震災で母屋が被災。 殆どのコレクションは何処に行ったか分からなくなってしまったという。 このオオカミだけは偶然、別宅に移していたため被害を免れた。 15年間、玄関の一角に置かれて守り神のようになっていたらしい。 ひとつの入口を通せんぼするように置かれていたというオオカミのため、その入口を使わずに迂回してリビングを使用したり、劣化

    • 新年度

      令和5年度が始まりました。 個人的には何が変わったかといいますと、肩書が「集落支援員」から「学芸員」になりました。 今までは学芸員業務もする文化財担当だったのですが、今年度からは色々やる学芸員になります。相変わらず文化財全般を担当し、観光や教育と連携していく所存です。 丹波山村に移住して7年が経ち、幼い頃に狼という概念と出会って27年が経ちました。 あの日、博物館の狼から始まった縁が、資料館で狼をやることで繋がって戻ってきた感じがして不思議です。 専門分野としてひとりで当た

      • 年末

        今年も明日で仕事納めとなりました。 本年も活動をお見守りいただいた皆様、仕事でお会いした皆様、誠にお世話になりました。 テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、講演会、授業、イベント等々。 今年は特に人前に出てお話する仕事に恵まれ、出張も多かったので11都道府県を回って様々な場所で文化を考えることが出来ました。 何度経験しても緊張しまくるわりに、殆ど二つ返事でオファーを受けてしまうので、毎回新しいことに挑戦できるのは良い点です。 仕事とは別に今年の夏は大学時代の後輩と、人魚を探しに大

        • 6/5 秘封蓮花蝶 参加

          ポートメッセなごやで開催されたイベントにWolfshipとして初めてサークル参加してきました! 思えば東方projectとの出会いは中学1年くらいの頃。PCに詳しい友人に紹介されたのが最初で、風神録「神々が恋した幻想郷」の爽やかさと心を熱くさせる憧憬に衝撃を受けたのが始まりだったと記憶しています。 小学5年から神話にのめり込んでいた私は、ここが諏訪信仰フィールドワークの原点でした。 月日は流れ大学時代。幻想の面影を追って民俗学に出会い、伝承文学専攻に進んだ私はこの頃主にサン

        オオカミを迎えた日

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        • 帰山の遠吠え
          16本

        記事

          2022.6/2

          気付いたら6月になっていた人も多いのではないでしょうか。 前回の更新が3ヶ月くらい前だったことに自分でも驚いております。 そんなここ3ヶ月は、ワーケーションPRVの撮影と公開、東京での原画出展、新聞・ニュース・生放送出演、取材などなど。 出張やフィールドワークで飛び回っている間にも、色々なご縁がありました。奈良滞在中に母校から連絡があったり。 Wolfshipも1周年で、あっという間ですね。そろそろ次の製作にも着手していこうと思っています。1年越しでユニフォームも作りました

          2022.6/2

          2022.3/7

          先日テレビ取材で「文化財を守る事の意味」を問われた時、私はそれを言語化する術を未だ持たない事に気づきました。 自分にとって文化を追求していくこの活動は、謂わば終わりの無い旅であり、憧れ続ける郷里の景色であるのです。 守っているという認識より、「忘れられないでいる」という方が近くすらあるかもしれません。 その時の私は「その答えを探す為に、やらずにはいられない衝動のまま進んでいく」ようなことを返したと思います。 この命の俯瞰した先に言葉があるので、実体を持って生きているうちは

          2022.3/7

          蒼い夜の狼たち

          絵本「蒼い夜の狼たち」 15日に表紙が公開されました。 それと同時にイメージ楽曲「七ツ石の狼、雲を取りに駆ける」の一部公開も。急に事務所へ訪れた課長が「絵本つくってくれる?」と言ったあの日から、1年。 「狼でやっていいから」と言われて引き受けたものの、最初のオーダーは「雲取山のPR」 当初の内容は「三峯神社を目指すため、丹波山村から雲取を越える旅人。道中では様々な困難があるが、知らずのうちに狼に助けられる」といったもので、人間が主人公でした。 実家に帰った時、母に内容を相

          蒼い夜の狼たち

          狼と塩

          タイトルは、Wolfship Designで企画中の甲州印伝に使用しているデザインの名称です。このデザインは今年の2月の朝、出勤してデスクについた時、何の気なしに狛犬の図案化されたものを眺めていたことから生み出された、言ってしまえば思いつきでした。狛犬のデザインを見つめているうちに「これが印伝になったら良い感じなのではないか?」と。そういえば印伝なら、かつての協力隊の仲間でもあり狩猟の仲間でもある人が関わっていたな。聞くだけ聞いてみようかな。と思い早速メッセージを飛ばすこと数

          狼と塩

          Wolfship Design

          6月1日の本日、たばやま観光推進機構 文化・クリエイティブ事業内で始動する狼ブランド「Wolfship Design」のリリースがされました。 甲州印伝や絵本の制作など、既にスタートしている企画の他、七ツ石神社再建をベースとした物語や世界観に沿った活動や商品展開をしていく予定です。 心の衝動のままに駈けていたら、いつの間にかブランド立ち上げに至っていたという・・・。まだまだ七ツ石神社の狼たちは進化していきます。 いつか出会う皆さんとも、御縁がありますように。 詳しくは

          Wolfship Design

          七ツ石山展冊子

          週末、過去三回開催した「狼伝承と登る七ツ石山」展の内容を収録した冊子が納品されました。手渡しできる関係者から配布を進めております。 全20ページのこの冊子は、狼関連商品を選んでふるさと納税してくださった方に郵送される予定です。過去に遡ってお届けしますので、今までで既に狼関連商品のふるさと納税をしていただいている方にも後日郵送を予定しております。 東京都から「まん延防止等重点措置」が5月11日まで宣言されていることに伴い、村内ではGW期間のイベント等を中止することになりまし

          七ツ石山展冊子

          暁の瞳

          籠三蔵氏から、玉川麻衣さん画「暁の瞳」を七ツ石神社整備委員会へ寄贈していただいた。この絵、実はここ最近の狼絵の中で個人的にとりわけ気に入っていた作品で、SNSで拝見した時に何というか憧憬や希望が入り交ざって、冬山の空気のように鋭くじんわりとした痛みを心に感じたのだった。そもそも、夜明け前という時間帯の題材が好き過ぎるというのもある。 この絵を見た時、勝手ながら七ツ石神社の狼像二匹がじっと夜明けを待つ様であるように思った。金色に輝く瞳が、既に夜が明けた世界を映している。それは

          暁の瞳

          私は遠吠えに「道標」のイメージを持っている。それは旅人にとっての北極星であり、伴走者でもあるだろう。 返ってくる声が「道標」なら、吠える声は「呼びかけ」「発信」。 noteで一連の再建事業をまとめた時、タイトルは「帰山の遠吠え」に最初から決まっていた。 数年前、土砂降りの西穂高岳を山頂から一気に駈け下りてきた山小屋で、頼んだ酒のラベルを見た時に、私の憧憬と渇望はこの二字に集約されると納得したからだ。 「帰山」自分の帰る山、帰りたい山、居るべき山は何処だろう。 七ツ石神社再建プ

          2020.12.15

          もう直ぐ今年も終わりですね。相変わらず御縁を辿って仕事をしている毎日です。11月は新聞に載せていただきましたが、その取材も偶々「狼信仰」をテーマに記事を書かれていた方が偶然「よみがえるニホンオオカミ展」(長野県富士見町)を訪ねてくださり、丹波山村にも狼信仰があることを知って連絡を取ろうとしたら、奇遇にも知り合いの知り合いだったという流れでした。まぁ界隈あるあるなので、ここまで来ると偶然を数える方が野暮というものでしょうか。 遠吠えは今でもその余韻を持って、連鎖し響いています

          2020.12.15

          託された歌

          2020年10月20日は、七ツ石神社の新社殿完成からちょうど2年の節目。今年ようやく再建までの流れをnoteに記しながら、最後の氏子Sさんに電話口で託された歌を届けることにした。忘れていたわけではなく、ずっと気にかかってはいたのだが、いつどのように形にするか考えていたらいつの間にか2年も経ってしまっていた。 ようやく「短冊に書いて額に入れる」ことが決まってから、お山に上げる日程を自分の中で命日に定めていたのだが、どうにもその日は天気が悪いらしい。カレンダーを見ながら延期した

          託された歌

          一反木綿の覚え書き

          あれは大学1年の居合道部夏合宿で訪れた秋田県鹿角市。小高い山の上に宿泊施設を兼ねた道場が建つ。持ち主は居合道部のOBで、毎年の夏合宿はこの山に一週間ほど籠って稽古をするのが習わしだった。 到着して最初にすることは、確か初代館長先生のお墓参りだったと記憶している。お寺では座禅をさせてもらい、道場に着いたらひたすら掃除だ。タイムキーパーが時間を計って、活動中は常に大声でエールを送り合うのがこの部活のやり方だった。なので、大概2日目には喉が潰れる。清掃が終わると居合の稽古だ。食事

          一反木綿の覚え書き

          我が家の怪な話Ⅱ

          我が家での、と言いつつ不思議な目に合うことがあるのは母と私くらいなもので、父はといえば寝起きに小声で挨拶した母を幽霊と思い横にすっ飛んだり、弟は幼少期にありとあらゆる水たまりに落ちる(湖や海を含む)能力?持ちだったくらいのエピソードが記憶にある。 そんなわけで今回は、学校登山で行った蓼科山では地を這う雷と土砂降りで命からがら下山し、家族で行った女神湖では湖のど真ん中でボートが止まって助けを呼ぶ羽目になった母の話である。 いずれも女神縁の地であるのだが、これは天守閣に刑部姫が

          我が家の怪な話Ⅱ