託された歌

2020年10月20日は、七ツ石神社の新社殿完成からちょうど2年の節目。今年ようやく再建までの流れをnoteに記しながら、最後の氏子Sさんに電話口で託された歌を届けることにした。忘れていたわけではなく、ずっと気にかかってはいたのだが、いつどのように形にするか考えていたらいつの間にか2年も経ってしまっていた。

ようやく「短冊に書いて額に入れる」ことが決まってから、お山に上げる日程を自分の中で命日に定めていたのだが、どうにもその日は天気が悪いらしい。カレンダーを見ながら延期した先の日付は、はからずとも10月20日。社殿完成の記念日だった。まさしくハレの日だ。託された歌は、秋の七ツ石山を褒める内容。確かに、命日に上がるより完成したあの日に登ることをSさんなら望んだかもしれない。

短冊には、本人の望み通り「小袖講中」とだけ入れてSさんの名前を書かなかった。小袖集落にあるSさんの墓石へ手を合わせて、その脇から登山道を静かに登っていく。背中には託された歌と、諏訪の酒「八剣」を背負って行った。かつて七ツ石神社の周辺には、無数に奉納された剣が刺さっていたというのを、この酒の名前に想起させたからだ。謙虚なあの人は2年越しに見た七ツ石神社の姿を、どのように感じてくれただろうか。数日前の予報は雨だったが、当日は見事な晴天で、再建当時も完成の日だけ晴れたことを思い出す。

天高し 七ツ石山の晴やかに 錦秋の紅葉四方山に輝く 

「間に合わなかった」2年間そう思い続けた私の中の呪いがひとつ、解ける音がした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?