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暁の瞳

籠三蔵氏から、玉川麻衣さん画「暁の瞳」を七ツ石神社整備委員会へ寄贈していただいた。この絵、実はここ最近の狼絵の中で個人的にとりわけ気に入っていた作品で、SNSで拝見した時に何というか憧憬や希望が入り交ざって、冬山の空気のように鋭くじんわりとした痛みを心に感じたのだった。そもそも、夜明け前という時間帯の題材が好き過ぎるというのもある。

この絵を見た時、勝手ながら七ツ石神社の狼像二匹がじっと夜明けを待つ様であるように思った。金色に輝く瞳が、既に夜が明けた世界を映している。それはきっと、山の夜の中で、一際美しく星のように光っているのだろうなと。この作品を手にする人は、燃え続ける北極星を得るようなものだ。良いな~と、完全にファンの目線で羨んでいたのだった。

ある日の作業中、籠さんから連絡があった。「暁の瞳」をうちに奉納したいのだけど、どうだろうかと。「待って待って」と声に出して繰り返した。こういう時、誰も急かしていなくても人はこうなる。彼もまたこの二匹を七ツ石神社の狼だと思ってくれていたらしい。しかも、そもそも奉納画を依頼する予定で、予定の構図と同じであったので驚いたとのこと。展示会の最終日まで、この作品は待ってくれていたらしい。玉川さんに確認してから、是非うちの村で活躍してもらおうと考えた。

玉川さんから快諾の返事と共に「あれは七ツ石の狼だと思って描いていた」というメッセージ。思わず「やっぱ繋がってるんだよなぁ・・・。」と呟いた。七ツ石神社のチームワーク。しかし、七ツ石神社は山の上。以前には鍵を破壊された経緯もある。作品を奉納するには危険が多かった。どうしたものか。そんな課題を抱えていたら、宿場町整備の事業内で私も文化部門として参加できることになり、「麓にも狼信仰文化の拠点を」という話に。

数年掛かりの計画になるだろうけれど、着実に麓と山上を繋げる舞台が作られつつある。麓にも狼たちの居場所が戻ってくるということは、彼らと歩んできた生活もまた、帰ってくるような気がしている。夜明けの空気を纏ったこの作品が、この村が再び狼と共に繁栄する時代のシンボルとなる日を願ってやまない。

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