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【向日葵は枯れていない!】16.ギラヴァンツ北九州マッチレビュー~第16節 vs テケバジャーロ宮崎 ~

ようやくの更新となりました。
「向日葵は枯れていない!」です。
枯れていないどころか、いい花を咲かせつつあると感じさせてくれた1週間でした。日曜夜の宮崎戦の振り返りにはなりますが、少々水曜日の天皇杯も交えながらまとめてみたいと思います。

1.試合結果&メンバー

国道10号線で繋がる九州ダービーという言われ方もされていましたが、北九州と宮崎って遠いですよね。
今回の試合で(14)井澤選手が宮崎県綾町の出身ということを初めて知りました。私事ながら20年ほど前に綾町を訪ねたことがありまして、照葉大吊り橋や綾城にも行きましたし、農業体験、藍染め体験、サイクリングを楽しみ、最終的には地ビールに舌鼓みを打った記憶が蘇ってきました。
当時から川崎フロンターレなどのJクラブ、また大学サッカー部の合宿地としても知られていましたね。宮崎県も名選手を輩出していますし、「隠れた」サッカーどころといえるのかもしれません。

北九州としては久々の連勝チャレンジでしたが、残念ながらドロー決着となりました。
画面でみる限りは、いちご宮崎新富サッカー場の風は北東方向からの強風。
この風の影響も多分にありましたが、試合全体を通すと宮崎優勢、しかし局面のパワー、迫力では北九州に分があったという感想を持っています。

J3第16節 宮崎-北九州 メンバー

メンバーです。
水曜日に天皇杯を控えていたこともありまして、北九州はCHにキャプテン(14)井澤春輝を起用します。前述しましたように地元凱旋となりました。一方、サブにはMF(20)矢田旭が戻ってきた点や、久々にMF(15)小林里駆がメンバー入りした点が目を惹きます。
メンバー外となった有力選手に関しては、おそらく天皇杯で出番があるのだろうと想像していました。

宮崎はCH(8)力安祥伍が前節退場のため出場停止。代わりに(34)遠藤光が入ります。3月に甲府から期限付で移籍した選手です。筆者個人としては、先日特別指定されたばかりのU-17W杯メンバーFW(30)高岡伶颯の出場に期待していましたが、残念ながらメンバー外でした。

(1)内容向上の宮崎

この試合の特に前半は北九州もさることながら、宮崎のデキの良さが目立っていました。
筆者の「本拠」ファジアーノ岡山は3月にルヴァン杯で宮崎と対戦しており、対戦前の宮崎の試合もチェックしましたが、当時から保持、繋ぐサッカーへの指向はみえたものの、選手個々のスペースへの走り込みやオフザボールの動き、反応といった部分はまだまだとの印象が残っています。

その時以来、久しぶりに宮崎の試合を今回観た訳ですが、非常に戦術が浸透しているとの好印象を持ちました。仕組みの一つとして採り上げたいのが、RSB(2)青山生の動きで、攻撃時には高い位置をとり、RSH(20)阿野真拓を中に入れさせます。中に人数をかけ、左利きの(20)阿野のシュート力を活かすシステムです。
宮崎の攻撃のエンジンが(2)青山にあったという点は、宮崎が試合終盤CB(4)大武峻を投入し3バック化、(2)青山を明確に前線に上げたことからも明らかでした。
更に(2)青山を上げ(20)阿野が中に入ることにより、2トップの一角(13)北村知也が中盤に下りることで、CHの一角(50)安田虎士朗の動きに自由性が生まれ、宮崎の保持をよりスムーズにしていたように見えました。
宮崎の先制の場面は北九州の右サイドでRSB(22)山脇華織と宮崎LSH(44)井上伶が1対1で膠着しているところへ、宮崎が先にサポートに入り数的優位をつくる、北九州もカバーして最終的に3対3になりましたが、この局面で負けて宮崎にクロスを上げさせたところで勝負ありだったと思います。しっかりボールサイドに人をかける点も特徴のひとつであったと思います。こうした特徴がパスネットワーク図(SPORTERIAさん)にもよく現れています。

(2)北九州のビルドアップについて

先制は許してしまいましたが、北九州の最終ラインと宮崎の前線では全体的に北九州の方に分はあるように見え、宮崎に保持されながらも北九州にもボールを持つ時間はありました。
CF(10)永井龍に当てるボールはそれほど多くはありませんでしたが、前線、ミドルゾーンでのプレスには冴えをみせており、奪えばそれなりに前線には運べ決定機をつくれていたことからも、前線へロングボールを送り、セカンドの回収を繰り返していれば、前半のうちに北九州も得点出来ていた可能性は高かったと思います。

しかし、前半の北九州は保持の際、比較的GK(27)田中悠也からのビルドアップを選択する場面が多かったようにみえました。
向かい風の影響を考慮したのかもしれませんが、前節鳥取戦でも前半は同様にビルドアップにチャレンジしており、おそらくチームとしての取り組みであると推察します。

鳥取戦も同様でしたが、このビルドアップが現状では上手くいきませんでした。まず最終ラインがボールを持った時に、両CHへのパスコースは消されていて、かつ両SBも高い位置を取っているので、北九州の両CBはボールの出し所がありません。時折CH(34)高吉正真が下りてきますが、そのタイミングもワンテンポ遅く、宮崎のプレッシャーを剥がしきれません。
仕方なくサイドへ出すのですが、北九州のSBは高い位置から下りてくるため、後ろ向きで受けることになり、またここに両CHらのサポートも乏しく、何度か宮崎に引っ掛けられていました。
最終ラインからSHへつける楔も宮崎に狙われている場面が多く、寧ろある程度、最終ラインでボールを持って前線にロングボールを送った時の方がチャンスになっていました。

J3第16節 宮崎-北九州 北九州のビルドアップ

つまり、両CBからするとどこに出しても手詰まりになる状況がビルドアップ時には続いていたといえます。
保持にも様々な目的がありますので、前線が裏をとれそうなタイミングを見図るために、最終ラインでキープしているという見方もできるのですが、現状、効率が良いとはいえないこのビルドアップを続けている理由には増本監督の保持の指向性があり、まだまだ北九州がチームづくりの過程にあるという点を現わしているのかもしれません。
この点は少々筆者も掴みかねている部分ですので、もう少し今後のゲームも観察していきたいと思います。

(3)大当たり3枚代え!

後半に入りエンドが代わり、宮崎が前半とは変わり、丁寧なビルドアップよりは比較的ダイレクトにボールを扱うようになりました。前述しましたように宮崎の前半のボール運びは選手の激しいポジションチェンジを伴っていましたので、体力的な問題もあったのかもしれません。しかし、風下に立ったことで、前半よりも有効にボールを運べなくなります。
徐々に北九州の攻勢が強まりますが、宮崎も自陣ボックス内外では中を堅めます。そこで67分、増本監督は一気に3枚代えの手に出ます。
(10)永井から(20)矢田、(14)井澤から(11)喜山、そしてOMF(17)岡野凛平から(15)小林です。

(20)矢田がトップ下、(29)高昇辰がワントップに入るのだろうなとフォーメーションを確認しようとした矢先に同点ゴールが決まります。

まず、この得点シーンの前に(22)山脇が何度か右サイドの広いスペースに走り込みクロスを上げていたことから、(22)山脇と中の呼吸が合っていた。そして、この日も積極的な得点意欲をみせていた(29)高昇辰がワントップになったことで、より「自分で決めてやる」という意欲がおそらく強まった点が合わさった同点弾であったと思います。

では久々の出場、しかもファーストプレーで(15)小林が(29)高昇辰のバイシクルにスムーズに反応し、ゴールを決められたのはなぜなのか?

月並みな表現ですが、北九州が日々のトレーニングで、高いレベルにおいてチーム全体で戦術を共有出来ているからだと考えます。

チーム全体で、かつ高いレベルで戦術を共有する上で質の高いトレーニングマッチ(以下、TM)を行うという点は重要と考えています。
今に始まった話ではないのかもしれませんが、大分や今シーズンの山口と頻繁にTMを実施できる環境というのは北九州の大きな強みになっていると思うのです。

天皇杯、新潟戦での健闘は普段から強度、スピード、高い技術に晒されながらTMに取り組んでいる「サブメンバー」たちの実力の発揮にあったと筆者はみています。

余談ですが、北九州の健闘の一方で筆者は岡山で打ちひしがれていましたが(対愛媛1-7の大敗)、岡山の「サブメンバー」たちが大敗する理由のひとつには、怪我人が多くTM自体が組めないことによる実戦機会の不足、また広島や神戸といった高レベルのチームとのTMが(シーズン中は特に)組めていないという課題もあったように思うのです。

(4)締めは天皇杯

まず、対戦相手ながら新潟の先制点がすごいですよね。
最終ラインからゴールまでおそらく北九州の選手は誰も触れていませんよね。新潟もターンオーバーしていましたが、このクオリティを維持出来ている点は素晴らしいと思います。
そして、今回のレビューで北九州のビルドアップについて触れたのですが、ひょっとしたら増本監督がやりたい攻撃、今、北九州が自陣での保持から目指している攻撃の理想がこの形なのかなと筆者は感じました。

それに対して北九州の同点弾なのですが、新潟の先制点に比べると何度も相手に引っ掛かっています。それでも即時に奪い返し前進する選手たちの姿には心奪われるものがありました。(15)小林の運び、そして(30)髙橋隆大の相手守備者との駆け引き、こういうことも出来る選手なのだと再認識しましたし、ひょっとしたら彼は全体のゲームスピードが上がれば上がるほど輝きを増すのかもしれないと思いました。

新潟相手に一時はリードしたという点もチームの自信になるでしょうし、3点目、4点目はボックスの中でしっかり相手の目線、動きを引き付けてフリーの選手をつくるという北九州がこれまで取り組んできた攻撃の成果が出ていたと思います。(8)若宮拓海や(18)渡邉颯太にも再び自信になることでしょう。

なかなか盛り沢山で今後への楽しみが増えた1週間でしたが、J3はまだ折り返しも迎えていません。シーズン前半戦のうちにリーグ戦連勝を経験しておきたいですね。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略



【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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