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【向日葵は枯れていない!】15.ギラヴァンツ北九州マッチレビュー~第15節 vs ガイナーレ鳥取 ~

久しぶりのギラヴァンツ北九州リーグ戦レビューです。
これまでは2,000~3,000字程度のミニレビューとしてお送りしておりましたが、筆者が慣れてきたこともありまして、今回からは少々厚みを加えた形でお送りしたいと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。

1.試合結果&メンバー

ホームゲーム自体が5/3以来の約1か月ぶりということもあり、ミクスタの盛り上がりぶりがTL上からも伝わってきました。
そしてホームでの勝利は4/10琉球戦以来の2勝目、チームは今シーズン4勝目をマークしました。琉球戦は水曜日でしたから、週末のホーム戦勝利も今シーズン初、いいお酒を呑まれた方も多かったのではないでしょうか?

試合開始前の順位は15位、上下との勝点差をみましてもこの試合で3ポイントを獲れるかどうかで、今後上を向いて戦うのか、それとも残留争いを気にすることになるのか、まだまだ油断は出来ませんが分水嶺になりそうな一戦であったと思います。

北九州にとって非常に大きな意義を持つ勝利といえます。
スコアは1-0となりましたが、過去2勝の1-0とは内容的にも進展がみられたと思います。この点が今回のレビューの中心になります。

J3第15節 北九州-鳥取 メンバー

続きましてメンバーです。

そもそも、リーグ戦の間隔が空いたのは5/26に天皇杯1回戦(鹿屋体育大戦3-0)が行われたからなのですが、この天皇杯で北九州は今後の戦いを見据えて、何人かのメンバー、そして組み合わせを試していたと思います。
今シーズンの北九州の強みのひとつは、主軸がしっかり固まっている一方で複数のポジションで競争が生まれている点にあると考えます。
この天皇杯1回戦もチームとして「試したい選手、組み合わせ」があったようです。(※以下、天皇杯1回戦公式記録)

この1回戦でOMF(トップ下)で起用された(17)岡野凛平が今回のリーグ戦でもそのままOMFで先発しました。
サブではMF(30)髙橋隆大やFW(18)渡邉颯太がメンバー外となります。一方で天皇杯でゴールを決め続けた続けたFW(9)平山駿がメンバー入りを果たしました。

鳥取は4-1-2-3です。
中盤より前がアンカー頂点の逆三角形という形はJ3ではよく見かけるという印象があります。
このシステムはワンアンカーの役割や出来が鍵になるという印象を持っています。

そしてLSH(21)牛之濱拓や増本浩平監督にとっては古巣対戦となります。
昨シーズン途中から鳥取を率いて、立て直しに成功、躍進させて退任した増本監督、そしてその鳥取で多くのゴールを奪った(21)牛之濱にとって良い記憶も多い対戦相手であったといえます。
いわゆる「恩返し」の勝利への期待も高まっていたと思います。

2.レビュー

(1)突破口となったロングフィード!

序盤、北九州も鳥取もお互いそれなりにセットプレーなどのチャンスをつくっていましたが、久々のJクラブ相手の公式戦という影響もあったのか、北九州は総じてショートパスが弱く、味方同士ののパス交換が上手くいきません。また、今シーズンここまでパスを細かく繋ぐサッカーを展開していた鳥取が左サイドのLWG(17)小澤秀充やCF(9)富樫佑太を走らせるボールを蹴る場面も多く、想定と異なっていたのか、徐々に北九州のライン間を広げられます。こうなるとCF(10)永井龍に当てたセカンドの回収も上手くいかず、若干鳥取に押し込まれる場面もみられました。

一方の鳥取もフィニッシュやアタッキングサードでのパスは精度を欠き、北九州はGKも含めた最終ラインでボールを奪い返します。上述しましたように前進が難しい状況にありましたので、北九州は最終ラインからのビルドアップを選択、保持を試みますが、鳥取がCH(34)高吉正真、(11)喜山康平らへのパスコースを消していることもあり、GK(27)田中悠也と2CB(50)杉山耕二と(13)工藤孝汰はなかなかパスの出し所を見つけることが出来ませんでした。
無理筋のショートパスを鳥取に引っ掛けられる場面も散見されました。

北九州が序盤の20分、このように全体的なボール運びが上手くいかず、ちょうど手詰まり感が出始めていた時に電光石火の先制ゴールが生まれます。

自陣左奥からのFK、(27)田中の力強いキックは一気に北九州の前線まで伸びます。これをLSH(29)高昇辰が高い打点で競り勝ち、(10)永井に落とします。(10)永井は寄せてくる鳥取2CBを引き付けて(17)岡野へ。(17)岡野もきっちり2CBを引き付けてキープ、(10)永井へリターン。フリーの(10)永井が鳥取GK(27)櫻庭立樹を動きを冷静に見極めゴールへ流し込みました。

まず驚きはGK(27)田中のキックの伸びと精度でした。約80mぐらいでしょうか?こんなボールを蹴ることが出来るのかという驚きを隠せませんでした。
おそらく日常のトレーニングからキックの飛距離、質の改善に取り組んでいるのだろうと思わせてくれました。彼を始め、北九州の特に若い選手は、まだ筆者が知り得ていない伸びしろを持っていそうです。そんな伸びしろをこれから魅せてもらえる楽しみも増えたような気がします。

そして、そのロングフィードにしっかり反応した(29)高昇辰も見事でしたし、セカンドに反応した(10)永井、(17)岡野の連携も素晴らしかったです。
北九州の前線に関しては次の項目で更にまとめてみたいと思いますが、3試合連続ゴールを決めた(10)永井のコンディションの良さが光ります。
岡山にいた頃も出場した試合では労を惜しまずハードワークしてくれましたが、ここまで走り回れる(10)永井の姿を観られて、本当に手術に踏み切って良かったと思いますし、良いタイミングで北九州という活躍の場を得られたとも思いました。
データによって異なりますが、この日撃ったシュートは8~10本と記録されています。これだけ撃てたのであれば、欲を言えばもう1点ぐらいは…とも思いますが、この点については鳥取GK(39)櫻庭立樹との駆け引きもあったようです。

その(39)櫻庭選手もGK目線から、北九州の先制ゴールをご自身のnoteで振り返っています。ぜひお読みください。こういう選手目線の発信はサポーターとしても観戦眼が深まりますし、ありがたいです。

サッカーとは不思議なモノで、ひとつのゴールがそれまでの試合展開、内容をガラッと変えてしまうことがあります。
(10)永井の先制ゴールを境目に北九州は目が覚めたかのようにプレーがテンポアップ、前述の最終ラインからのビルドアップについても、(34)高吉らの受ける動きが活発化、セカンドボールの回収もスムーズになります。
こうなると、鳥取が今度は最終ラインからのビルドアップを増やしていくのですが、北九州はこれを高い位置、またはミドルゾーンで引っ掛けることが出来るようになりました。

(2)永井-岡野は最適解となるのか?

北九州の前からの守備が機能し始めたことと、(10)永井に得点チャンスが数多く生まれたことには関係性があると考えています。

3試合連続ゴールを決めた(10)永井のスタッツです(SPORTERIAさんより)。この試合の(10)永井は実に10本のシュートを放っています。
これは(10)永井がこの試合で「フィニッシャー」、「ストライカー」としての仕事に集中できたからだと考えます。

(10)永井がフィニッシュに集中できる状況をもたらしたのが、この日トップ下に入った(17)岡野の存在です。

2024シーズン 1トップ(10)永井とトップ下の選手一覧

(10)永井が1トップで出場した際にトップ下を務めた選手の一覧です。
今シーズンの北九州において、このトップ下はなかなか固定出来ていませんでした。
ポイントは永井との役割分担です。例えば(29)高昇辰の場合は、お互いに得点への意識が強いせいもあってか攻撃局面でポジションが被る場面がこれまでみられていました。
また(20)矢田旭の場合、彼はショートパスよりもミドルパスに冴えをみせる選手には見え、組み立て能力の面からも2列目よりは3列目の方が向いているという点から、トップ下自体が最も適しているポジションとは言い難いと考えています。
(8)若谷拓海や(7)平原隆暉に関してはタイプ的にはトップ下なのですが、守備の強度面ではまだまだこれからという面も見受けられました。

よって、(10)永井の「仕事」が皮肉にもトップ下のタスクを補完する守備面やボールキープなど多岐に渡ったことで、その得点能力をなかなか発揮し得なかったリーグ前半戦であったと思うのです。

J3第15節 北九州-鳥取 北九州の守備と鳥取のビルドアップ

(10)永井のタスクを「ストライカー」に集約させる上で、この試合の(17)岡野の果たした役割は非常に明確であったと思います。
大前提として鳥取がチームづくりの過程にあり、後方からのビルドアップにこだわっているという面はあったのですが、(17)岡野は鳥取のアンカー(10)世瀬啓人への対応をほぼ怠らずにやれていました。まずこの働きが(10)永井を鳥取2CBとの勝負に集中させていたと思います。
更にはチーム全体の影響としては、(10)世瀬に有効な仕事をさせなかったことで、北九州の2CHが鳥取球出しを担う2IHにスムーズに対応できていた点は見逃せません。これが北九州が比較的高い位置で鳥取ボールを回収出来ていた大きな要因になると思います。

そして(17)岡野のもう一つの役割がアタッキングサードでおとりになることです。先制点の場面が最もわかりやすいですし、22分の(10)永井の決定機でも(17)岡野がしっかり引きつけていますね。
ボールを預けた時の安定したキープ力も見逃せない点です。

これまで右サイドが主戦場の(17)岡野でしたが、ひょっとしたら今回のトップ下起用が最適解になるのではないかという予感を持っています。
相手のボール運びやシステムが変わってどうなるのか?という点はありますが、次節以降の起用にも注目したいです。

(3)競争の活発化

欲をいえば、56分鳥取ゴール前での波状攻撃を決め切り2-0で勝てれば申し分なかったのですが、これまでのウノゼロ勝利と比べますと、試合全体を通じて攻撃を持続出来ていた点に北九州の成長を感じ取りました。
その56分の波状攻撃、RSB(22)山脇華織のヘディングシュートはゴールを割ったように見えたのですが、右サイドバックの彼がしっかりフィニッシュに絡む積極性をみせた点に、(23)坂本翔の復帰が目前に迫っていることを踏まえての強いアピールを感じました。
チーム戦力全体の底上げのためにも非常に良い傾向と感じています。

もう一段階こうした競争の活発化を求めたいのが、今回メインで触れました1トップのポジションです。(10)永井のコンディションの良さを今回何度も述べていますが、もし彼が今後欠場した際の1トップに関しては、チームとしてまだまだ底上げが必要です。
天皇杯での好調ぶりが認められベンチ入りした(9)平山が後半、(10)永井に代わり登場しましたが、プレースタイルの違いはあるとはいえ、かなりプレス強度、運動量という面が落ちてしまう点は、交代で出場しているという役割を踏まえても少々物足りなさを感じてしまいます。
一方、もう1人のワントップ候補である(18)渡邉に関しては、トレーニングマッチでの好調ぶりは伝わってきますが、シーズン序盤と比べますと起用機会が減少しています。
おそらく得点能力という点では期待値が高いと思われますが、北九州の1トップ行うべきタスク、下がって受ける部分などがまだまだという面があるのかもしれません。
夏のマーケットへの期待もありますが、やはり今シーズンの北九州の予算面を踏まえれば現有戦力の奮起に期待したいところです。

(4)ハイレベルなTRMを!

この試合での課題は、序盤の10~20分、北九州最終ラインからのビルドアップが不安定であった点になると思います。全体的に選手の気持ちが前へと向かい過ぎてしまっているのか、ビルドアップの際の選手の距離感があまりよくない印象を持っています。
ひょっとしたら、保持時に両SBを高い位置に上げる3-4-3のような可変を行っていたのかもしれません。
中央を消されてサイドに出してもSBが自陣に下がり後ろ向きでボールを受けるシーンが多く、なかなか前進が出来ません。この点はトレーニングマッチ(以下TRM)を通じての改善に期待したいです。
と述べますのは、北九州はTRMを大分や山口といった上位カテゴリーのチームと組める強みがあるからです。実際のところルヴァン杯大分戦の勝利は、TRMで結果を残していた自信も影響していたと思いますし、町田戦での善戦も、この大分戦で得た勝利がベースになっていたと思います。
特に、最終ラインからのビルドアップを磨くうえで、しっかり連動したハイプレスを仕掛けられる今の山口とのTRMは工夫次第でかなりのチーム力強化に繋がるのではないでしょうか?

案外、TRMを力のあるチームと組める環境は羨ましいものなのです。

この点は少々おまけのようなお話でした。
次は九州ダービー宮崎戦ですね。宮崎には「超高校級」との触れ込みもある高岡伶颯(日章学園)が特別指定選手として登録されたばかりです。
J3全体でも注目を浴びる試合になりそうですが、しっかり北九州のチーム力を出せば、勝点3を持ち帰れる相手であるとも思います。
連勝に期待しています。

同時刻、筆者はシティライトスタジアムで手に汗を握っていますから、リアタイは残念ながら出来ませんが、勝利への念をしっかり新富町に送ります。

お読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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