過熱するデジタル人材争奪戦 〝即戦力〟発想やめ自社育成を|【特集】デジタル時代に人を生かす 日本型人事の再構築[Part4]
日本型雇用の終焉──。「終身雇用」や「年功序列」が少子高齢化で揺らぎ、働き方改革やコロナ禍でのテレワーク浸透が雇用環境の変化に拍車をかける。
わが国の雇用形態はどこに向かうべきか。答えは「人」を生かす人事制度の先にある。
安易に〝欧米式〟に飛びつくことなく、われわれ自身の手で日本の新たな人材戦略を描こう。
文・編集部(川崎隆司)
「中途採用人材に年収最大10億円」
年明け1月、日本経済新聞の見出しで驚愕の数字が躍った。ファーストリテイリングは、米AmazonなどIT大手企業との競争が激化する中で、主にIT技術者に対する中途採用年収を最大10億円に引き上げるという。世界規模でのデジタル人材の奪い合いに備える見込みだ。
求人倍率は「IT・通信」分野が圧倒的に高い
雇用の流動性の低さが指摘されてきた日本国内では、少子高齢化による労働力人口の縮小を機に、その潮目が変わり始めている。近年の中途採用市場における過熱ぶりについて、人材業界に身を置くある社員は「採用契約成立時に人材紹介業者が企業から受け取る手数料は採用者の理論年収の3割が相場だったが、4割、5割とつり上げる企業が増えてきた。『(理論年収の)7割を払うから良い人材をウチに紹介してほしい』と要求する大手コンサル企業もある」と語る一方で、その弊害も吐露する。
「転職歴が多い希望者に対し、1つの職歴ごと削除するよう求めるなど、非常識なやり方で企業に『売り抜け』ようとする転職エージェントも目立つ」
また、元転職エージェントのある社員は「特にデジタル人材に対する募集が多く、営業職であっても『SaaS(サース)』や『The・Model(ザ・モデル)』といった関連用語を職歴に載せるだけで、検索によって企業からのオファーが殺到する。とにかく採用されようと、1年間専門学校に通っただけで、職歴に『SE(システムエンジニア)経験有り』と記載し、入社までこぎつけるケースもある」とその内情を語る。
労働経済学を専門とする中央大学経済学部の阿部正浩教授は……
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