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ストレングス・ファインダーやってみた──弱点克服ではなく、「強み」をのばすために

「弱点を直すことを中心に回っている世界で生きることには、もううんざりしていた」(5頁)。

本書冒頭に、筆者(トム・ラス)の率直な心情が吐露されています。

学校教育をはじめとして、現代社会の人物評価の多くは人の短所に焦点をあてますよね。この「弱点克服」へと方向づけられた評価体系に対する懐疑的精神が、本書全体を貫いているのです。

自分の才能(元来の資質)にエネルギーを注ぐことがその人特有の「強み」を形成し、結果として爆発的な成果を生み出すはずだ――これがトム・ラス著『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版 ストレングス・ファインダー2.0』の基本的なアイデアです。

本記事では、まず本書の発想を示し、その後僕の上位5つの資質を具体例として紹介したいと思います。


1. 自爆しないために「自分」を知ろう

「努力すれば何者にもなれるよ」——このような言葉がネットとか自己啓発本にはよく書かれています。けれども、本当に時間と労力を割けば「何者にでもなれる」のでしょうか?

残念ながら、なれないでしょう(より強い主張をすれば、「なるべきでない」でしょう)。

例えば、「数字が嫌い😭」という人は統計学者や数学者には向かないだろうし、「オレは直観で生きるぜ😎」という人には厳密さが要求される弁護士や公務員には向かないでしょう。

わざわざ自分から「いばらの道」を進む必要はないのです

反対に、本当に自分の資質に適合した事柄に没頭することができれば、物事は簡単に進むと筆者は述べます(僕もそう思います)。

才能を伸ばすことエネルギーの多くをすることができれば、僕たちは飛躍的な「成長」を遂げることができます! 「成長」まで言わなくとも、少なくとも楽しく生きられるんじゃないかなと思います。

「いばらの道」に行かないためには結局、「自分」を知る必要があるのです。

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2. 能力主義(成果主義)の社会になりつつあるからこそ「強み」が大事

自分の強みを伸ばす機会を持つことは、職種や肩書き給料の額よりも「自分が満足して仕事をするために」優先して考慮すべき事柄です。

能力重視の傾向が強まっている今日の社会では、自分の「成果」と「満足感」が相関してとらえざるを得ないでしょう。やっぱり「結果」が出たら嬉しいし、出なかったら落ち込んじゃいますよね。

もしあなたが自分の強みのゾーンにいないとしたら何が起こるでしょうか。筆者は、「あなたがいま強みが発揮できるゾーンにいなかったら以下のようになっている可能性が高い」と脅しています(18頁)。

・仕事へ行くのが不安だ
・同僚と積極的というより消極的に関わる
・顧客をないがしろにする
・勤務先がいかに悲惨かを友人に語る
・日々の達成率は低調だ
・前向きに考えられず創造的でなくなる

ではなぜ多くの人が「強みのアプローチ」を使って生活しないのでしょうか?

考えられるのは、ほとんどの人が自分の、または自分の周りの人たちの強みを知らないか、知っていても説明できないという理由です。

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3. ストレングス・ファインダーとは?

本書にはアクセスコードがついており、それによって「ストレングス・ファインダー」というテストを受けることができます。200問弱あって、一問あたり20秒以内で回答しなければなりません。

(ぶっちゃけ就活によく受けさせられる「性格検査」みたいなやつと大差ありません。)

ストレングス・ファインダーが測定するのは、才能(おそらく本書の文脈では「資質」という意味)であって強みではありません。

ではなぜ「タレント・ファインダー」ではなく「ストレングス・ファインダー」と名付けられているかというと、テスト開発者たちの最終目標が「受験者の真の強みを築くことにあるからです。

才能(資質)は「強み」のもととなる一要素に過ぎまぜん。

あなたの才能を「強み」にするには、身体的に強くなると同様に猛特訓すればよいのです。つまり、才能に沿う形の行動にエネルギーを注ごうということです。

このことは、才能自体を新たに身につけることは全く違う話です。筆者が提案しているのは、その人が持つ高い才能を起点にして、スキルや知識を身につけ練習を積んでいこうぜということなのです。

4. 実際に受けてみた

診断結果では、34個の資質のうち、上位5つが提示されます(さらに課金すればもっと見れるらしいです)。

僕の5つの資質は、①原点思考②学習欲③内省④収集心⑤運命思考でした。

原点思考は、「過去を振り返って行動の指針にしますよね、アナタ」というものです。学習欲、内省、収集心に関しては、通俗的に使われている通りの意味です。運命思考は、「あなたはすべてには意味があり、物事は連関していると思っていますよね」というものです。

やっぱ僕はハイデゲリアン(ハイデガーにハマった哲学研究者)だから、そういう思考になっているんだなぁという気がします。

つまり、現在だけでなく過去や現実化されていない可能性までも含めて思考し、運命を引き受けて決断する――このようなハイデガーの主著『存在と時間』的な発想を僕は性格診断の選択にまで反映させてしまっているのです! どんだけ内面化してるんだよ。

(哲学知らない方には何言ってるかわからないと思います...)

行動の指針みたいなのもあったので、いくつか書き留めておきます。

・課題に取り組む際には、これまでの事例を参照する
・歴史小説やノンフィクション、伝記を読む
・できる限り、技術や規則が変化する分野にキャリアをチェンジする
・人を知的で哲学的な討論に参加させることは、すべての人にとって有効なわけではないことを肝に銘じる
・情報を集めて吸収したら、それらを共有する
・従事している活動が、組織全体の中でどのような位置づけにあるかわかるように、同僚に働きかける

わりと具体的なアドバイスです。実践していこうと思います😄

5. おもしろく生きたいなら「過剰」であれ

おもしろい人はいつだって「過剰な奴」で、何らかの資質が欠落しているように思うのです。己の道を行き、トガり切るという態度、憧れます。

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何でもそつなくこなし、ゆる~く日常を過ごすのもアリですが、もしあなたが「自分らしさ」を追求して生きたいと思うのであれば──自分らしさに付随する「自由」と「責任」を引き受ける覚悟があるならば──自分の資質を把握することと、資質に沿うようにリソースを割くことが有効なのではないでしょうか。

必ずしも『さあ、才能に目覚めよう』を買う必要はないと思いますが、変なネットの性格診断や怪しい占いよりはマシだと思うのでおすすめします↓

思考の材料

参考文献

個人的には、この手の本には「うさんくささ」を感じてしまいます。まず、たいてい翻訳が下手で不自然な日本語だからです。加えて、このような本に手を伸ばす人の多くは「学術的な」本よりも手っ取り早く「成功」したいと考えている人が多いだろうという個人的な偏見もあるからです。

というか内容のわりに、2000円もするのが高い。新書を2冊買ったほうが情報量多いし、勉強になります。

とはいえ、たくさん質問に答えて自分の性格(自分の回答の傾向に依存した性格)を知れるのは、日常生活を送る上では有用ですから、興味を持った方はやってみるといいでしょう。

自己とは何か?を根本的に考えたい人には、以下の2冊もおすすめでします。

①平野啓一郎『私とは何か──「個人」から「分人」へ 』講談社現代新書、2012年

②池谷裕二『進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線』講談社ブルーバックス、2007年

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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