早稲田大学詩人会

1960年創立の早稲田大学公認文芸サークル早稲田大学「詩人会」です。会誌刊行、文学フリ…

早稲田大学詩人会

1960年創立の早稲田大学公認文芸サークル早稲田大学「詩人会」です。会誌刊行、文学フリマへの出店、合評会・読書会・座談会などをしています。年中入会受け付けています。お問い合わせはTwitterのDM・メールなどからどうぞ。shijinkai1960@gmail.com

記事一覧

白石かずこ『火の眼をした男』『砂族の系譜』

『火の眼をした男』 不思議さを感じた。 暖かさに距離を感じる。なぜなら、触れていないから。主体が暖まっていない。 火へんがない。 「~くれた」主体の感覚はあるが、あ…

【夏休み企画】詩集を一冊読もう!(最果タヒ『夜景座生まれ』)

詩人会では毎月、合評会と座談会を行っている。合評会は、部員が作った詩を持ち寄って意見交換をする会であり、座談会は既存の詩を2~3つ選び、読み解く会である。活動の…

萩原朔太郎『内部に居る人が畸形な病人に見える理由』、八木重吉『息を殺せ』『鉛とちようちよ』『霧がふる』

萩原朔太郎「内部に居る人が畸形な病人に見える理由」 全体的に不気味な感じ。 自分を客観視。 腰から下ならば、足のこと?病人は寝たきりであんまり歩かないから? わたく…

プレヴェール『朝の食事』谷川俊太郎『コカ・コーラレッスン』座談会議事録

5月26日座談会議事録 プレヴェール『朝の食事』 今回はフランス語、日本語訳二バージョンの計三つ用意した。 フランス語既修者は、六人中四人。 Il、人は指している。最初…

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左川ちか『昆虫』『錆びたナイフ』『海の捨子』座談会議事録

今回は、北園克衛や春山行夫らとともにモダニズム運動を担った左川ちかから、三篇取り上げた。中原中也らととも同世代である彼女は、夭折の天才と評されることもある。 本…

ハーラ・アルヤーン『帰化した』大木潤子『その眼の光から』座談会議事録

『帰化した』ハーラ・アルヤーン/佐藤まな訳 ハーラ・アルヤーンは、イリノイ州出身のパレスチナ系詩人であり、「帰化した」もパレスチナ問題を訴える詩の1つである。 話…

第1回朗読会

先日、Discordにて、第1回目の朗読会が行われた。 なぜ詩を朗読するのだろうか。詩は、文字で書かれるものである。詩は、文字なしではありえないが、朗読なしではありえる…

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久谷雉『泡かもしれない』『ちいさなことば』座談会議事録

(もう五月も終わりかけているそうなのだが、そんなことは気にせず)2月18日に見学者2名を含む7人で行った、久谷雉の詩「泡かもしれない」「ちいさなことば」について…

合評会議事録(二〇二三年四月二十二日)

 4月22日に行われた合評会の議事録である。新年度が始まって間もない会であったため、見学、お試しの方もいらっしゃった。参加者は9人、出された詩は7篇だった。予定で…

合評会議事録(二〇二三年四月七日)

2023年4月7日に部室にて合評会が行われた。新入部員や見学者合わせて6人の初参加者を交え、10人で詩について議論した。 今回は5人が詩を提出したが、ここにすべての議論を…

合評会議事録(二〇二三年二月二十三日)

 今回の参加人数は7名。一人ずつ自作を朗読し、他のメンバーが感想やちょっとした批評を投げる。それを受けて作者が解題(作品に込めた意図などを解説すること)を言う、と…

合評会議事録(二〇二三年一月二〇日)

 一月二十日に部室にて合評会が行われた。今回は六人が参加し、一人一篇ずつ詩を持ち寄って朗読、批評、議論を行った。ここでは、提出された詩の中から赤澤玉奈さんの詩「…

谷川俊太郎『渇き』座談会議事録

座談会の翌日(1月30日)に、早稲田大学小野記念講堂にて谷川俊太郎のシンポジウムが開かれる(というか開かれた)。そして座談会では谷川俊太郎「渇き」を読んだ。なんたる偶…

合評会議事録(二〇二二年十二月十七日)

 この回は6人が参加し、3時間にわたって8作品を読み議論をした。ここではそのひとつ、栫伸太郎さんの『かんせい/ふゆのおわりに』に関する議論を記録する。  『かんせい…

伊良子清白『漂泊』座談会議事録

 12月20日、部室にて座談会が行われた。テーマは伊良子清白の『孔雀船』より「漂泊」、4人の部員で1時間半に渡って詩について語り合った。  そもそも伊良子清白とはどう…

最果タヒ『14才の化学進化説』座談会議事録

11月26日(土)、他大学からの見学者3名、早稲田大学からの見学者1名を交えた計6名で最果タヒ『空が分裂する』より「14才の化学進化説」の座談会が行われた。4名もの見学者の…

白石かずこ『火の眼をした男』『砂族の系譜』

『火の眼をした男』
不思議さを感じた。
暖かさに距離を感じる。なぜなら、触れていないから。主体が暖まっていない。
火へんがない。
「~くれた」主体の感覚はあるが、あまり対面している感覚がない。主体は幸せになっているのか?
「かわりばんこ」連鎖を感じる。
この詩を読んで不安になった。
主体は読み手では? 白石さんが書き手であることをあまり感じなかった。
読み手として主体になれなかった。書き手を詩の中

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【夏休み企画】詩集を一冊読もう!(最果タヒ『夜景座生まれ』)

詩人会では毎月、合評会と座談会を行っている。合評会は、部員が作った詩を持ち寄って意見交換をする会であり、座談会は既存の詩を2~3つ選び、読み解く会である。活動の様子は、過去のnoteを参照いただければと思う。

 さて、先日「詩集を一冊読もう!」と題して、夏休み企画が行われた。普段の座談会では、取り上げられる詩は2~3つであり、詩集を最初から最後まで読むということは、ほとんどない。しかし、詩人が自

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萩原朔太郎『内部に居る人が畸形な病人に見える理由』、八木重吉『息を殺せ』『鉛とちようちよ』『霧がふる』

萩原朔太郎「内部に居る人が畸形な病人に見える理由」
全体的に不気味な感じ。
自分を客観視。
腰から下ならば、足のこと?病人は寝たきりであんまり歩かないから?
わたくしは立っているから、実際の自分との乖離を表している?
「君」見られている自分の存在。客観的に見つめる一人称だけではない。
内部にいるのはわたくし。
君は外部? タイトルから、私は内部にいる畸形な病人ということが分かるが…。
ニッケル製の

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プレヴェール『朝の食事』谷川俊太郎『コカ・コーラレッスン』座談会議事録

5月26日座談会議事録
プレヴェール『朝の食事』
今回はフランス語、日本語訳二バージョンの計三つ用意した。

フランス語既修者は、六人中四人。
Il、人は指している。最初から彼はいた。
同化翻訳か異化翻訳か、という問題。
主語ないと書けない。主語があることで不可避的にニュアンスが生まれる。
主語隠したいなら受け身にするのが普通。Andでも主語はなくせる。
あえてIl。
ここで、英語訳を捜索。英語の

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左川ちか『昆虫』『錆びたナイフ』『海の捨子』座談会議事録

今回は、北園克衛や春山行夫らとともにモダニズム運動を担った左川ちかから、三篇取り上げた。中原中也らととも同世代である彼女は、夭折の天才と評されることもある。

本文中に出てくる『海の捨子』『海の天使』『海の捨児』の関係について、あらかじめ補足する。『海の捨子』は、伊藤整によって書かれた詩『海の捨児』の本歌取りのようなものといわれている。また『海の天使』は『海の捨子』を改行したものである。
また、最

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ハーラ・アルヤーン『帰化した』大木潤子『その眼の光から』座談会議事録

『帰化した』ハーラ・アルヤーン/佐藤まな訳

ハーラ・アルヤーンは、イリノイ州出身のパレスチナ系詩人であり、「帰化した」もパレスチナ問題を訴える詩の1つである。
話はまず、日本語として文体が奇妙というところから始まった。訳詩であるため、それが元の詩から来るものなのか、訳されたがゆえに生じたものなのかが分からない。
この詩は現代詩手帖から引用したものであるが、現代詩手帖にはぜひ、原文載せてほしいとこ

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第1回朗読会

先日、Discordにて、第1回目の朗読会が行われた。
なぜ詩を朗読するのだろうか。詩は、文字で書かれるものである。詩は、文字なしではありえないが、朗読なしではありえる。このことを鑑みれば、詩が詩であることにおいて、朗読は必要条件ではない。しかし言葉の本来の姿は、声ではなかったか。文字を持たない社会は存在するが、音声を持たない社会は存在しないだろう。言葉と声の間には、密接な関係があるはずだ。文字と

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久谷雉『泡かもしれない』『ちいさなことば』座談会議事録

(もう五月も終わりかけているそうなのだが、そんなことは気にせず)2月18日に見学者2名を含む7人で行った、久谷雉の詩「泡かもしれない」「ちいさなことば」についての座談会の模様を報告する。

 

 この二つの詩を取り上げることを提案したのは私なので、まずはそのいきさつから話を始めよう。

 今回取り上げた二つの詩は、どちらも詩集『ふたつの祝婚歌のあいだに書いた二十四の詩』(思潮社、2007)に収録

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合評会議事録(二〇二三年四月二十二日)

 4月22日に行われた合評会の議事録である。新年度が始まって間もない会であったため、見学、お試しの方もいらっしゃった。参加者は9人、出された詩は7篇だった。予定では3時間だったのが延長し、30分の休憩を挟みながら、合計4時間にわたり会は催された。
 この議事録では、7篇のうちの1篇、『中庸の鋼』について交わされた言葉を記していく。

(感想・意見)
・Ⅰの4連目が好き
・茨木のり子のような、パブリ

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合評会議事録(二〇二三年四月七日)

2023年4月7日に部室にて合評会が行われた。新入部員や見学者合わせて6人の初参加者を交え、10人で詩について議論した。
今回は5人が詩を提出したが、ここにすべての議論を記すことは難しいため、特に勿忘夏夜さんの『修飾』を取り上げる。

以下『修飾』の全文である。

さて、この詩について様々な意見が出された。
①    朗読
合評会では最初に作者が朗読するという形式を取っているのだが、この朗読のトー

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合評会議事録(二〇二三年二月二十三日)

 今回の参加人数は7名。一人ずつ自作を朗読し、他のメンバーが感想やちょっとした批評を投げる。それを受けて作者が解題(作品に込めた意図などを解説すること)を言う、というのが一連の流れである。今回も、各々がアイデアや日常の出来事を詩にしたものが見れると思っていた。しかし、一つ問題作が載っていた。栫伸太郎さんの「空洞」である。

「なれな
かっ

のは
とても
可哀想ね
価値中立的
中級コーラに
教え

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合評会議事録(二〇二三年一月二〇日)

 一月二十日に部室にて合評会が行われた。今回は六人が参加し、一人一篇ずつ詩を持ち寄って朗読、批評、議論を行った。ここでは、提出された詩の中から赤澤玉奈さんの詩「潜水」についての議論を報告する。以下に全文を引用する。

潜水

二人組をつくってください
体を包み込みながら揺蕩うものと温度を合わせても同じになることはないのだと
委ねることで耳を塞いだ
指先が白く腐食して
水を吸ったところから透明度が上

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谷川俊太郎『渇き』座談会議事録

座談会の翌日(1月30日)に、早稲田大学小野記念講堂にて谷川俊太郎のシンポジウムが開かれる(というか開かれた)。そして座談会では谷川俊太郎「渇き」を読んだ。なんたる偶然であろうか。少なくとも私は、この巡り合わせに感謝しつつこの座談会の議事録をまとめている。

会では、詩を読む前に各々が好きな谷川作品を言い合った。詩集「クレーの天使」(講談社)や「トロムソコラージュ」(新潮文庫)が好きという人もいれ

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合評会議事録(二〇二二年十二月十七日)

 この回は6人が参加し、3時間にわたって8作品を読み議論をした。ここではそのひとつ、栫伸太郎さんの『かんせい/ふゆのおわりに』に関する議論を記録する。

 『かんせい/ふゆのおわりに』は全文が平仮名で書かれていた。私(白木)は作者の朗読を聞いて童謡に似た柔らかさを感じ、また、地面に寝転がって灰色の空を見上げているイメージを持った。これは紙面上にあるのが平仮名のみだったが故に、普段漢字が入り混じる紙

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伊良子清白『漂泊』座談会議事録

 12月20日、部室にて座談会が行われた。テーマは伊良子清白の『孔雀船』より「漂泊」、4人の部員で1時間半に渡って詩について語り合った。

 そもそも伊良子清白とはどういった詩人だったのだろうか。伊良子清白は1877年に鳥取に生まれ、医者をする傍ら詩作を続けた詩人である。生来の漂泊癖により、どこにいたのかわからない時期もあるほどだという。時代としては萩原朔太郎より10歳ほど年上であり、「漂泊」が発

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最果タヒ『14才の化学進化説』座談会議事録

11月26日(土)、他大学からの見学者3名、早稲田大学からの見学者1名を交えた計6名で最果タヒ『空が分裂する』より「14才の化学進化説」の座談会が行われた。4名もの見学者の方に参加していただいて嬉しい限りである。詩人会は常に他大学・早稲田大学を問わず部員・見学者を受け付けています。

思うに最果タヒとは不思議な詩人である。いわゆる「エモさ」——ナイーブな感受性とその表現——を第一のイメージとして持

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