【夏休み企画】詩集を一冊読もう!(最果タヒ『夜景座生まれ』)

詩人会では毎月、合評会と座談会を行っている。合評会は、部員が作った詩を持ち寄って意見交換をする会であり、座談会は既存の詩を2~3つ選び、読み解く会である。活動の様子は、過去のnoteを参照いただければと思う。

 さて、先日「詩集を一冊読もう!」と題して、夏休み企画が行われた。普段の座談会では、取り上げられる詩は2~3つであり、詩集を最初から最後まで読むということは、ほとんどない。しかし、詩人が自身の詩を一冊にまとめるとき、なぜその詩が収録されたのか、どうしてその順番で収録されたのかということについて、多少理由があるはずである。それに、一人の詩人が書いた詩をたくさん読むことで、その詩人が持つ、詩を書くこと全般に対する意識や癖を発見することができるかもしれない。

 今回選ばれたのは、最果タヒ『夜景座生まれ』である。一つひとつの詩が比較的短く、縦書きも横書きも収録されていることから、この企画に向いている詩集であった。
 前半は、早稲田になじみ深いカフェ、早苗を貸切させていただいた。普段の活動は部室で行っているため、おしゃれな雰囲気で行う座談会はやはり一味違った。

早苗にて

 昼休憩を挟み、後半戦は部室で行った。これははじめる前から予想されていたことなのだが、後半になるにつれ疲れが見えてきた。黙読三分、話し合い五分という時間で行っていたのだが、最後の方は黙読一分半、話し合い三分ほどであった。
 しかし、たくさん読んでいるうちになんとなく、いい詩とそうではない詩という感覚が研ぎ澄まされていく気がした。そして面白いことに、それは自分以外の人とも共通する感覚のようであった。「これはいい詩だ」と言った時、全員が同意してくれる時が多い。もちろん、賛否が分かれることもある。そんなことを何回も繰り返しているうちに、自分はどんな詩に惹かれるのか、どんな詩を「いい」と評価するのかがなんとなくわかってくるのである。いい詩の共通点を洗い出すことで、いい詩の条件について考えることができた。
 また、詩集の中には、何度も出てくるモチーフがある。例えば「神さま」。このモチーフが最初に出てくるのは、詩集の二番目に収録されている『約束』という詩である。ここにおいて「神さま」は、自分の心の中にあるものとして登場しているという意見があった。つまり、キリスト教的な神ではなく、純粋に願う対象としての「神さま」である。しかし、ほかの詩においては、「神様」というように漢字で表記されることもあり、世界を創造する者としての神、あるいはギリシャ神話的な神という登場の仕方もしていた。ひとつのモチーフもいろんな側面から捉えることができる、という発見も興味深かった。もちろん、「神さま」以外にも、多くのモチーフについてそれがいえる。
 さらに、「ぼく」「私」「あなた」「きみ」「お前」などなど、人称が持つイメージの違いをはっきり認識することもできた。たいていの場合、その詩に使われている人称を、ほかのものに置き換えた場合、成立しなくなってしまう。

 このように、今回の企画は、大変ではあったが非常に勉強となる会であった。野球に例えるなら、千本ノックのようにも思える。
 見学者からよく「いい詩が何かわからない」という声を聞く。我々もわからないということを前提にしたうえで、あえて答えるならば、「たくさん読んで、そのなかでも『なんかいいな』と思う詩の共通点を見つける」ことがいいのではないだろうか。とにかく読む。それが、詩とは何かについて考える、非常に強力な方法だと常日頃から感じていた。それを今回、みんなで行うことができたため、非常に有意義であったといえる。これを読んでいるみなさんも、まずは一冊、手に取ってみてはいかがだろうか。

 最後に、貸切させてくださった早苗さん、参加してくださったみんなに感謝を述べたい。また、残念ながら今回は参加が叶わなかった方も、次回があればぜひ参加いただければと思う。
 普段はゆるく、でもたまにしっかり、詩に触れあっていきたいと思った一日であった。
(文責:N.Y)

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