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和歌山紀北の葬送習俗シリーズ

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#紀ノ川

和歌山紀北の葬送習俗(12)通夜

和歌山紀北の葬送習俗(12)通夜

▼シリーズ12回目にしてようやく通夜を取り上げます(いつになったら完結するのでしょうか…)。通夜という行事の内容は、今も昔もさほど変わりません。通夜のデフォルトは、喪家と近親者が徹夜で遺体とともに過ごすというもので、徹夜=「夜を通す」=「通夜」なわけです。喪家でない限り、通夜の細部を体験することはできません。すなわち、夜のはじめに参列して焼香することは本来の通夜ではありません。それは、通夜のごく一

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和歌山紀北の葬送習俗(11)葬具と棺の調達

和歌山紀北の葬送習俗(11)葬具と棺の調達

▼今回は、葬具と棺の調達を取り上げてみます。葬儀、葬式で使う葬具と棺は、線香とロウソクを除いては日常生活で使うことはまずありません。普段見慣れない葬具や棺が目の前にあるという非日常的な光景は忘れがたく、また、凝った装飾や彫刻に満ちた祭壇は一種の「舞台装置」のようなものです。

▼登場する市町村名とその位置は『和歌山紀北の葬送習俗(3)死亡前の習俗』を参照して下さい。ほとんどの事例は全国各地にみられ

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和歌山紀北の葬送習俗(10)葬式組

和歌山紀北の葬送習俗(10)葬式組

▼昭和後期の話。祖母が未明に亡くなり、管理人は忌引きのため学校を欠席して自宅にいました。と、割烹着を着た近所の女性十数名がドカドカドカっと家に上がり込んできたのです。普段はありえない光景で、祖母の死以上に「なにごと?」と驚いたことを今も鮮明に覚えています。これが村落共同体における葬儀、葬式の実際です。

▼村落共同体では、死者が出ると集落全体が一つになって葬儀、葬式を滞りなく済ませる全体責任のよう

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和歌山紀北の葬送習俗(9)別火

和歌山紀北の葬送習俗(9)別火

▼「ベツビ(別火)」という言葉をご存じでしょうか。意味は読んで字の如く、別の場所で火を焚くことです。さきに『和歌山紀北の葬送習俗(5)死忌み』で、死者を出した喪家のあらゆるものには忌がかかるという観念を取り上げました。そして、死忌みは喪家で焚く火にもあてはまります。この、火にも忌がかかるという観念のおかげで葬儀、葬式の段取りが結構面倒臭いことになっていたのです。そこで、このページでは別火という習俗

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