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和歌山県橋本市出身大阪在住の管理人が、誰も取り上げない和歌山北部と奈良県南部の地理と民…

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和歌山県橋本市出身大阪在住の管理人が、誰も取り上げない和歌山北部と奈良県南部の地理と民俗にフォーカス。情報的価値に重心を置き、なかなかな内容に仕上がっております。額に汗して書いた記事は有料にてご提供。文字数多めのため、中長距離通勤通学時のお供にいかがでしょうか♪♪

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和歌山紀北の葬送習俗(7)枕飯

▼今の葬儀場で遺体のそばに枕飯が供えてあったとしても、枕飯はそれが誰によって、どこで炊かれたものであるかという点が非常に重要で、もしかするとその枕飯は「本物」ではないかも知れません。ということで、今回は枕飯を取り上げてみます。 ▼登場する市町村名とその位置は『和歌山紀北の葬送習俗(3)死亡前の習俗』を参照して下さい。ほとんどの事例は全国各地にみられることから、掲出している市町村名にあまり意味はありません。 1.枕飯の名称 ▼一般的な名称は「マクラメシ(枕飯)」で、これは全

    • 和歌山紀北の葬送習俗(6)遺体の取扱

      ▼まず、このページには死体に関する描写があります。読み手に心的外傷を与える可能性があるので注意して下さい。学問的な文脈から述べるにすぎないものですが、一切の責任は問いかねます。 ▼昔むかし、人が死亡すると遺体は自宅に安置されるのが普通で(というか、自宅で葬儀するのが普通でした)、昭和キッズたる管理人も自宅や親類宅に安置された遺体を何度か見ています。今は、葬儀屋さんのおかげで遺族が遺体をどのように取り扱うかを考える必要はなくなりました。 ▼ここでは、死亡直後の遺体の取り扱いを取

      • 和歌山紀北の葬送習俗(5)死忌み

        ▼日本には、身内に不幸があると「キビキ(忌引き)」として学校を数日間休んでよいという決まりごとがあります。忌引きの「忌(いみ)」という文字が縁起の悪いものであることは、日本に生活する誰もが共有しています。忌とは、要するにケガレ(穢れ)のことです。特に、身内に不幸があると喪家や親族、同じ集落に住む人びとがにわかに忌を気にし始めます。この、人の死亡に伴う忌のことを「シイミ(死忌み)」などといいます。今回はこの「死忌み」を取り上げてみます。 ▼登場する市町村名とその位置は『和歌山紀

        • 和歌山紀北の葬送習俗(4)死に飛脚

          ▼「飛脚」という言葉は歴史の授業で一度は習っているとしても、「シニビキャク(死に飛脚)」という言葉は高齢者以外は日常的に聞いたことがないはずです。死に飛脚という習俗が今は必要がなくなったからです。 ▼死に飛脚とは、人が死んだときに集落内や親族にそれを知らせて回る人のことをいいます。今は電話があるので、死に飛脚は全く必要がなくなりました。ところが、死に飛脚の習俗はなぜか昭和後期まで強固に残っていました。おそらく、死に飛脚の衰退プロセスは村落共同体の解体プロセスと時間的に連動して

        和歌山紀北の葬送習俗(7)枕飯

        マガジン

        • 和歌山紀北の歴史と民俗
          10本
        • 太平洋戦争と和歌山県
          15本
        • 和歌山紀北の地域経済
          0本
        • 和歌山紀北の地理
          2本

        記事

          和歌山紀北の葬送習俗(3)死亡前の習俗

          ▼かつての日本には、人が死ぬ前からその家族や関係者が何らかの呪術的な振る舞いをする習俗があったことが知られています。管理人自身は、時代的、世代的にそのような習俗を受け継いでいません。しかし、愛する人が命を終えようとしているときにその生還を希求する気持ちや行為、習俗は別段奇怪でも不思議でもなく、ごく普通の人間としての正常な反応なのではないでしょうか。 1.死亡前の習俗のディテール ▼死亡前に行われる習俗にはどのようなものがあったのでしょうか。管理人の故郷たる和歌山県北部周辺

          和歌山紀北の葬送習俗(3)死亡前の習俗

          和歌山紀北の葬送習俗(2)葬式の呼び名

          ▼今でこそ、死者を葬る儀式のことは全国ほぼ共通して「葬儀」や「葬式」などと呼ばれていますが、管理人が小さい頃(昭和後期)には祖父母はそのような呼び方をしていませんでした。 ▼かつての人びとは、葬儀や葬式のことを何と呼んでいたのでしょうか。これには、「そもそも葬儀、葬式とは何か」あるいは「どこからどこまでが葬儀、葬式なのか」という定義の大問題が関係しており、当然この範囲には地域差があるので、現在も定まった解のようなものはないような気がします。 1.柳田国男による方言収集 ▼

          和歌山紀北の葬送習俗(2)葬式の呼び名

          和歌山紀北の葬送習俗(1)予備知識

          ▼まず、このページには死体に関する描写があります。読み手に心的外傷を与える可能性があるので注意して下さい。学問的な文脈から述べるにすぎないものですが、一切の責任は問いかねます。 ▼葬送は忌むべき習俗でありながらも、児童期、少年期の貴重な生活体験の一つとして管理人の記憶に残っているので、局地的な事例を交えながらそのディテールに迫ってみたいと思います。 1.死体をめぐる観念 ▼人はいったい、何歳くらいから死体を恐怖の対象として認識するのでしょうか。7歳頃にはじめて親族の死体を

          和歌山紀北の葬送習俗(1)予備知識

          家屋の向きに着目しよう

          ⛅⛅⛅ 夏の自由研究 ⛅⛅⛅ (この記事は去年、別のブログに掲載していた内容をリライトしたものです) ▼普段、非合理的な観念、行為を口汚い言葉で罵り倒している「メディアの寵児」などと称される人たちにも、日本で育った以上逃れられない非合理的な観念と行為があります。 それは風水、そして家相。 ▼風水や家相の類は、どんなに理路整然とその非合理性を説得されても、そうやすやすと捨て去ることはできません。事実、南向きの部屋は北向きのそれよりも価格が高いですし、家屋のレイアウトもな

          家屋の向きに着目しよう

          銅・硫化鉄を掘り当てろ!紀ノ川流域の零細鉱山編(一部¥)

          ▼ここでは、戦前における紀ノ川流域の零細鉱山事情を整理してみます。各鉱山の位置を地図に落とす作業を進めていますが、いかんせん情報不足、資料不足。このことは現在も安全上の問題となっていて、専門家は休廃止鉱山データベースの作成が急務であると訴えています。なお、以下に示す各鉱山は、採掘鉱区(実際に稼働し鉱物を産出している鉱区)に限っています(試掘鉱区(採掘鉱区登録前の試掘段階にあるもの)は示していません)。 1.和歌山市域及び貴志川左岸域 ▼下図は2004(平成16)年の地図で

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          銅・硫化鉄を掘り当てろ!紀ノ川流域の零細鉱山編(一部¥)

          古河鉱業飯盛鉱山編(一部¥)

          ▼このページでは、昭和40年代まで国鉄和歌山線名手駅南方に存在していた古河鉱業飯盛鉱山を取り上げます。 1.紀ノ川流域の黄金狂時代 ▼下図は、明治中期に作成された『日本帝国鉱山全圖』です。 ▼下図は、大正期に作成された『重要鉱山分布図』です。鉱山における採掘は農商務省の許可が必要とされており、「重要鉱山」と「重要鉱山以外の鉱山」に分けられていたようです(その後この区別はなくなりました)。 (1)紀ノ川流域の鉱脈の存在 ▼紀ノ川流域、特に紀ノ川左岸部以南の紀伊山地には、

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          粉河酢編

          ▼唐突ですが、明治後期の健康談義から。 記者 「先月のお話に、自然生は肺病の薬にもなるし虚弱な人の強壮剤にもなると伺いましたから、私は毎日すり芋を三杯酢にして頂きました。しかるに十日も続けたら飽きてしまって仕方がないのを無理に我慢して食べていますと、だんだんお腹が張ってきていけません。あれはどうしたものでしょう」 夫人 「なにもお嫌なのを我慢して三杯酢ばかりにして召し上がるに及びません。煮汁の上にすり芋を載せても山かけになさっても、お料理をお替えになったほうが飽きません。そ

          数式なし!「和歌山県北部を震源とする地震」とは何か編

          ▼ここでは、最近よく聞く「和歌山県北部を震源とする地震」とは何なのかについて、難解な数式は一切なしで掘り下げたいと思います。 1.予備的な学習(その1) ― 地震とは何か (1)地震とは何か ▼地震とは、地下の岩盤が破壊することをいいます。ある岩盤に外から力が加わっていくと、その岩盤が耐え切れなくなってガリガリっと壊れるのが地震で、このガリガリっという音が俗にいうマグニチュード(magnitude;M)です(中川 1981)。マグニチュードは震度(地震を体感した場合の揺れ

          数式なし!「和歌山県北部を震源とする地震」とは何か編

          高野紙編

          ▼和紙は現在、工芸用や趣味用以外でまず目にする機会はありません。管理人がいまこれを書いている居室を見渡しても、一般製品としての和紙は一枚もなく、僅かに美術関係の人から毎年送られてくる手漉き和紙の年賀状が保管されているのみです。 ▼昭和中期頃まで、紀ノ川流域の特定場所で手漉き和紙が細々と製造されていたことは、国鉄和歌山線沿線フリークであればご存知と思います。近年、手漉き和紙は町おこしの一環として注目されるようになっており、国鉄和歌山線沿線のトピックとしてややメジャーになりつつあ

          和歌山紀北の索道ネットワーク編(一部¥)

          1.国鉄和歌山線沿線の索道ネットワーク ▼国鉄和歌山線の打田、名手、川端各駅では、山間部に物資を運んだり、逆に運び出したりする架空索道との繋がりがあるので、ここでスペック等を整理しておきます。各索道の地図については、地形図等で確認できたもののみを、また、これら縦横に張り巡らされた索道の廃業年についても、信頼に足る資料で確認できたもののみを示します。 2.国鉄和歌山線沿線に存在した索道のプロフィール ■長峰索道株式会社 ①区間・延長: ●和歌山県有田郡有田川町宮川~同県

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          和歌山紀北の瓦編

          ▼2018(平成30)年9月の台風21号直撃によって紀ノ川流域一帯では家屋の屋根瓦が飛びまくり、これを書いている2019(平成31)年4月現在も被害家屋の瓦の補修は終わっていません。なんでも、瓦葺職人と瓦そのものが足りないのだとか。職人さんにとってはしばらくの間復興バブルが続き、一方家主にとっては頭が痛いものです。管理人が無知だっただけなのかも知れませんが、戦前の紀ノ川流域はじつは瓦産地でした。もちろん、淡路瓦や泉州瓦のようなメジャーな存在ではなかったものの、現在もそのルーツ

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          和歌山紀北の温暖化編

          ▼ここでは気象庁のデータベースをフル活用し、紀北地方の観測拠点の気象データから地球温暖化に迫ってみたいと思います。 1.地球温暖化の基本的留意事項 ▼地球温暖化について基礎知識を勉強しました。以下の基礎知識、全て気象庁HPからの引用・参考です(気象庁 2020)。 (1)地球温暖化の定義 ▼地球温暖化とは、「地球規模で気温や海水温が上昇し、氷河や氷床が縮小する現象のこと」です。その結果、気温上昇だけでなく、熱波や大雨、旱魃の増加などのさまざまな気象変化をもたらすとされて

          和歌山紀北の温暖化編