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和歌山紀北の索道ネットワーク編(一部¥)

1.国鉄和歌山線沿線の索道ネットワーク

▼国鉄和歌山線の打田、名手、川端各駅では、山間部に物資を運んだり、逆に運び出したりする架空索道との繋がりがあるので、ここでスペック等を整理しておきます。各索道の地図については、地形図等で確認できたもののみを、また、これら縦横に張り巡らされた索道の廃業年についても、信頼に足る資料で確認できたもののみを示します。


図は1938(昭和13)年の『改正郵便線路図』で、腸のような表現の線が高野索道と大和索道です。索道が郵便物の輸送に使われていたことを示しています。
図は1927(昭和2)年の地図で、〇破線部が索道です。左から奥安楽川索道、高野索道、紀和索道となります。

2.国鉄和歌山線沿線に存在した索道のプロフィール

■長峰索道株式会社

①区間・延長:
●和歌山県有田郡有田川町宮川~同県海草郡紀美野町猿川
・3.1マイル(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
索道の方式:
・単線鉄鞍安全式(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
③ワイヤーロープの種類・直径:
・ラングスレー7線6撚(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
④発動機の種類・出力:
・電力30馬力(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
⑤搬出能力:
・1.8t/h(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
⑥事業目的:一般貨物運輸
・木材、木炭、米麹(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
⑦年表:
・1926(大正15/昭和元)年9月20日 竣工(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・これ以降情報なし。
⑧備考:なし

■八幡索道株式会社

①区間・延長:
・和歌山県有田郡八幡村大字清水~同県那賀郡下神野村大字樋下(『最近の和歌山県』)
②索道の方式:情報なし
③ワイヤーロープの種類・直径:情報なし
④発動機の種類・出力:情報なし
⑤搬出能力:情報なし
⑥事業目的:情報なし
⑦年表:情報なし
⑧備考:
・1938(昭和13)年から1941(昭和16)年にかけて『最近の和歌山県』にあらわれる。

■奥安楽川索道株式会社

①区間・延長:
●和歌山県那賀郡奥安楽川村大字善田~同郡田中村大字竹房
・11,862尺(『和歌山県誌』)
●和歌山県那賀郡奥安楽川村大字黒川~同郡田中村打田駅前
・4マイル33チェーン17(『和歌山県商工一班』)
・4.40マイル(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・6.4㎞(『田中村郷土誌』)
②索道の方式:
・玉村式単線索道(『和歌山県誌』)
・単線式(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・支柱(木造)50台(『田中村郷土誌』)
③ワイヤーロープの種類・直径:
・スチール7線6撚(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・軌道9ポンド(『田中村郷土誌』)
④発動機の種類・出力:
・ガス発動機(『和歌山県重要物産取引案内』『和歌山県商工一班』)
・ガス発動機15馬力(『和歌山県誌』)
・ガス発動機49馬力(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・ガス発動機2機+電動機2機(『田中村郷土誌』)
⑤搬出能力:
・14t/h(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
⑥事業目的:一般貨物運輸
・薪炭、肥料、柑橘(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・主要貨物は柑橘(『田中村郷土誌』)
⑦年表:
・1911(明治44)年8月25日 営業認可(『和歌山県商工一班』)
・1911(明治44)年12月 那賀郡奥安楽川村大字善田~同郡田中村大字竹房間運輸開始(『和歌山県誌』『和歌山県重要物産取引案内』『和歌山県商工一班』)
・1914(大正3)年10月16日 那賀郡田中村大字竹房~同郡同村打田駅間が開通(『田中村郷土誌』)
・1914(大正3)年11月1日 那賀郡奥安楽川村大字善田~同郡同村大字黒川間が開通(『田中村郷土誌』)
※同年11月28日竣工とする史料もある(『林産物運搬貯蔵施設調査書』)
・1916(大正5)年1月 奥安楽川索道株式会社の請願により打田駅に貨物積卸側線125mを新設(『打田町史』)
・1939(昭和14)年7月 オート3輪車を購入し一般貨物運輸を開始(『田中村郷土誌』)
・1947(昭和22)年 老朽化と不要のため撤去(『打田町史』)
⑧備考:
・主要貨物が柑橘のため、毎年11月~1月の3か月間は連続運転、その他の時期は毎月1、6の日のみ(管理人注:1日と6日なのか、1と6がつく日なのかは不明)を定期運転し、その他は発送貨物があるときのみ運転していた。(『田中村郷土誌』)

昭和12年に撮影されたもの。

■竹房索道株式会社

①区間・延長:
●和歌山県那賀郡田中村大字高野~同県同郡同村大字竹房
・2.0㎞(『陸運要覧』)
②索道の方式:
・電気(『陸運要覧』)
③ワイヤーロープの種類・直径:情報なし
④発動機の種類・出力:情報なし
⑤搬出能力:情報なし
⑥事業目的:一般貨物運輸
・木材(『陸運要覧』)
⑦年表:情報なし
⑧備考:
・1950(昭和25)年版の大阪陸運局『陸運要覧』には掲載されていなかったが、1961(昭和36)年の同書に掲載され、翌1962(昭和37)年以降の同書には再び掲載されなくなった。本社所在地は那賀郡田中村高野93番地であり、免許認可年月日と営業開始年月日は不明。

■古河鉱業飯盛鉱業所

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