若月

漫画家。サウンドノベル製作中。 その脚本を小説形式で公開しています。 また、CG彩色…

若月

漫画家。サウンドノベル製作中。 その脚本を小説形式で公開しています。 また、CG彩色の講座なども投稿しています。

マガジン

  • プロ漫画家が教えるCG彩色講座

    プロ漫画家の若月が教える、CG彩色講座! ゲーム会社のグラフィッカー時代。そして、15年の漫画家生活で得たCG彩色のノウハウを、余すところなくアップしていきます。 一部有料記事あり。

  • 剣とフリルと鎧生活(アーマーライフ)

    異世界転生ファンタジー小説。 製作中の同名サウンドノベル用に書いた脚本。それを、小説形式で公開しています。

記事一覧

第二回 人物の塗り方~身体編~

※※ Clipstudio PaintEXを使用して解説しています。 ※※ 前回、選択範囲わけを行いました。 いよいよ色塗り! 最も楽しい部分です。 今回は、人物の身体を塗るところ…

若月
4年前
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第一回 色分け(選択範囲のわけ方)

<1> 選択範囲わけは重要 ※※ Clipstudio Paint EXを使用して解説しています。 ※※ まずは、色を塗る前の下準備を行います。 とても面倒ですが、最も重要な作業。 そ…

若月
4年前
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◆8◆ 「疑惑と取調べ」

 混濁する視界と不明瞭な意識。  世界と自我の境界が曖昧で、油断をすれば己が周囲に溶け出していってしまいそうな感覚。けれども、そこに恐怖心は無く、ひたすらに暖か…

若月
5年前
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◆7◆ 「情報屋と襲撃者」

 雑多な人々が行き交う大通りから一歩奥に入ると、日当たりの悪い路地裏に、貧相な身なりの者たちが寝転んでいるのが見えた。  以前、岩窟人を追って入った貧民街と比べ…

若月
5年前
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◆6◆ 「尾行者」

 その魔道具は、ガラス細工のような透明感を持った石だった。宝石というほど美しくはないが濡れたような光沢を放ち、独特の形状をしたそれはエクス・ターナム石と呼ばれ、…

若月
6年前
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◆5◆ 「<犯罪ギルド対策特別捜査本部>にて」

 アンヴリル。  難攻不落の要塞として、裾野の広い山沿いに建造されたこの都市は、その標高によって大まかに三つのエリアに分けられる。  まず、女王陛下の居所である城…

若月
6年前
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◆4◆ 「光治郎、一世一代の大芝居」

 リリスと光治郎は<青銅の盾>隊によって捕縛された。  罪状は、「治安紊乱」。巡回戦士でもない者が、街中で抜刀して人を追い回す、というのは、さすがにまずかったよ…

若月
6年前

◆3◆ 「市場の泥棒騒ぎと岩窟人」

 リリスは背に負っていた巨大な得物──バスタードソードをずらり、と引き抜くと、無造作に上段に構えた。  (いや。素人にはそう見えるだけで、あれが<ナルイグの民>…

若月
6年前
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◆2◆ 「鎧装着者リリス」

 <鎧契約>において、鎧に封じられた魂と<鎧装着者>は一心同体。片方が死ねば、もう片方の命も尽きる。一つの命を共にする、いわば運命共同体のような状態であるようだ…

若月
6年前
5

◆1◆ 「降霊屋と鎧契約」

「やあやあ、降りてきましたね? あは、まだ意識がはっきりしませんか? 大丈夫ですよぅ、すぐに固定してあげますからねー」  頭上から女性の声がする。  甲高いが、少…

若月
6年前
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◆0◆ プロローグ「苦い記憶」

「おお、我が愛すべき王女よ! 私の愛を受け入れてくれぬのならば、是非も無し。私はザヴォーク・ラ・ゴラス、魔王と呼ばれた男! 今こそ我が闇の軍勢の力をもって、そな…

若月
6年前
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第二回 人物の塗り方~身体編~

第二回 人物の塗り方~身体編~

※※ Clipstudio PaintEXを使用して解説しています。 ※※

前回、選択範囲わけを行いました。
いよいよ色塗り! 最も楽しい部分です。
今回は、人物の身体を塗るところまで講座を進めようと思います。

<1> レイヤー構造について
色塗りに入る前に、僕が使用しているレイヤー構造について解説しておきます。
下の画像をご覧ください。

順番に見ていきましょう。
まず、baseは基本色を乗

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第一回 色分け(選択範囲のわけ方)

第一回 色分け(選択範囲のわけ方)

<1> 選択範囲わけは重要
※※ Clipstudio Paint EXを使用して解説しています。 ※※

まずは、色を塗る前の下準備を行います。

とても面倒ですが、最も重要な作業。
それが「選択範囲わけ」。
これをしっかりやっておかないと、あとあと苦労するハメになります。

やり方はいくつかあると思いますが、僕は「色域選択」で行います。
キャラクターのパーツごとに違う色で塗り、その色差により選

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◆8◆ 「疑惑と取調べ」

◆8◆ 「疑惑と取調べ」

 混濁する視界と不明瞭な意識。
 世界と自我の境界が曖昧で、油断をすれば己が周囲に溶け出していってしまいそうな感覚。けれども、そこに恐怖心は無く、ひたすらに暖かく甘く優しく包み込まれる安心感に、思わず自我を手放してしまいそうになる。
──夢。
 光治郎は夢を見ていた。
 すぐに、それが現実ではないと気付けたのは、傍らにうずくまるリリスのお陰だ。リリスは今のように筋骨逞しい長身の女性ではなく、あどけ

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◆7◆ 「情報屋と襲撃者」

◆7◆ 「情報屋と襲撃者」

 雑多な人々が行き交う大通りから一歩奥に入ると、日当たりの悪い路地裏に、貧相な身なりの者たちが寝転んでいるのが見えた。
 以前、岩窟人を追って入った貧民街と比べるべくもない。ここは、住む家を持つことも出来ない、アンヴリルのあぶれ者たちが集まる一角。いわゆるスラム街である。
 アンヴリルの中でも特に治安が悪く、下層階級の住人ですらここには近づかないと言われる。
 こういった場所に自治体の救いの手が届

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◆6◆ 「尾行者」

◆6◆ 「尾行者」

 その魔道具は、ガラス細工のような透明感を持った石だった。宝石というほど美しくはないが濡れたような光沢を放ち、独特の形状をしたそれはエクス・ターナム石と呼ばれ、<魔導鎧>を着込むナルイグの戦士たちにとって無くてはならない物だった。
 エクス・ターナム石について語るには、そもそも、<魔導鎧>──あるいはそこに封じられた魂──の役割は何か、というところから始めねばならない。
 ナルイグの戦士にとっての

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◆5◆ 「<犯罪ギルド対策特別捜査本部>にて」

◆5◆ 「<犯罪ギルド対策特別捜査本部>にて」

 アンヴリル。
 難攻不落の要塞として、裾野の広い山沿いに建造されたこの都市は、その標高によって大まかに三つのエリアに分けられる。
 まず、女王陛下の居所である城砦を山頂付近に頂き、政府中枢組織や立法行政府など、アンヴリルにとって最も重要と思われる建物がひしめき合っている。少し下ったところに政府高官や葉議員、有力氏族たちの邸宅があり、ここまでが「上枝部」と呼ばれる。
 続いて、いわゆる富裕層が居住

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◆4◆ 「光治郎、一世一代の大芝居」

◆4◆ 「光治郎、一世一代の大芝居」

 リリスと光治郎は<青銅の盾>隊によって捕縛された。
 罪状は、「治安紊乱」。巡回戦士でもない者が、街中で抜刀して人を追い回す、というのは、さすがにまずかったようだ。相手が脛に傷を持つ輩であり、刃物による殺傷がほぼ不可能な岩窟人、という点から、「殺人未遂」までは適用されないらしい。
 二人は、その場で簡単な取調べを受けることになった。
「名前は?」
「リリス……だ」
「氏族名を名乗れ! どこの氏族

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◆3◆ 「市場の泥棒騒ぎと岩窟人」

◆3◆ 「市場の泥棒騒ぎと岩窟人」

 リリスは背に負っていた巨大な得物──バスタードソードをずらり、と引き抜くと、無造作に上段に構えた。
 (いや。素人にはそう見えるだけで、あれが<ナルイグの民>流の正式な構えなのかもな……。というか、あれ絶対、片手で使う武器じゃないだろう!)
 バスタードソードは両刃の長剣である。柄の部分は、両手で掴むためであろう、かなり余裕を持って長めに作られている。問題は刃の部分である。刃渡りが、リリスの身長

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◆2◆ 「鎧装着者リリス」

◆2◆ 「鎧装着者リリス」

 <鎧契約>において、鎧に封じられた魂と<鎧装着者>は一心同体。片方が死ねば、もう片方の命も尽きる。一つの命を共にする、いわば運命共同体のような状態であるようだ。
 ──魂だけの存在となった自分が「死ぬ」のかどうかは分からないが。
「ああ、そうだ。そういえば……」
 願いが叶うだの、<鎧契約>だので気を取られていたためスルーしていたが、光治郎は先ほどから気になっていたことがあった。
「何です、魔王

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◆1◆ 「降霊屋と鎧契約」

◆1◆ 「降霊屋と鎧契約」

「やあやあ、降りてきましたね? あは、まだ意識がはっきりしませんか? 大丈夫ですよぅ、すぐに固定してあげますからねー」
 頭上から女性の声がする。
 甲高いが、少女特有の幼さはない声音。少し変わった声質をしていて、急に低くなったり高くなったりと安定していない。パッと頭に浮かんだイメージは「母親ガエル」である。
 喋り方からするとまだ若いんだろうに、節回しも何だかおばさんみたいだ、と失礼なことを光治

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◆0◆ プロローグ「苦い記憶」

◆0◆ プロローグ「苦い記憶」

「おお、我が愛すべき王女よ! 私の愛を受け入れてくれぬのならば、是非も無し。私はザヴォーク・ラ・ゴラス、魔王と呼ばれた男! 今こそ我が闇の軍勢の力をもって、そなたの国を滅ぼしてくれよう! 既に天界の光は消え、天の御使いどもも退けた! この私に不可能などないのだ!」
 壇上に上がった青年が、朗々と台詞を紡ぎ出す。
 それをいかめしい顔の男達が三人、顔を並べて見守っている。劇団ふたご座に籍を置く舞台監

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