わづか

空想耽り検定準一級!

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最近の記事

【ss】ニャンコの森のもえもえオムライス

 人体に最も有害な添加物は愛だ。  致死量がとても少なく、砂糖の何倍も中毒性があり、厚生労働省が一日たったの一グラムも推奨していない。 私の調味料のさしすせそは、「さ」さもしい愛、「し」しょうもない愛、「す」捨てて掃く愛、「せ」寂寞な愛、「そ」粗悪な愛の五つだ。 「ニャンコの森のもえもえオムライスをふたつお願いにゃのだ♡」  私は私の作るこの黄色の地平に何も込めてはならない。猛毒の愛を彼女らがトッピングして、客の腹を押し広げる萌えに自我が一片も混ざらないように。私を押し殺して

    • 【ブログ】ドラゴンの手羽先

      ドラゴンの手羽先食べてみませんか 世間では桜がどうのこうの言ってますがまだわたしの住んでいる地域ではただの木です。読者の皆さんのところはどうかな。今週末にお花見の予定だったけどこのままだと普通に枝見になりそうだったのでカラオケに行くことになりました。 さて生憎の春雨に見舞われた本日でも居酒屋辰巳に行けば屋根付きの地獄見ができます。居酒屋辰巳はアレですね、ふと振り返った辰巳の方角に稀に入り口があるやつ。電柱の隙間とか。亜空間で営業すれば場所代がかからないらしいです。地獄見は酔

      • 【ブログ】運命の赤い糸で作った素麺

        アホみたいにドカ雪ですがブラジルの皆さん元気ですか〜〜!??!冬を感じすぎて夏に胸を刺激されたい。歌丸です。 コタツで雪見だいふく、とか結構憧れるんですけどコタツ無くてもう暖房の前で着る毛布羽織りながら湯たんぽ抱っこしてます。この年になると身体の芯がなかなか仕上がらない。つらい。 でも心は仕上がってますよ!素麺食べようとしてる。 素麺食べようとしてる。 外がこんなんになると思ってなくてェ……奇をてらって冬に夏のもの食べようと企画しちゃってェ……数日前から用意しててェ……

        • 【ss】五月集め

           きみは明日地球がなくなるみたいにわたしを大事にしたから、今日も粗末に扱えない季節が過ぎていく。この星の切り取り線の下に行けば常夏。この星の絞りの先に行けば常冬。どちらにも行けない、淡水がゆらゆら流れるこの田舎に、空が落ちていた。  五月。水を張った田にはきみの国が映っている。  鯉のぼりに息を吹き込んでいるのはきみでしょう。ちゃんと子どもたちを寿ぐように。どうどう唸りを上げて、でもきみの国の高さまで届かないように、力強くふうっと鱗を光らせる。  進むといい! 雲と地面

        【ss】ニャンコの森のもえもえオムライス

          【ss】四つめの部屋

           その部屋の鍵は、僕の十八回目の夏だった。それも、ひまわりや入道雲やスイカから見放された夏じゃなきゃいけなかった。 「誕生日おめでとう。十七のきみにお悔やみ申し上げます」 「上げてから目一杯落とすのやめて」 ヤヤコはチケット売り場のカウンター越しに煙草を揺らしながら、この場所に似合わぬほどハツラツに笑っている。存在自体が日陰のようなこの渋い映画館で彼女はいつも浮いていた。頬の横に短く切り揃えられた黒髪が妖しく艶っぽい雰囲気を漂わせても、発言と行動で全てが霞むほど残念な大

          【ss】四つめの部屋

          【ブログ】眠れない夜に数えた羊のジンギスカン

          こんにちは! 食欲の 冬ですね……。秋が秒で終わったので。 とはいえなんだかんだの果物とか野菜とかは律儀に実をつけて今年も巡ってくる訳です。わたしが続いてる営みといったらツイッターもといXくらいなのに……。作物は偉いね。 美味しいものがよりどりみどりの時候プラス動きたくない布団の中! 人間も実っていきます。 いいですか。人間は誰も収穫してくれないんです。動物はまるまる太るけど人間はぶくぶく太る。今回はこの擬音の差についてみんなで傷つけあってみよう。 やめようね。 本当に

          【ブログ】眠れない夜に数えた羊のジンギスカン

          【ss】お空の国のアリス

           アリスが、色も香りも上品な毒を宙浮くポットから淹れだしてなみなみと僕に勧める。眠りネズミと三月ウサギは、眼球のぎらぎら反射する粘膜にその瞬間を今か今かと待つ。 「色の付いたお湯がちょっと喉をひとなぞりするだけよ」 雨に濡れたサクランボ色の唇が死に化粧のようだ。桃を思わせるほの赤い頬にルチルクオーツみたいな金のブロンド髪をくるんと垂らして、アリスがじっとこちらを見つめている。 「毎日が命日、乾杯」 静かに言って飲み干すと、彼女は後ろの芝に椅子ごと倒れていった。僕は悪い

          【ss】お空の国のアリス

          【ss】アリス・リデルが起きてから

           ハートマークに尖っている部分があるのは、奥深くまで刺すため。ふたつの丸いカーブは返しになって抜けないように。凶器の形だ。女王はいつでもご乱心に見えるけれど、彼女の言う「首を刎ねろ」が「ご機嫌麗しゅう。今日は素敵な日ですわ」と大体同じ意味なのを、城の者ならちゃんと知っている。しっかり愛の下に働いてきたから。 「この国って退屈ね。トランプがハートしか無いわ。大富豪をオンラインででしかできない」 「女王様、オフラインの大富豪となるとそれは我々にとって事実上の戦争です」 トラ

          【ss】アリス・リデルが起きてから

          【小説】虹酔い

           光に惹かれ羽虫は月に向かってひらひらと飛び、大気圏を越えられず死んだが、その果てしなく無謀だった軌跡はきっと幸せと言うのに値するだろう。  死者をこの世から切り取るのに思い出という刃物が必要だと思い込んでいる人間は多い。そうして気が済むようにできているんだ。死んだ者の後ろ髪を引きたいような懺悔に近いなにかを聞かされている間、わたしは静かに諦めていた。諦めきれない人が泣いている。泣いたら楽になれるのだろうか。理不尽な死を、いつものどこか苦しげな笑顔で迎えた彼は、強い薬のせい

          【小説】虹酔い

          【ブログ】人魚の肉を贅沢に使った魚肉ソーセージ

          タイトルの通りのブツを手に入れました。当方ヒューマンです。 でした。 結論から言うと人魚の肉はたぶん刺身で日本酒と合わせるのが一番幸せになれます。 話を少し戻します。みんなこのデロリアンに乗ってね。 闇猫商店っちゃあ魚と名に付くものを見境なく売ってる魚体満足な品揃えで有名です。最近安い炭水化物ばかり食べていてわたしの身体はもうガタガタぬかしとって、ん〜〜いくないとおもうなの〜〜ってずっと絶叫してたんですよ。たんぱく質が摂りたい……できるだけ上質な……。そんな思いで久しぶり

          【ブログ】人魚の肉を贅沢に使った魚肉ソーセージ

          【ss】ウサギの隣人

           心理学者はこの世のおおよそが心で観測できるものしか無いっていう結論を出したくて急いでいる。作家は言葉の無いところからこれは「パ」にしよう、だとか「ン」と続けよう、とかいう才能で明日の空腹を先送りに生きる。警察官は皆んなの一生にどれほど関わらないようにできるかの創意工夫で幸せの尺度を測る。  じゃあ、女子高生は何をしたくて急いで生きて幸せとすればいいんだろう。 「しぃちゃんは哲学者だね」 「それ以前にまだ女の子でいてぇな」 エリがスマホを撫でて可愛がっている間に、わた

          【ss】ウサギの隣人

          【ss】君の前で霞む花

           幸せになって欲しい。そう思っただけなのに、空から柔らかい軌跡で落ちてきたブーケは僕の手元に飛び込んできて、全ての気持ちが駄目になった。花束が僕をばらばらにする軽さで、でも君が掴んでいた温もりを灯していて、目がカッと熱くなる。泣く資格なんて無い。周りの歓声に溺れる一瞬の間に、振り返った美しい君が、そんな僕を見てたぶんまっさらな気持ちで笑った。  空は人の心も知らないで新郎新婦のためにきらきらと晴れてみせる。チャペルの鐘が今日を寿いで歌う。おめでとう! 幸せになってね。  

          【ss】君の前で霞む花

          【ss】空飛ぶソイソース・ラーメン教

           世界の秘密を抱えたわたしは、阿佐ヶ谷で醤油ラーメンを食べている。ふーふー、はふっはふっ、ずるずるずる。コク深い醤油スープに透き通るちぢれ麺。湯気と共に啜ると熱々でこっくりとした旨味が口の中いっぱいに広がる。期待に痛くなった頬袋が喜ぶいつもの味だ。歯応えが少し素直じゃなくて嬉しい。汗ばむ額を換気扇からの微風が撫でる。れんげで一口スープを飲むと、この小さな中華屋一番の売りの煮卵にも箸を伸ばしてみた。もくっ。歯がぶつかり合ってくぐもった音を立てる。醤油スープとはまた違う甘い煮汁が

          【ss】空飛ぶソイソース・ラーメン教

          【備忘録】某ゲハ蝶

          冷たい水をください
できたら愛してください 「冷たい水はまだ分かるけど愛してくださいでめちゃくちゃ要求のハードル上がってない?」 そこなんだ。いやそこじゃないだろ。 「いや水は分かるんよ。生命維持に必要なラインじゃん。愛は?」 まぁ飛躍はしてるかもな……。 「道行く人に『水をくれませんか?』って言われたらあげるやん」 うん。 「『あの……できれば愛してくれませんか?』って追いで言われたら『ええっ!??!』ってなるでしょ」 いや〜〜“できれば”だからちょっとそれ

          【備忘録】某ゲハ蝶

          【ss】シザーハンズの恋人

           赤く光る金魚が、夜の降らせる銀糸の間をゆらゆらと泳いでいる。波紋が闇を揺らし、す、と溶けて広がる。そんな涼しげな浴衣で彼女は来た。 「お待たせ。……変じゃないかな」 俺は意地悪をする時、右側の頬にえくぼができるらしい。 「いや、そこら辺の一反木綿より上等な浴衣だ」 「もう、馬鹿にして」 「おい、呼んだか鋏男」 今夜は百鬼夜行。橙色のぼんぼりを持った妖怪たちは地獄に縁のあり過ぎるゆえ地獄耳だ。 「おうこんばんは、一反木綿」 「こんばんは」 彼女がいそいそとお

          【ss】シザーハンズの恋人

          【ss】人は風、桜泣かせの春疾風

           もう死に方が完璧になりそうな人とは仲良くなりたくないな。  きらきらと舞う桜の花びらの隙間を探す春風。わたしは思いをそっと預けて空を見上げる。心の中で君を思い出す度に君は死ぬんだ。強く寿ぐ季節にほとんど負けそうになりながら、それでもアスファルトの水溜まりは避けられる。これが生きているということだ。歩を選び、精度高く定め付けて、足の筋繊維を律し、濡れないように前へ、前へ。  あの人が生きていなくてもわたしは生きていていい。ずっと誰かにそう言ってもらいたかった。そう考えが結

          【ss】人は風、桜泣かせの春疾風