わづか

空想耽り検定準一級!

わづか

空想耽り検定準一級!

記事一覧

【ss】ニャンコの森のもえもえオムライス

 人体に最も有害な添加物は愛だ。  致死量がとても少なく、砂糖の何倍も中毒性があり、厚生労働省が一日たったの一グラムも推奨していない。 私の調味料のさしすせそは、…

わづか
3週間前
3

【ブログ】ドラゴンの手羽先

ドラゴンの手羽先食べてみませんか 世間では桜がどうのこうの言ってますがまだわたしの住んでいる地域ではただの木です。読者の皆さんのところはどうかな。今週末にお花見…

わづか
1か月前
1

【ブログ】運命の赤い糸で作った素麺

アホみたいにドカ雪ですがブラジルの皆さん元気ですか〜〜!??!冬を感じすぎて夏に胸を刺激されたい。歌丸です。 コタツで雪見だいふく、とか結構憧れるんですけどコタ…

わづか
3か月前
1

【ss】五月集め

 きみは明日地球がなくなるみたいにわたしを大事にしたから、今日も粗末に扱えない季節が過ぎていく。この星の切り取り線の下に行けば常夏。この星の絞りの先に行けば常冬…

わづか
4か月前

【ss】四つめの部屋

 その部屋の鍵は、僕の十八回目の夏だった。それも、ひまわりや入道雲やスイカから見放された夏じゃなきゃいけなかった。 「誕生日おめでとう。十七のきみにお悔やみ申し…

わづか
5か月前
1

【ブログ】眠れない夜に数えた羊のジンギスカン

こんにちは! 食欲の 冬ですね……。秋が秒で終わったので。 とはいえなんだかんだの果物とか野菜とかは律儀に実をつけて今年も巡ってくる訳です。わたしが続いてる営み…

わづか
6か月前
2

【ss】お空の国のアリス

 アリスが、色も香りも上品な毒を宙浮くポットから淹れだしてなみなみと僕に勧める。眠りネズミと三月ウサギは、眼球のぎらぎら反射する粘膜にその瞬間を今か今かと待つ。…

わづか
6か月前
3

【ss】アリス・リデルが起きてから

 ハートマークに尖っている部分があるのは、奥深くまで刺すため。ふたつの丸いカーブは返しになって抜けないように。凶器の形だ。女王はいつでもご乱心に見えるけれど、彼…

わづか
7か月前
1

【小説】虹酔い

 光に惹かれ羽虫は月に向かってひらひらと飛び、大気圏を越えられず死んだが、その果てしなく無謀だった軌跡はきっと幸せと言うのに値するだろう。  死者をこの世から切…

わづか
8か月前
3

【ブログ】人魚の肉を贅沢に使った魚肉ソーセージ

タイトルの通りのブツを手に入れました。当方ヒューマンです。 でした。 結論から言うと人魚の肉はたぶん刺身で日本酒と合わせるのが一番幸せになれます。 話を少し戻し…

わづか
9か月前
2

【ss】ウサギの隣人

 心理学者はこの世のおおよそが心で観測できるものしか無いっていう結論を出したくて急いでいる。作家は言葉の無いところからこれは「パ」にしよう、だとか「ン」と続けよ…

わづか
10か月前
1

【ss】君の前で霞む花

 幸せになって欲しい。そう思っただけなのに、空から柔らかい軌跡で落ちてきたブーケは僕の手元に飛び込んできて、全ての気持ちが駄目になった。花束が僕をばらばらにする…

わづか
11か月前
1

【ss】空飛ぶソイソース・ラーメン教

 世界の秘密を抱えたわたしは、阿佐ヶ谷で醤油ラーメンを食べている。ふーふー、はふっはふっ、ずるずるずる。コク深い醤油スープに透き通るちぢれ麺。湯気と共に啜ると熱…

わづか
1年前
4

【備忘録】某ゲハ蝶

冷たい水をください
できたら愛してください 「冷たい水はまだ分かるけど愛してくださいでめちゃくちゃ要求のハードル上がってない?」 そこなんだ。いやそこじゃないだ…

わづか
1年前
1

【ss】シザーハンズの恋人

 赤く光る金魚が、夜の降らせる銀糸の間をゆらゆらと泳いでいる。波紋が闇を揺らし、す、と溶けて広がる。そんな涼しげな浴衣で彼女は来た。 「お待たせ。……変じゃない…

わづか
1年前
2

【ss】人は風、桜泣かせの春疾風

 もう死に方が完璧になりそうな人とは仲良くなりたくないな。  きらきらと舞う桜の花びらの隙間を探す春風。わたしは思いをそっと預けて空を見上げる。心の中で君を思い…

わづか
1年前
2
【ss】ニャンコの森のもえもえオムライス

【ss】ニャンコの森のもえもえオムライス

 人体に最も有害な添加物は愛だ。
 致死量がとても少なく、砂糖の何倍も中毒性があり、厚生労働省が一日たったの一グラムも推奨していない。
私の調味料のさしすせそは、「さ」さもしい愛、「し」しょうもない愛、「す」捨てて掃く愛、「せ」寂寞な愛、「そ」粗悪な愛の五つだ。
「ニャンコの森のもえもえオムライスをふたつお願いにゃのだ♡」
 私は私の作るこの黄色の地平に何も込めてはならない。猛毒の愛を彼女らがトッ

もっとみる
【ブログ】ドラゴンの手羽先

【ブログ】ドラゴンの手羽先

ドラゴンの手羽先食べてみませんか

世間では桜がどうのこうの言ってますがまだわたしの住んでいる地域ではただの木です。読者の皆さんのところはどうかな。今週末にお花見の予定だったけどこのままだと普通に枝見になりそうだったのでカラオケに行くことになりました。
さて生憎の春雨に見舞われた本日でも居酒屋辰巳に行けば屋根付きの地獄見ができます。居酒屋辰巳はアレですね、ふと振り返った辰巳の方角に稀に入り口がある

もっとみる
【ブログ】運命の赤い糸で作った素麺

【ブログ】運命の赤い糸で作った素麺

アホみたいにドカ雪ですがブラジルの皆さん元気ですか〜〜!??!冬を感じすぎて夏に胸を刺激されたい。歌丸です。
コタツで雪見だいふく、とか結構憧れるんですけどコタツ無くてもう暖房の前で着る毛布羽織りながら湯たんぽ抱っこしてます。この年になると身体の芯がなかなか仕上がらない。つらい。

でも心は仕上がってますよ!素麺食べようとしてる。

素麺食べようとしてる。

外がこんなんになると思ってなくてェ……

もっとみる
【ss】五月集め

【ss】五月集め

 きみは明日地球がなくなるみたいにわたしを大事にしたから、今日も粗末に扱えない季節が過ぎていく。この星の切り取り線の下に行けば常夏。この星の絞りの先に行けば常冬。どちらにも行けない、淡水がゆらゆら流れるこの田舎に、空が落ちていた。

 五月。水を張った田にはきみの国が映っている。

 鯉のぼりに息を吹き込んでいるのはきみでしょう。ちゃんと子どもたちを寿ぐように。どうどう唸りを上げて、でもきみの国の

もっとみる
【ss】四つめの部屋

【ss】四つめの部屋

 その部屋の鍵は、僕の十八回目の夏だった。それも、ひまわりや入道雲やスイカから見放された夏じゃなきゃいけなかった。

「誕生日おめでとう。十七のきみにお悔やみ申し上げます」

「上げてから目一杯落とすのやめて」

ヤヤコはチケット売り場のカウンター越しに煙草を揺らしながら、この場所に似合わぬほどハツラツに笑っている。存在自体が日陰のようなこの渋い映画館で彼女はいつも浮いていた。頬の横に短く切り揃え

もっとみる
【ブログ】眠れない夜に数えた羊のジンギスカン

【ブログ】眠れない夜に数えた羊のジンギスカン

こんにちは! 食欲の

冬ですね……。秋が秒で終わったので。
とはいえなんだかんだの果物とか野菜とかは律儀に実をつけて今年も巡ってくる訳です。わたしが続いてる営みといったらツイッターもといXくらいなのに……。作物は偉いね。
美味しいものがよりどりみどりの時候プラス動きたくない布団の中! 人間も実っていきます。
いいですか。人間は誰も収穫してくれないんです。動物はまるまる太るけど人間はぶくぶく太る。

もっとみる
【ss】お空の国のアリス

【ss】お空の国のアリス

 アリスが、色も香りも上品な毒を宙浮くポットから淹れだしてなみなみと僕に勧める。眠りネズミと三月ウサギは、眼球のぎらぎら反射する粘膜にその瞬間を今か今かと待つ。

「色の付いたお湯がちょっと喉をひとなぞりするだけよ」

雨に濡れたサクランボ色の唇が死に化粧のようだ。桃を思わせるほの赤い頬にルチルクオーツみたいな金のブロンド髪をくるんと垂らして、アリスがじっとこちらを見つめている。

「毎日が命日、

もっとみる
【ss】アリス・リデルが起きてから

【ss】アリス・リデルが起きてから

 ハートマークに尖っている部分があるのは、奥深くまで刺すため。ふたつの丸いカーブは返しになって抜けないように。凶器の形だ。女王はいつでもご乱心に見えるけれど、彼女の言う「首を刎ねろ」が「ご機嫌麗しゅう。今日は素敵な日ですわ」と大体同じ意味なのを、城の者ならちゃんと知っている。しっかり愛の下に働いてきたから。

「この国って退屈ね。トランプがハートしか無いわ。大富豪をオンラインででしかできない」

もっとみる
【小説】虹酔い

【小説】虹酔い

 光に惹かれ羽虫は月に向かってひらひらと飛び、大気圏を越えられず死んだが、その果てしなく無謀だった軌跡はきっと幸せと言うのに値するだろう。

 死者をこの世から切り取るのに思い出という刃物が必要だと思い込んでいる人間は多い。そうして気が済むようにできているんだ。死んだ者の後ろ髪を引きたいような懺悔に近いなにかを聞かされている間、わたしは静かに諦めていた。諦めきれない人が泣いている。泣いたら楽になれ

もっとみる
【ブログ】人魚の肉を贅沢に使った魚肉ソーセージ

【ブログ】人魚の肉を贅沢に使った魚肉ソーセージ

タイトルの通りのブツを手に入れました。当方ヒューマンです。
でした。

結論から言うと人魚の肉はたぶん刺身で日本酒と合わせるのが一番幸せになれます。

話を少し戻します。みんなこのデロリアンに乗ってね。
闇猫商店っちゃあ魚と名に付くものを見境なく売ってる魚体満足な品揃えで有名です。最近安い炭水化物ばかり食べていてわたしの身体はもうガタガタぬかしとって、ん〜〜いくないとおもうなの〜〜ってずっと絶叫し

もっとみる
【ss】ウサギの隣人

【ss】ウサギの隣人

 心理学者はこの世のおおよそが心で観測できるものしか無いっていう結論を出したくて急いでいる。作家は言葉の無いところからこれは「パ」にしよう、だとか「ン」と続けよう、とかいう才能で明日の空腹を先送りに生きる。警察官は皆んなの一生にどれほど関わらないようにできるかの創意工夫で幸せの尺度を測る。

 じゃあ、女子高生は何をしたくて急いで生きて幸せとすればいいんだろう。

「しぃちゃんは哲学者だね」

もっとみる
【ss】君の前で霞む花

【ss】君の前で霞む花

 幸せになって欲しい。そう思っただけなのに、空から柔らかい軌跡で落ちてきたブーケは僕の手元に飛び込んできて、全ての気持ちが駄目になった。花束が僕をばらばらにする軽さで、でも君が掴んでいた温もりを灯していて、目がカッと熱くなる。泣く資格なんて無い。周りの歓声に溺れる一瞬の間に、振り返った美しい君が、そんな僕を見てたぶんまっさらな気持ちで笑った。

 空は人の心も知らないで新郎新婦のためにきらきらと晴

もっとみる
【ss】空飛ぶソイソース・ラーメン教

【ss】空飛ぶソイソース・ラーメン教

 世界の秘密を抱えたわたしは、阿佐ヶ谷で醤油ラーメンを食べている。ふーふー、はふっはふっ、ずるずるずる。コク深い醤油スープに透き通るちぢれ麺。湯気と共に啜ると熱々でこっくりとした旨味が口の中いっぱいに広がる。期待に痛くなった頬袋が喜ぶいつもの味だ。歯応えが少し素直じゃなくて嬉しい。汗ばむ額を換気扇からの微風が撫でる。れんげで一口スープを飲むと、この小さな中華屋一番の売りの煮卵にも箸を伸ばしてみた。

もっとみる
【備忘録】某ゲハ蝶

【備忘録】某ゲハ蝶

冷たい水をください
できたら愛してください

「冷たい水はまだ分かるけど愛してくださいでめちゃくちゃ要求のハードル上がってない?」

そこなんだ。いやそこじゃないだろ。

「いや水は分かるんよ。生命維持に必要なラインじゃん。愛は?」

まぁ飛躍はしてるかもな……。

「道行く人に『水をくれませんか?』って言われたらあげるやん」

うん。

「『あの……できれば愛してくれませんか?』って追いで言われ

もっとみる
【ss】シザーハンズの恋人

【ss】シザーハンズの恋人

 赤く光る金魚が、夜の降らせる銀糸の間をゆらゆらと泳いでいる。波紋が闇を揺らし、す、と溶けて広がる。そんな涼しげな浴衣で彼女は来た。

「お待たせ。……変じゃないかな」

俺は意地悪をする時、右側の頬にえくぼができるらしい。

「いや、そこら辺の一反木綿より上等な浴衣だ」

「もう、馬鹿にして」

「おい、呼んだか鋏男」

今夜は百鬼夜行。橙色のぼんぼりを持った妖怪たちは地獄に縁のあり過ぎるゆえ地

もっとみる
【ss】人は風、桜泣かせの春疾風

【ss】人は風、桜泣かせの春疾風

 もう死に方が完璧になりそうな人とは仲良くなりたくないな。

 きらきらと舞う桜の花びらの隙間を探す春風。わたしは思いをそっと預けて空を見上げる。心の中で君を思い出す度に君は死ぬんだ。強く寿ぐ季節にほとんど負けそうになりながら、それでもアスファルトの水溜まりは避けられる。これが生きているということだ。歩を選び、精度高く定め付けて、足の筋繊維を律し、濡れないように前へ、前へ。

 あの人が生きていな

もっとみる