見出し画像

とても楽しく、幸せな8か月だった

思いを揺さぶる1本のメールが届いたのは、昨年12/6のことだった。

差出人は、noteで長らくフォローさせていただいている、というかもはや古くからの親友のような菊地早秋さんだ。
そこには「電子書籍を出版するにあたって伴走」してほしいとあった。

12月、ちょうどキャリアコンサルタントの養成講座が佳境だった頃だ。
今後は編集者としてではなく、キャリコンとしての道を歩もうとしていたまさにその時だった。

僕は早秋さんのnoteのファンだ。

ご自宅の古民家に優しく差す陽の光を、ゆったり漂う埃さえ感じられるほどに時空を自在に操って描写することのできる文才。
ご本人にはもう何度も埃を感じる、埃がいいと言い続けたから、ちょっとムッとされているかもしれないが。

そんな方から編集の依頼が来て、ときめかないはずがない。

さらにメールにあった「伴走」の2文字が、僕の心を捉える。
そうだ、編集者は主役の著者を傍で支え、伴走する存在だ。
それってまるで相談者を支えるキャリコンと同じではないか。
そうか、僕はやっぱり人を支えるのが好きなんだ。
編集者をやめる必要なんてない。
早秋さんは僕を大きく揺さぶって、そんな愉快な結論を導き出してくれた。

僕は一点のためらいもなく「もちろん伴走できます!」と返信した。

「ここ数日で一気に冬の気温となりました」
「急にめちゃくちゃ寒くなりましたね」
と挨拶を交わしたそのメールからすべてが始まり、春が過ぎ、夏になった。

途中、僕は入院し手術をし、失意の日々を過ごしたり。
早秋さんもしばらく手をつけられない日々があったり。

でも昨日、ついにその作品が上梓された。

『ヤギと家族になる 実体験!基本から緊急対応まで分かるヤギの飼い方』

この本は、ヤギの飼育法を実体験に基づいて詳しく綴ったものだ。
そう、早秋さんちではヤギを2頭飼っているのだ。
2年前、早秋さんちに遊びに行ったときも庭で元気に跳ね回っていたなぁ。

ヤギの入手方法からはじまり、特性、エサ、体調管理など、およそヤギの飼育に関するすべてが網羅されているのではないだろうか。
しかし、単なる飼育本ではない。
「はじめに」から「おわりに」まで、一貫して流れるのはヤギたちに向けられた早秋さんの優しい目線。
全編通してこの本は、ヤギ愛に満ちているのだ。

早秋さんは元々「古民家移住の教科書」というブログで発信しておられた。

そこに書きためた人気のヤギ記事を一書にまとめることになり、その編集担当として僕に白羽の矢が立てられたのだ。

ブログから集めた記事に書き下ろしのコラムをあわせ、章ごとに校正したあと、全体を見通して齟齬がないかを確認していく。
通常ここまででかなり手こずるのだが、完成度の高い原稿のおかげですべてがスムーズに運び、前付・奥付をつけ、レイアウトを施して、昨日無事発売となった。

出版に至る経緯は僕などが書くより、ご本人の昨日の記事が詳しい。

noteの世界には、いつの日かの出版を夢見ている人は多いと思うが、そんな方にとってこの記事は必見必読だ。
思いを形に残すことについての考察がとても鋭く、深い。
「人生を変えたかった」という早秋さんのその現場に立ち会えたこと、いや立会人に僕を選んでくれたことが嬉しい。

早秋さんは僕が主宰するメンバーシップ「エディターコース」のメンバー。
書くこと、編むことをともに学んできたメンバーが出版という晴れ舞台に漕ぎつけるって、こんなに嬉しいことがあるだろうか。

「伴走」の2文字で編集者として再び立つことを促してくれた早秋さん、本当にありがとう。
元日、「エディターコース」でエッセイ講座の開講を高らかに宣言できたのは、早秋さんのおかげだ。

ゴールを目指してずっといっしょに走ってきたのに、そのゴールに着いた途端、淋しさがぐっとこみあげてくる。
とても楽しく、幸せな8か月だった。

(2023/8/16記)

この記事が参加している募集

チップなどいただけるとは思っていませんが、万一したくてたまらなくなった場合は遠慮なさらずぜひどうぞ!