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電子書籍の出版と夏の思い出

2023年8月15日、電子書籍を出版した。

こう書いてしまうと簡単なのだけど、この21字の一部始終にはたくさんの時間と想いを注ぎ込んだため、そのことについて書いてみたい。

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電子書籍の出版については、実は昨年から漠然と考えていることだった。なんなら生きているうちに何かしらのかたちで自書を出版したいというのは、もっと前からの夢であった。

それを実現させようと思えたのは、他ならない飼いヤギのおかげである。

2頭のヤギを飼い始めてから今月で丸3年になるが、これまで自身のブログサイトでヤギの飼い方について地道に記事を綴ってきた。最初はそこまで重たい気持ちで書いているつもりはなく、「ただ誰かの参考になれば万々歳だな」程度に捉えていた。ヤギはややマニアックな動物だし。

しかし、想像以上にヤギの飼い方に関する記事は人気になっていった。アクセス数も自分が書いた他の記事とは比べ物にならなかったし、問い合わせフォームから実際にヤギの飼育に関する相談を受けることもあった。

このことから、イヌネコほどポピュラーでないにしても、世の中にはヤギを飼いたい人やヤギの飼育について悩んでいる人が、思った以上にいるらしいことを知った。

そうであれば、ブログサイトに書いてきた内容を大幅に見直して、一冊の書籍として体系的にまとまったヤギの教科書的なものがあった方が、これからヤギ飼いを目指す人にとって親切だと思った。また、その先にいるヤギの幸せにもちょっとは貢献できるかもしれない。

「いつかはどんなかたちでも出版してみたい」という個人的な夢も叶えられることになる。

それが電子書籍の出版に至ったおもな理由である。

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もっと別の観点から出版の理由を挙げるとするならば「人生を変えたかった」というのもある。今までの自分の人生に喝を入れたかった、とでも言うのだろうか。

これまで興味があることや好きなことがあっても、なんとなくかたちにせずに終わってしまうことが多くあった。そして年齢を重ねるごとにそのことを後悔することが増えてきた。他者が見て分かるようなかたちにしていたら、自分以外の誰かとの接点が生まれやすくなっていたかもしれないし、もっと自分自身に自信を持てていたかもしれない。

今後は人生の足跡を物理的なかたちで残していきたい。

人は変わるものだ。考えていることも、取り組んでいることも、身を置く環境も、関わる人も。大きなブレがなく人生を全うする人もいるのだろうけれど、そのなかでさえも微妙に変化を続けていくものだと思う。そして昔のことは大体忘れていく。

あのとき何を考え、何に一生懸命だったのか。

自分ひとりの胸に秘めているだけでなく、かたちとしてきちんと残し続けていきたい。

このnoteもそうだ。正解のないタイムリーな思考を文章(エッセイ)というかたちで残している。年月日とともに。

かの有名な画家、パブロ・ピカソも作品にはすべて必ず日付を入れるという。日付を入れる理由は、ある作家の作品と知るだけでは不十分で、いつ・どんな状況で制作されたものかを知る必要がある、と考えていたからだそう。

「創造する人を通してより人間というものを洞察できる」とも説いている。ピカソはこれを「人間の科学」と表現する。

自分はごく普通の一般人で、ピカソの人生と比較できる器では全然ないけれど、いつか死ぬときに人生を振り返ってみて、自分自身で「人間の科学」ができたらいいなあと思っている。

あのときはこんなことに取り組んで、こんなものを作ったんだなあ、と数々の点を感じながら「人の一生ってなんだったんだろう」とか考えるのかもしれない。

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電子書籍の出版は、とてもひとりでは乗り切ることができなかった。

実は編集さんとして、最初から最後までずっと一緒に走ってくださった方がいる。それが、noteでもご活躍されているへんいちさんである。

へんいちさんは、出版社に勤務されていたご経験があったり、ご自身の著書もあったり、文章や出版に関するプロフェッショナル。noteのメンバーシップ(エディターコース)では、エッセイ添削や文章講義も行っていらっしゃる。とても有意義な内容を毎回ご提供くださり、おトクすぎると思う。

へんいちさんとはリアルでお会いしたこともあり(しかも我が家で)、お人柄も分かっていたため、電子書籍の出版を検討した際、真っ先にお声をかけさせていただいた。

二つ返事でお引き受けいただき、飛び跳ねるほど嬉しかった。

出版後に強く思うこととしては、きちんとした出版を考えるなら、ひとりで行わずに信頼できる編集さんと伴走した方がよいということだ(私の場合、へんいちさんがいなければ、出版までたどり着けなかったと思っている)。

今回へんいちさんと一緒に作業させていただいて、自分のような単純に書くのが好き程度の人と、書籍づくりのプロである編集さんの間には大きな差があることを知った。そして感動した。

電子書籍出版の作業は、まず原稿を書いて、それを編集さんにチェックいただいて、という行程をこまめに何度も繰り返していくのが基本だった。ここまでは想定できると思うけれど、じゃあすべての原稿が揃ったあとは……?となってしまうのが一般人。

出版には原稿以外、つまり文章を書くこと以外にも知らないといけないことがたくさんあることが分かった。

はじめにとおわりにの内容、目次のつくりかた、章と節の組み方、フォント、文字の大きさ、奥付(本の最後に書いてあるやつ)、出版日の決め方、本のコンセプト、挿絵バランス、表紙づくりなどなど……。

そういう意味で、ベテランの編集さんと手を取り合い伴走いただけるのは、とても心強かった。時には優しくアドバイスをくれて、時には率先してリードしてくれて、押すところと引くところのバランスが絶妙だった。

もし今後、電子書籍の出版を目指す方がいらしたら、ぜひへんいちさんをご紹介したいと思う。または、メンバーシップのご加入をおすすめしたい。

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夏の思い出を彩るヒマワリとアストランティア・スノースター

この夏は猛暑日が続いて、地球がどうかしてしまったのではないかと思うほどだった。まだ夏は終わっていないけれど、特に7月後半~8月前半の暑さには夏好きの自分もさすがに参った。

この猛暑に加え、今年4月にオープンさせた宿(蔵に泊まれる小さなリゾートreZOU)も、梅雨明けと同時に一気に忙しくなった。また、今年生まれたひよこのお散歩の見守りにもかなりの時間を費やした。

2023年の夏は、電子書籍、宿、ひよこ、電子書籍、宿、ひよこ……の繰り返しだった(電子書籍以外は現在進行形)。

忙しいけれど、嫌ではない爽やかな疲労感といった感じ。

先日立秋を迎え、夜鳴く虫が秋めいてきて、気温はまだまだ夏だけれど、少しずつ秋の気配も感じつつある。どこか切ない音色で音を奏でるスズムシ。その姿を確認すると、この夏の思い出を綴りたくなってしまった。

ちなみに出版日を8月15日にしたのは、今日が夫の誕生日だから。

特に今年、夫にはたくさん支えてもらって、一緒にいろいろな苦労を乗り越えてもらって、その感謝の気持ちと誕生日プレゼントを兼ねてこの日付を選んだ。この日が素敵なのでは、と後押ししてくれた編集のへんいちさんのセンスにも感謝を込めて。

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電子書籍はAmazonやKindleでご購入・ご覧いただけます。

『ヤギと家族になる 実体験!基本から緊急対応まで分かるヤギの飼い方』

※8/16追記

へんいちさんも今回の電子書籍づくりについて記事にしてくれました。「編集者」というお仕事や、考えていることについてよくわかる大変興味深い内容です。


そのとき必要なことに必要な分だけ、ありがたく使わせていただきます。