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紅の言の葉

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#ショートエッセイ

賊塞の祝祭

賊塞の祝祭

煙草は唯の害悪と云うが
悪を悪としか映せぬなら
毒もただ罪と罰の生産物
唯一つの眼鏡しか持たぬ
それ以外は全て悪と評す
その眼鏡が剥奪する微酔
嗜みの粋も貫禄も哀歓も
君の清さには讃歌を贈る

セヴンスターを握り締め
夜の歓楽街で酒瓶を割る
其れは宛ら往年の名男優
特別な夜には葉巻を咥え
攻めを崩さず勝ちを抜き
短かい望みをモノにした
古い男が重ねた生の歴史
時代の趨勢を生で見た瞳
君が世に生を受

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屹立礼賛

屹立礼賛

君を勃たせる琴を探せ
その線を成す物を弄れ
自分を勃たせた世界で
身を震わせ血を巡らせ
快感に溺れて痙攣せよ
自分に萎えている内は
世界も小さく萎んだ侭

わたしには出来ませぬ
わたしには解りませぬ
なんて恥ずべきこと哉
其は奥ゆかしきご尤も
是ぞ清楚で可憐な乙女
君の美しき衣よ侭あれ
その下の柔肌に幸あれ

君に奉る

君に奉る

白が混ざった顎髭
手に刻まれた年輪
横幅を擁した肩幅
抱擁するような目
琥珀がかった瞳孔
気持ちを語る背中
わたしを慈愛する
欠片たちの存在や
わたしに奉納する
その集合体こそが
自愛を支える支柱
その柱が立つお社
その社を参拝して
この身を奉り捧ぐ
それが即ち私の業

嘘と本音の真実

嘘と本音の真実

嘘だから複雑にする
嘘だから美麗にする
嘘だから言いやすい
本音こそがシンプル
本音こそが穢らしい
本音こそが言い難い

影と光

影と光

人気が欲しいのなら無視を
裕福が欲しいのなら貧困を
人脈が欲しいのなら孤独を
突き抜けたいのなら批判を
勝ちを得たいのなら負けを
飛び抜けたいのなら嫉妬を
影を受け入れる覚悟なしに
光を手に入れることは不可

自由の国の不自由

自由の国の不自由

本心では違うことを思っていても
みんなと同じことを言っておけば
誰も攻撃してこない花咲く世間話
こんな自由な国に生まれておいて
自らの手で自らの言動を奪う搾取
世間を見張り自分をも見張る監視
正しさスゴさを見せたいのは保身
みんなを幸せにしたいなんて傲慢
他人を幸せにするよりまずは自分