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通信制高校卒東大生が考える「スターバックスの成長戦略と東大受験戦略は大体同じ」

初めまして。
UTFR会員のンダーカこと神田直樹(東京大学文科Ⅰ類2年)と申します。
私は世にも珍しい、通信制高校出身の東大生です。

さて、そんな私が今回紹介したいことは何かといいますと、
「入試は資本主義社会と同じで少数派が勝つ構造になっている」
ということと、それゆえに、
「スターバックスコーヒーの戦略と、大学受験戦略は大体同じ」
ということにつきます。

ここで私の経歴を少し詳しく紹介します。
私は、中学1年生のころドイツに渡り、現地の日本人学校に3年ほど通いました。その後、普通の高校に進学するという選択をせず、通信制高校に籍を置くことで、ドイツにとどまりつつ、ひとりで勉強することを選択しました。その選択は功を奏し、主席に迫る成績で東大文1に合格しました(惜しくも一浪ではありましたが)。

それでは本題です。
「受験というのは資本主義社会と同じだ」といのはどういうことよ?
という件に関して。

世の中では「受験は団体戦」ということが喧伝されていますが、そもそも入試の構造上、これは欺瞞でしかありません。だって東大入試ですら、2次試験にたどり着けた者のうち、さらに3人に1人しか受からないのですから。
つまり、受験というのは、「少数派が勝つゲーム」だということなのです。周りを出し抜く戦略を有した人間が勝つ。これは、まさに資本主義的世界観です。

ただ、残念なことに、日本人の多くは、高校生までにその逆の世界観、「多数派が勝つゲーム」を叩き込まれています。学校という社会においては、学級委員長の選挙もそうですし、制服や時間割など、「多数派」になることを強いられるシステムが蔓延っており、そうしたほうが勝てる世界が広がっております。

そのような世界観を保持したまま入試に勝つのは実は大変困難なことなのです。
例えるならば、それはボコボコの殴り合いの戦場です。全員が素手で殴り合いをして、一番実力がある奴だけが生き残る。そんな場所でも生き残れるという自信がある人は、どうぞ殴り合いのリングに上がってください。
ただし、いつの日か世界観をガラリと変えない限り、そこのリングから降りることは、敗北以外許されません。中学入試、高校入試、大学入試、大学内、社会人生活、すべてボコボコの殴り合いをやって勝ち続けられる人間がどれほどの数いるのでしょうか?

高校入試に直面した私は考えました。この受験戦争に勝って、学内戦争に勝って、東大入試にも勝って、東大内でも勝ち続ける…無理ではないか?と。
そこで私は受験界における大転換を思いついたのです。
それが、「そもそも高校に行かないこと」。
当時は気づいていなかったのですが、私の受験戦略を振り返ってみると、それは資本主義社会において、勝ち抜いている企業がとっている戦略と本質的に同じものであったのです。

資本主義社会においては、いつでも正しい意思決定能力を持った少数派が最終的に勝利します。1人が99人を出し抜いてすべてを得る、そういう世界です。
多数派は、常に競争の荒波に揉まれ、最終的には疲弊するのみ。19世紀にアメリカで起こったゴールドラッシュでも、我先にと金を採掘しに行ったものではなく、そんな彼らに採掘のためのツルハシを売った者が大勝ちしたのです。

さて、では資本主義社会と受験で、少数派であり続けるためにはどうすればいいのか?
スターバックスの戦略にこそ、その正解を見出すことができます。

一橋大学大学院の楠木建教授の著書『ストーリーとしての競争戦略―優れた戦略の条件』によりますと、企業が競争優位を維持し続けられるため、つまり少数派であり続けるために必要なのが、「一見すると非合理だけど、コンセプトから見ると一貫している、中核となる打ち手」、この本においては「クリティカル・コア」と呼ばれているものです。

曰く、スターバックスのクリティカル・コアは、「直営方式」であるということ。
カフェの経営において、フランチャイズではなく、全店を直営するというのは、一見するとかなり不合理な戦略です。なぜなら、フランチャイズ契約であれば、開店時の費用を抑えられますから、急速展開が可能で、株式市場にとっては大変好ましいからです。その他にも、店舗がつぶれた時の損失もフランチャイズならば抑えられますし、また、フランチャイズであれば店のオーナーや店長のコーヒーの知識をそのまま利用できるからです。

それにもかかわらず、費用もリスクも高く、教育コストもかかる全店直営方式を採用したのは、スターバックスには「忙しいビジネスマンのための第三の場所となる(the third place)」という揺るぎないコンセプトがあったからなのです。
この「第三の場所」というコンセプトを成立させるために必要であったことは、全店直営でないと達成されませんでした。
例えば、「第三の場所」であるためには、落ち着いた空間であって、お客様が長居できることが重要なのですが、カフェでお客様が長居をしてしまうと、回転率が悪化し、利益に相反してしまうことになります。フランチャイズの場合、オーナーの収入は店の利益に紐づけられていますから、そんな利益があがらない業態は我慢できない。
また、スターバックスがフードにあまり力をいれてないのも戦略の一環です。フードに注力すれば売り上げと回転率は向上するのですが、のんびりする場とは程遠くなってしまう。それがフランチャイズオーナーは耐えられないのです。

さらに、スターバックス最大のウリがその居心地の良さである以上、新聞広告やCMは効果が薄いのです。コーヒーの味を伝えるとかであれば簡単なのですが、居心地の良さは広告では伝えにくい。
そこでスターバックスがとった戦略が「地域ドミナント戦略」と呼ばれるものです。これは、一つの地域に何店も出店することで、その地域の客総取りを目指し、生活圏に密着することのできる戦略です(そのほか材料の搬入の楽さなどのメリットもあります)。
ただ、これはフランチャイズ契約とすこぶる相性が悪い戦略なのです。というのも、スターバックス間で客の取り合いが起こってしまうので、一店舗当たりの売り上げは減少してしまうからです。これには店のオーナーも黙ってはいません。

以上のように、「第三の場所」というコンセプトは、直営方式というクリティカル・コアによって支えられるものなのです。
ただ、この直営方式というクリティカル・コアは、前述のように一見非合理なため、後発のコーヒーチェーンはその他の表層的な戦略だけを模倣する。それゆえスターバックスの一人勝ちが成し遂げられたわけです。


さて、私が言いたいのは、この戦略は東大受験にも応用できるということです。
つまり、自分だけの「クリティカル・コア」を見つける。これが、受験、そしてその先も勝つために必要なことなのです。

 
 もうお気づきかもしれませんが、私にとってのクリティカル・コアとは、端的に言うと「高校に行かない」ということです。これは、「ボコボコの殴り合いを避けて東大に受かる、その後の人生も殴り合いを極力避ける」というコンセプト達成のために必要不可欠なものでした。
 言わずもがな、高校にも塾にもいかないというのは一見不合理な方法です。モチベーション維持も難しいですし、受験情報もほとんど入ってこない、そして、ダメだった時のリスクが大きすぎる、といった点です。

 ただ、ボコボコの殴り合いを避けるため、核となることが2つありました。
 1つ目は実質面、2つ目は精神面です。
 1つ目においては、なるべくどこかの科目で楽にアドバンテージを得たいという思いがありまして、その時ふと知ったのが、「英語以外の外国語で受験をすること」です。受験で使える英語以外の外国語とは、ドイツ語、フランス語、中国語、韓国語(韓国語は差し替えのみ)で、私は全てドイツ語で解答しました。
ドイツ語の問題は英語よりも簡単であり、時間的にも余裕があります(リスニングとかもないですし)。そこで、ドイツ語でアドバンテージを取ろうと思った私は、ドイツに残留してドイツ語の語学学校に通うのが一番いいと考えました。それゆえ、日本の普通の高校にはいけなかった。このようにして、ドイツ語を鍛え、最終的には2次試験で112点(120点満点中)をとることに成功します。

2つ目は、精神面です。もともと受験しようとしていた高校は、関西にある、東大に毎年10人程度が合格する学校でした。
ただ、その学校で10番以内に入っていなければ、安心して受験できないとなると、定期試験のための勉強に忙殺されること必至です。しかし、東大入試と定期試験は問題の質も方向性も全然違うわけでして、合格のためにはそれは最大効率ではありません。
そう考えると、日々ボコボコの精神的殴り合いかあ…となりますね。ええ、そっちのほうが非合理です。
また、ドイツ語という最強の武器は、自分の精神の拠り所ともなり、安心して受験生活を送ることが可能でありました。ドイツ語に関してはまともな競争相手が存在しない世界。そう、圧倒的ブルーオーシャンです。このように精神的ブルーオーシャンで生き続けられることが、受験には何より重要かと思います。

その他にも、高校に行かないことで、受験勉強の密度もかなり向上しましたし、哲学や経済などほかのことも勉強できました。さらに、人間関係リスクも存在しない。
振り返ってみると、素晴らしい戦略であったと思います。

私が今ここで声高らかに宣言したいのは、受験のためのクリティカル・コアをそれぞれ見つけるということなのです。ドイツ語をやるとか、進学校に行かないとか、そういう皮相だけを模倣しても、同じ結果はでません。それは、一見不合理な選択とはいえないので、模倣が容易だからです。

そして、このような精神性は東大生になっても変わらず、出身の特異性や、周りの東大生とボコボコの殴り合いをしない精神性などを基盤に、幸せな大学生活を送っております。

受験を控える皆様におきましては、ボコボコの殴り合いを避け、少数派であり続けるための自分の武器は何か、それを磨くにはどういう方法がクリティカル・コアであるか、というところを思案していただきたいと願っております。

本日のまとめ:受験に限らず、クリティカル・コアは勝ち続けるために必要な要素である。

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「あの頃、東大を孤独に目指し始めた君へ。」東大合格者がほぼ輩出されない学校出身の東大生が、過去の自らと似た境遇の中高生・受験生を支援する団体。そんな東大生達の交流の場でもあります。書籍『非進学校出身東大生が高校時代にしてたこと』 (utfr.official@gmail.com)
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