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行く人よ


いくつもの季節と
いくつもの月と星の巡りに
いくつもの樹木が根っこを絡め
いくつもの風がその周りを
かごめ遊びのように回っている

君にも見えるだろう? 空と海の彼方にある
ほの白い光の原野へと続く 野ぶどうの生えた道が

いつも気紛れにやって来る雨と
あの遠雷の後ろを追いかける
僕の歩いて行く先には
線路脇の名も無い花と石ころと
いくつもの街があった

なつかしい人よ 
風雨を避けるために
軒下で羽根を震わせる燕達にも
また一緒に飛べる日がやって来る

行く人よ 
君には君の淋しい夜があり
フウの葉むらから漏れて来る
淡い陽射しがあった

君は君の長くうねる道を歩き
いつかきっと
あの光の原野にたどり着いて
親星からはぐれてしまった
星の子の遍歴の物語のような
それぞれの色と香りが漂うお話を
語ってくれるに違いない

そうして僕らは いくつもの季節の夜空に
たとえささやかでも 精いっぱいに瞬く星を見つけては
照れくさそうに 幼い頬を合わせるのだ
 





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