見出し画像

「それぐらいで済んでよかった」。

これからは、そう言おうと思う。

高校1年生の夏、缶コーラを飲んでいた私に、
その時は訪れた。

「私もちょっとちょうだ〜い」。

気になるあの娘は、笑顔で私の手から缶コーラ
を奪い、そして私の心までサッと奪っていった。

「ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ・・・」

戸惑いながら私は、あの娘の手から缶コーラを
奪い返した。

「ちょっとぐらい、いいやんか〜」。

ニコッと笑うあの娘が眩しかった。

その日の夜、自分の部屋で1人横になりながら、
ボ〜ッとしていた。

テーブルの上には、空の缶コーラ。

捨てられずにいた。

ずっと、その飲み口を眺めている。

「もう、伝えるしかない」。

次の日の放課後、あの娘を階段の踊り場に呼び
出した。

私は、高まる胸を抑えながら言う。

「あの、付き合ってくれませんか?」

あの娘は応えた。

「えっ、何っ?、友達やんっ、
 どうしたん急に?えっ、
 これからも、
 楽しく話そうや・・・ 」。

「そ、そやんな〜」。

その後のことはあまり覚えていない。

家に帰って、自分の部屋で横になりながら、
ボ〜ッとしていた。

思いが湧き上がる。

「な、なんでっ?、俺の缶コーラ飲んだ
 やんな〜っ!。なのに、なんで・・・」

「あんなにこっち見て笑ってたやんっ!」。

「突然奪われたん、俺のほうやんかっ!」。

友達のモテ男が言った、

「付き合えるかどうかは、

その人とキスできるかを

想像できるかどうかだ 」

という名言はどこへいったのか。

乾いた唇は、相変わらずカサカサだった。

その後も色んなことを繰り返して、

ようやくわかった。

勘違い。

「勘違いをする力は大切だ!、

 その根拠のない自信で行動することが、

 成功へとつながっていくんだ!」。

そんなサクセスストーリーではない。

でも、

この勘違いをした話が、

その後、何十年の時を経て、

スタンドFMのライブ配信の一つのネタに
なった。

突然、私の脳から引っ張り出された、

若かりし頃の恥ずかしい記憶。

少々、興奮気味に話したその記憶の内容を、

笑ってくれる人がいた。

「面白かった」と声をかけてくれる人が増えた。

ある瞬間、間違いなく、その人を笑顔にできた。

とても嬉しい気持ちになった。

缶違いならぬ、勘違い。

「それぐらいで済んでよかった」。

「むしろ、ラッキーな経験だった」。

と思えた。


こんなバカ男のしょーもない話を、

今、大変な状況で笑顔になれない人達に、

捧げたい。

間接キッスと呼ばない、自然な距離感で。


※気持ち悪くなった方がいたら、ごめんなさい笑。









この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,489件

#この経験に学べ

53,861件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?