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宛先のない手紙 vol.2

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ほぼわたしの考えを垂れ流すエッセイのようなもの。その2。
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2018年7月の記事一覧

あの夏の「なぜ」が、まだわたしに絡みついている

あの夏の「なぜ」が、まだわたしに絡みついている

夏は、わたしにとって少し強すぎる。暑さと、眩しさと、鳴り響く蝉の声。どれもこれも、なけなしのわたしのエネルギーを吹き飛ばしてしまう強さを持っている。

年がら年中メンタルが不安定ではあるのだけれど、夏と晩秋に特にガクンとくるような気がしている。あとは3月。晩秋と3月は、きっと年と年度の終わり頃だからかなと思っているけれど、なぜ夏になると落ちやすくなるのだろう、と思っていた。

答えはすぐに見つかる

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「べき論」が世界を滅ぼす

「べき論」が世界を滅ぼす

「かくあるべき論」が苦手だ。

古参のファンだとか、業界のベテラン(や、先住民)だとか、そういった「元からいる」人たちのなかには、対象物を愛するあまり熱量が高い人がよくみられる。

ただ「好き」を表した熱ならば、はたから見ていて不快感を抱くことはない。むしろ、ひとつのものにこだわりを持って熱を注ぐ姿は格好いいと思う。わたしにはない熱量だからだ。(あったとしても、わたしは熱量をそのまま出すのが不得手

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3畳の城

3畳の城

ひとりでいられる場所がほしかった。押入れを空にして、電気を持ち込めないか画策したこともある。

小3の頃に持ち家戸建に引っ越し、小4の頃に大きな部屋を家具で分けて姉妹それぞれの半個室にした。念願の自分だけのスペースだった。4.5畳の計算だけれど、家具で仕切っていたから、3畳くらいしかなかったのではないかと思う。

ひとり暮らしをしたくて、いろいろと探してみたこともあったのだけれど、縁がないまま結婚

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おやこたびのススメ

おやこたびのススメ

夏に入り、母子で2度旅行をした。

家族で旅行に行くのが好きだった。毎年、夏と冬にどこかしら一泊ほどの旅行に行くのが、実家での恒例行事だったのだ。

行き先は子供ウケするような場所とは限らなかったけれど、どんな場所も刺激的だった。高速道路から見える名も知らぬ場所すら興味深くて、「今のうちに寝て起きなさいよ」という親の忠告も聞かずに、ぼんやり外を眺めていたなあと思い出す。

子どもと行く旅行では、派

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誰かから、誰かへ

誰かから、誰かへ

そのノートは、交換しない交換日記だった。

取材帰りに、かねてより行きたかったカフェに立ち寄った。各テーブルにメニューと一緒に置かれていたのが、その交換日記だった。

片面1ページ、多いときは両面1ページ。びっしりと誰かが書いた文字が並んでいる。「交換日記」とされてはいたけれど、特定の誰かと誰かが交換するためのものではない。ときには同じ人の文章もあったのかもしれないけれど、基本は行って帰ってくるた

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共有が味わいを生む

共有が味わいを生む

おいしいものを食べて「おいしいよね」って言い合う。

きれいなものを見て、「きれいだね」って目を輝かせる。

おもしろいものを見て、笑い転げる。

興味深いことに出会って、「ねえ、知ってる?」と話す。

楽しいことをして、「ああ、楽しかったなあ」と満たされる。

……どれもこれも満たしたいとは思っていない。それでも、こうしたことを積み重ねていくことが人との関係を築く上で大切なことだと、少なくともわ

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きっとトンネルは終わる

きっとトンネルは終わる

ここ数日、noteが滞っていた。優先すべき事項(仕事とか仕事とか)が重なっていたのも理由のひとつではあるけれど、1番は「言葉が出てこないレベルの不調」だった。

仕事に支障が出るレベルで、メンタルはどん底。さらに頭痛と目の裏の痛み、肩こりが重なり、フィジカルもズタボロだった。(フィジカルは今もそこそこボロボロだけれど)

仕事は這うようにしてこなしたけれど、「この文章、大丈夫……?」と不安になりな

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今のキラキラが、未来を生かすお守りになる

今のキラキラが、未来を生かすお守りになる

思い出す子ども時代の日々は、キラキラと輝いている。つらいこともたくさんあったし、理不尽にイライラしたことだってたくさん憶えているのに。それでもなお輝いていたと思えるのは、それだけ親がキラキラをわたしに差し出してくれていたのだろう。

先日、千葉県館山市に子連れで出かけた。次男が「貝を海に拾いに行きたい」と言い出したのがきっかけの、降って湧いた弾丸旅だった。

正直、夏の暑さにめっきり弱くなってしま

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削ぎ落とされた季節感

削ぎ落とされた季節感

夏はまだまだだ、と思っているうちに、7月も半ばになってしまった。

気温は十分すぎるくらい高くて、これで夏でないなら夏とは何だと問いたくなる状況だ。それなのに、わたしの感覚では、まだ夏がきていない。そうして、実感がいまいちわかないまま、恐らく秋がくるのだろうと思う、今年も。

わたしのなかにある「四季の流れ」の感覚と実際のカレンダーの進み方とにギャップを感じ始めたのは、大学を辞めた頃くらいからだっ

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午前3時半、深夜と朝の狭間にて。

午前3時半、深夜と朝の狭間にて。

ここ数日間、超早寝・超早起き生活のサイクルで回っている。と思えば、少し前には今日起きた時間に寝ていたのだけれど。

どこまでが「今日」でどこまでが「昨日」なのか、ときどきわからなくなる。

数年前まで夕刊配達をしていた。そのときに朝刊配達のスタッフのタイムカードを見たことがある。打刻されている時間は早い人で午前2時台。「早朝」どころか「深夜」だ。

朝刊は、各家庭に朝6時までに投函するのがルールだ

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迷子の亡霊

迷子の亡霊

もうずっと、所在のなさを感じている。

わたしは「漂流系」やら「点々系」やら「放浪系」やらを自称している。しっかりとどこかに所属するのが苦手だからだ。どこかに属すのであれば、気の向くままに動ける自由を確保できる程度にしておきたい。むしろ、グループより対個人的な付き合いの方が好きだなあと思っている。

このふわふわとした関係性は、わたし自身が好んでいるものだから、所在のなさとは関係ないと思う。たぶん

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命を預かった日

命を預かった日

先日出産した妹が、無事に赤ちゃんと退院した。

まだ産後すぐだから、詳しい出産話は聞いていない。ただわかっているのは、破水からはじまったあと、生まれるまでにかかった日数が2日半だったということ。

このうち本人が苦しんだ時間がどれだけだったのかはわからないけれど、17時間の出産で半分死んでいたわたしにとっては、「2日半……」と遠い目にならざるを得ない時間だ。

報告してきた妹にお疲れ様と返したあと

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「おもしろい」の色を知る

「おもしろい」の色を知る

バラエティ番組をあまり好まない子どもだった。意味もなくテレビをつけることはなかったし、それは今でもだ。というよりも、そもそもあまりテレビを見ない。

「今のテレビはつまらない」なんてことを言いたいわけではない。元からあまり見ていないので、バラエティの変遷自体知らないわけだし。

たぶん、わたしが「おもしろい」と感じるものが、いわゆるバラエティ的な「笑える」ものではないからなのだろう。

わたしがお

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「やれます」の重さ

「やれます」の重さ

「口先だけになるな」という父親の教えが、なんだか不本意な方向にまで影響を与えている。

「やれます、できます!」というのが極度に苦手だ。なのに、「やれます、できます!」が必要な仕事をしている。

やれるかどうかの判断は、わたしがするものではない。だからこそ「やれます」が、なかなか言えない。

言えるのは、「やれ得るように精一杯やります」だ。当たり前のことすぎるのだけれど。

精一杯やってみた結果、

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