見出し画像

島留学と人 りん-001 2024/10/19

悩める若者に送ります。
海士町という島に今年2024年3月に初めて訪れて、その後8月にまた訪れて。なるほどこういう島かみたいな大枠は得た。
でも、その島で暮らす人の、心の動きを追うという定点観測はまだできてなくて、で今回ある島留学生の協力を得て、それしますよ。qbc備忘録として。

インタビュー本文に入る前に、「島留学生」とはなんぞや、という前提を読んでいただきたい。
島根県の離島、隠岐島前地域(海士町、西ノ島町、知夫村)で行われている、外部から人を呼んで期間限定で生活し、働いてもらう制度。その後、定住したり、あるいは島を出ていく。いわゆる「地域おこし協力隊制度」を「島留学生」と呼んでいる。大人の島留学生と、島留学生だったり、年齢、期間などでいろいろ呼び方のオプションはある。
当然お金ももらえる。

20歳から参加できる。大学を休学したり、新卒採用された会社を退職したりした人が多い印象。つまりギャップイヤーや人生の夏休み的な期間の手触りがある。国内留学と呼んでもいいし、海外へのワーキングホリデーの仲間にも見える。人間の心に与える影響という意味ではね。
そして、島留学生たちは、1年だったり3か月滞在するわけだけれども、たいていの島留学生は、島を出るのかそのまま留まるのか延長するのか、で悩む。

島留学生とは? https://otona-shimaryugaku.jp/

と、いうのがまあこのインタビュー記事を読むための予備知識です。
あとはあなたの好奇心でもあれば、良い読書ができるのでは、と思います。
では、悩める若者に送ります。

今回参加いただいたのは、りん さんです!


今:今何をしている人ですか?

qbc:
今、どういう環境にいる人ですか?

りん:
普段はもう予定が毎日ぎっしり入っていて。今日も土曜日で休日なんですけど取材に行っていました。島の保々見地区という場所では、オフィス兼リビングラボを自分たちの手で共に建てるプロジェクト(リンク:島根県の離島 海士町で、海と共に生きるオフィス兼リビング・ラボをみなさんと一緒に建てたい! - クラウドファンディングのMotionGallery)も行われていて。興味があったので、今日は自分の仕事とは関係なくお手伝いに行ったりもしていました。

qbc:
ちなみにリビングラボとは?

りん:
島留学生の子が働いている事業所「AMAホールディングス」さんによる取り組みです。地域の方々も、事業で関わる方々も、いろんな人が交わることで海士町のための新しいアイデアが生まれるような建物を、1から自分たちの手で作っていこうとしていて。

qbc:
なるほど。
今、りんさんはどこにいるんですかね?

りん:
今、海士町です。

qbc:
もっと大きい視点でいうと、自分は地球上にいて、アジアの日本にいて、島根県で。
で、最終的に海士町のその部屋、っていうところになるんだけど。
こういう説明の仕方だと、どうなるかな?

りん:
うーん、住み慣れた日本にいて、自分が育った地元から遠く離れてぽつんとある小さな島「海士町」にいて、その中で今はシェアハウスの一番落ち着く自分の部屋にいます。

qbc:
目の前には何がある?

りん:
目の前には布団が敷いてあって、横には洗濯して放り投げたままの状態の服たちで散らかってます。

qbc:
パソコンの向こうにってこと?

りん:
はい。そうですね。

qbc:
直置きなんだ。

りん:
今は床に座って自分の膝の上にパソコン置いてzoomをつないでいる状態です。
目の前はいろいろ散らかってますが…笑

qbc:
家具は?

りん:
家具は、あんまりないです。そもそも自分の部屋の中は物が少なくて。
自分の右側にはタンスがあって、正面には洗面台があります。

qbc:
個室?

りん:
はい。個室なんですけど、なぜか私の部屋にだけ洗面台があるっていう感じ。

qbc:
部屋の作りは? フローリングとか畳とか。

りん:
フローリングで、布団が真ん中に置いてあるんですけど、その布団の周りは畳です。ちょっと外に出たらフローリングみたいな感じですね。

qbc:
わかりました。
今、何を感じます?

りん:
今…とりあえずさっきまではずっとリビングラボの工事のお手伝いに参加してて、今家に帰ってきて、ようやく体力的にも落ち着いたという感じですね。
今までこの1週間ずっと外で何かやったり、人と会ったりしてて。土日はいつも基本外に出っぱなしで。今部屋の中は暖房がついているので、温かくて快適です。ようやくゆっくりできて、居心地がいいです。

qbc:
今、身分としてはどんなですか。

りん:
身分か…。学生、休学している大学4年生です。
でも、海士町での肩書は「学生」ではなく、島留学生。それから、広報の人って感じですね。

qbc:
そこに、いつから住んでるんでしたっけ?

りん:
今年の4月からです。なので、もう半年たったのか。
割と半年経って、ようやく自分の仕事への立ち位置とか、やりたいことが見えてきたって感じですね。

qbc:
うん、うん、うん。
やりたいことが見えたというのは、何が見えた?

りん:
今までやりたいことがぼんやりしてたんですけど。
広報として今まで島留学生に取材して、noteの記事書いたり、インスタグラムで発信したりしてきました。それを続けるうちに、やっぱり自分の好きなことは、人の話を聞くことなんだなと感じて。記事やインスタグラムの投稿を作ったりする中で、取材をした子から「取材してくれてありがとう」とか「言語化できて、原点に戻れた」と言ってもらえるのも、すごく自分にとってのやりがいに繋がっていて。

ただ発信するんじゃなくて、目に見えないその人の内側の声を聞いて、引き出して、伝えるってところがやりたいことなんだなって。
自分の使命じゃないけど、自分のなかでそういうやりたいことの軸みたいなものが、より具体的になった気がします。

qbc:
うん。うん。

りん:
なんでしたっけ、さっきの質問…?

qbc:
私も、何を質問したか忘れちゃった。今話したいことが重要だし。
気分は?プラスマイナス、フラット、ニュートラル?どうですか?

りん:
ニュートラル。プラスでもないしマイナスでもないです。

qbc:
普段から、島にいるとか以外に、自分の全人生において、プラスマイナスどっち方面の気分が多いですか?

りん:
割とマイナスの方が多いですね。感情はかなりネガティブっていうか、周りの人からもそれは言われるんですけど。
島来る前も、島来てからも、人ととにかく比べちゃったりとか、自分に対してすごく過小評価することの方が多くて。
ちょっとしたことでも、夜家に帰ったらすぐ一人で反省会したりとか笑 
なんだろう。自分を褒めるってよりも、なんでこう努力できないんだろうとか、もっと頑張れるのになとか思って。あんまりプラスというよりは、マイナスに気分が下がってるときの方が多いですね。

これが島留学note。ちなみに「海士町」のnoteはたくさんあって初心者はどれを読めばいいのか迷子になります。

これがinstagram。ちなみに高橋さん本人出てる回の投稿です。

なぜ島にきたのか:本当に今のままでいいのかわからなくなった

qbc:
何で島に来たんでしたっけ?

りん:
島に来たのは、島に来る前まで就職活動をしてたんですけど、このまま就活して、なんとなくお金を稼ぐために企業に入って、なんとなく働くのがやりたいことなのかなってわかんなくなった。

企業を見てても、保険会社とか商社とか幅広くいろいろ見てはいたんですけど、全然興味がわかなくて。自分のもとからの興味や強みを、今存在している業界や会社に合わせて無理やりそこに当てはめていくような感覚になってしまっていて、それが嫌でした。

qbc:
うん。

りん:
だから社会人になる前に、もっと会社で働く以外の別の選択肢を取ってでも自分のやりたいことや好きなことに取り組んでいる人の話を聞きたいと思って。ずっとこれまで住んでいた東京を出て、東京とは環境が全く異なる知らない場所で暮らしたり働いたりする経験もしてみたくて。

qbc:
こういうことをするヒントってあったんですか?

りん:
ヒントですか?

qbc:
ヒント。そのアクションって、どこからアイディアがわいて出てきた?
アクションをするためにはさ、そうしようって思う発想が必要じゃない?休学して、自分が住んでいたところから離れた場所に住もうというアイディア。

りん:
なんだろう。私が東京にいたときに働いてたバイト先は、偏差値関係なく自分のなかで理由をしっかり持って進学先を選んだり、大学を休学したり、退学したり、あるいは海外に行ったりと、自分で自分の選択を取ってきた同年代の人たちばかりで。
私は結構、これまで人に流されやすくて、就職先もとりあえず東京の安定した会社で、みたいな考えがありました。多くの人が通る道しか見えていなかったからこそ、そのレールから外れるのが怖かった。一方で、自分の違和感から目を背けてでも、敷かれたレールに自分を無理やり当てはめなければいけないことへ窮屈さを感じることもしばしばあって。もっと、そのバイト先の人たちみたいに、自分の気持ちが動く方へ、自分の意志で何かを選択をしてみたいと思ったのが大きいのかもしれません。

そのうち、あえて自分にとって馴染み深い東京とか、知ってる物の見方から離れてみたくなって。東京と離れていて、しかも島留学に参加するまで一度も行ったことのない海士町に行ったという感じです。

qbc:
なるほど。

りん:
心のどこかで、人とちょっと違うことをしたいみたいな気持ちがあったんだと思います。

qbc:
なんで?

りん:
それもやっぱり、バイト先の同年代の人たちの影響が大きいですね。

qbc:
どこでバイトしてたの?

りん:
東京の地元にある学習支援塾で、「寺子屋」っていう場所です。大学1年のときから3年間、ずっとその塾で子どもたちに勉強とか教えてて。その塾自体は、受験とか偏差値とか進学実績を重視してるようなよくある塾とはちょっと雰囲気が違って。地域のつながりも濃いし、1人1人の子どもたちが持って生まれたものを大切にしているような塾です。小学生から高校生まで、不登校だったり勉強が苦手だったり、障がいを持っている子がいたり。本当にいろんな子どもたちが通ってて。もちろん勉強も教えるし、学校の成績も大事にはするけれど、何より塾長もスタッフたちも、学力だけを評価軸とせず一人一人の子の色んな面に目を向けながら、良いことも悪いこともひっくるめて日々子どもたちと真剣に向き合っていて。実際スタッフである私もそうでしたが、勉強だけでないもっと本質的なことというか、人として大事なことに気付かされる場所って感じがします。

qbc:
なるほどね。周りはどんな行動をとってました?

りん:
スタッフは大学生がほとんどで。一人は大学を退学して自分がやりたいことを究めるために、自分でお金を貯めて別の専門学校に行って勉強しています。
他にも、大学を休学して海外や国内問わず自分がやってみたいことにどんどん参加して、色んな人と繋がりながら濃い経験をしている子がいたり。
そうやって自分の考えを持って自分で動いているみんなを近くで見てきて、ただなんとなく大学に通って淡々と日々過ごしてる自分ってなんなんだろう、これでいいのかなって思ってしまって。単純に、そういう自分って何も変わりもしないし、自分の考えもないし、なんかつまらないな自分って感じたんです。
だからこそ、就活にモヤモヤし始めたことを期に、自分にとって今必要な選択として、休学を選んだんだと思います。今振り返ると。

2024年3月:来島
qbc:
島には何月に来たんだっけ?

りん:
海士町に来たのは4月でした。

qbc:
何やった?覚えてる感じ。

りん:
そのときやってたのは、今と同じで広報です。

qbc:
広報以外は? 忘れたなら忘れたでいいですよ。

りん:
仕事だとnoteの記事を書くのが初めてで、毎回記事が完成するたびに先輩にアドバイスをいただいたりしていて。今の自分のレベルでできる最大限のことを尽くそうとしてましたね。暮らしだと、シェアハウスがほんとすごく楽しくて、シェアメイトのみんなで鍋や餃子パーティーをしたり、夜もずっとリビングに集まってキャンドル灯しながら語り合ったりしていて。みんなの優しい人柄も素敵で、シェアハウスではすごく穏やかな気持ちでいられました。



2024年4月:日々やることに精一杯

qbc:
4月は?

りん:
島での暮らしや初めての広報の仕事に慣れること、それから、初対面のたくさんの島留学生と1から関係性を築くことには毎日必死でした。そのときそのときで一生懸命すぎて、細かいことはもう、何やってたか覚えてないですね、正直。

2024年5月:シェアメイト

qbc:
5月は?

りん:
5月…。あ、でも5月はいろんな人や仕事、島生活にもちょっと慣れ始めてきた頃ですね。まだまだ完全ではなかったけれど。仕事では、プロジェクトとして働いている島留学生がプロジェクトの垣根を越えてお互いに顔と名前や仕事内容を覚えられるように、全員分の自己紹介画像を作りました。これを作るにあたって、一人一人に直接会いに行き、話を聞いて、写真を撮って、文字に起こして、canvaという編集ツールでデザインをしてっていうのをずっとやっていて。時間はかかったけれど、みんなと顔見知りになれて自分が広報の人だと少し覚えてもらえて、一人一人から対面じゃないと得られなかった話も聞けて、やってよかった!と思いました。直接現場に行って、人に会って、話を聞く。今も大事にしている「歩く広報」という広報としての在り方みたいなのは、このとき初めて先輩から学びました。

暮らしの面だと、シェアメイトはみんな、気持ちが穏やかな人が多くて。なんて心が綺麗なんだろうと感じることもありました。でもときには、少し辛くなることもありました。私は5月は仕事が終わった時にはぐったり疲れて気持ちに余裕がなくなってしまったり、いろんな人ともっと関係性を作らなければ…!と焦っては時にそれにストレスを感じることもあって。そういうときはいつも、なんで自分はいつも心が乱れまくっているんだろうと感じては、もっと穏やかで優しい気持ちでいたいのにそうなれない自分に嫌気がさすことが何度もありました。焦りや余裕のなさから心に波が立っているときこそ、自分はなんでこうなんだろう、なんでこんなにネガティブなんだろうって感じて苦しくなり、シェアメイトのみんなのポジティブな言葉が飛び交っているリビングに行けずに自分の部屋にこもる時もありました。

2024年6月:シェアメイトの離島

qbc:
6月は?

りん:
6月の後半はシェアメイトの半分がもう離島してしまうこともあって、みんなと過ごせる残りわずかな日々をちゃんと大事にしたいと思っていました。あとは、ようやく島体験生の全員とも距離が縮まり仲良くなってきた時期でもあり、もっとみんなのことを知りたい、話したい、と思うようになっていました。
6月の後半の研修では、「褒め合うワーク」といって、お互いの良いところを褒め合う時間があって。私はグループの子たちの良いところを探したり、グループの子たちも私の良いところを探してくれて、お互いに伝え合いました。自分自身、特に5月はすごく心が乱れてたんですけど、でも自分自身にもちゃんと長所があることを伝えてくれたり、そんな自分を認めてくれる人たちがいて、うれしかったですね。今のままの自分でもいいんだって、ちょっと思えるようになりました。

qbc:
なんで、そんな自信ないんですかね。

りん:
なんでですかね。本当に自分を人と比べちゃうんですよね。

qbc:
現時点、今聞いた時点では、ゼロですよ。
りんさんが他人に引け目を感じる要素ゼロ、客観的に見て。本人がどこに関してなのかはわからない状態です。

りん:
うーん、やっぱり周りがみんなキラキラして見えるっていうか、なんでだろう…。

qbc:
なんでだろうね。

りん:
人からあなたはこういうところがいいところって言われたときは、やっぱり自分は自分の良さがちゃんとあるんだなって思えて自信になるんですけど、ふとした瞬間、それがかすんでいくことがあって。ムードメーカーで誰とでも仲良く話せる人とか、仕事でもすごいリーダーシップをとってどんどん人を巻き込んでいける人とか、そういう人を見るとやっぱりすごいなって思う。自分はまだまだできてないな、みたいな。別に比べる必要なんてないっていろんな人が言ってくれるんですけど、なぜか一気に自信がなくなってくる。人に流されやすいのかもですね。

qbc:
5月は精神的に不安定になった時もあったと言っていたけど、6月のメンタルは?

りん:
6月か…でも5月より不安定ではなくなった。だんだん自分の長所を伸ばしていいんだって思えて。短所を見るんじゃなくて、長所を伸ばしたいし、自分がどういう人なのかが人に言われてだんだん見えてきた頃ではありましたね。

qbc:
うん。
イベントは?イベントはなにかありましたか。

りん:
6月のイベントか。ちょっとカレンダー見てもいいですか。
島にいると1日1日が秒で過ぎていくので、細かいことをパッとすぐに思い出せなくて。

qbc:
カレンダー見ずに、何を覚えたのかってことを知りたいですね。

りん:
でも、一番今、カレンダー見なくても覚えてるのは、島の喫茶店でウクレレ教室があったことで、それが結構楽しかったです。

毎月あるんですけど、でも、どの月を振り返ってもウクレレ教室が一番印象に残っていて。MYクレレを持っている人も、持っていない人も関係なくみんなでその喫茶店に集まって、ご飯を食べて、たくさんしゃべって、演奏して歌を口ずさんだり踊ったり。マスターが毎月定期的にそういう場を開いてくれるんですけど、その時間はやっぱり自分にとってはすごく濃くて、ほっこりというか、元気になれる時間なんです。

qbc:
音楽は前からやってたんですか。

りん:
それが、島に来てからです。4月か5月ぐらいにウクレレを買って、それからのめり込んでしまいました。

qbc:
島でウクレレ売ってるんですか?

りん:
島に来てAmazonでウクレレをポチりました。

qbc:
ああ。始めたのは、周りでやってたから?

りん:
4月ぐらいに初めてその喫茶店に行ったときに、たまたまウクレレが置いてあってマスターに触っていいよって言われて。弾いてみたら音色がすごく可愛くて。私音符とか全然読めないんですけど、ウクレレは音符関係なく誰でも簡単に弾けるし持ち運びもできるし、一つそういう趣味があってもいいかもなって思ったのが、ウクレレを買ったきっかけです。

qbc:
なんていう喫茶店?

りん:
MGです。

qbc:
MGさんね。

りん:
はい。MGにはたくさんの島留学生がふらっと訪れたり、島に住んでる若い人たちも来たりしてて。MGに行くたびに、そこでまた新しくいろんな人と仲良くなれるのがすごく私は楽しくて。ウクレレ教室のときにマスターが手作りしてくださるサザエごはんとかカレーライスとかおでんとか、すごく真心がこもってて美味しいんです。それを食べながら、初めての人同士でも喋ったりウクレレを通じてわいわい温かい時間を過ごせるのがすごく良くて。やっぱり自分はこういう時間を求めてたな、みたいに思えるんですよね。

qbc:
4月からしてたと?

りん:
そうですね。MG自体は4月の後半ぐらいに知って、ウクレレ教室はそこから毎月参加してます、行けるときは。

MGさんのnoteでの紹介記事2022年のものなので高橋さん来島前ですね。

2024年7月:別のシェアハウスへ引っ越し

qbc:
7月は?

りん:
7月か…。7月は島体験が終わって、3か月もずっと一緒に暮らしてきたすごく仲良しのシェアメイト3人が離島してしまったので、最初の1週間は…あ、これ7月じゃなくて6月の後半のことなんですけど、離島後の1週間は本当に寂しかったですね。心にぽっかり穴が開いたような感じ。海士町がいつもと同じ海士町のはずなのに、なぜかいつもと違う景色に見えたし、立ち直るのに時間がかかりました。シェアメイトのみんながいた生活が、いつしか当たり前のように感じていたので。

qbc:
いつ立ち直った?

りん:
1週間経ってからですかね。1週間経ってから、もうそれを受け入れて次に進むしかないと思って。

qbc:
きっかけは?

りん:
きっかけか…。でも、もうシェアメイトが離島してしまったことを寂しいと思ってずっと引きずってても何も始まらないので、受け入れるしかないというか。新しい生活にも慣れて、再スタートで頑張ろう!という気持ちに変わりました。

仕事自体は変わらず楽しくて、いつものメンバーだったので安心感があって。仕事は楽しいから頑張れました。

qbc:
他に、7月、何かありましたか?

りん:
7月、住むシェアハウスが変わったのも大きくて。
他の島留学生がもともと住んでるおうちに途中から入らせてもらうことになりました。
今も夜は何かと予定が入っていたりで私は帰りが遅くなってしまうのですが、家に早く帰ってリビングで料理をしている時とかにはシェアメイトとしゃべったりしています。大抵は自分の部屋で音楽を聞きながらゆっくり休んだり、パソコンを開いてやらなきゃいけないことに集中したりしていることが多いかもしれないです。でも普段の仕事にも慣れてきたぶん、ありがたいことに取材やnoteだけでなくインスタのコンテンツ作成にもよりどっぷり関わらせていただくようになったのですが、仕事が終わって家に帰った時には完全にスイッチが切れてしまうことが多くて…気付いたら自分の部屋の畳の上で寝落ちしたりなんて日常茶飯事です。

qbc:
シェアハウスで、みんなご飯どうしてるんですか?

りん:
ご飯は、夜はみんな個々で作ってる感じです。自分の場合は、家に帰ったときにはもう体力がなさすぎて、自炊が面倒に感じてしまって、納豆ごはんとみそ汁だけで終わらせたり。もっと自炊を頑張らなきゃな…

qbc:島留学生のなかで高橋さんの知り合いっていうのはどれぐらい?

りん:
留学生体験生で、仲いい人ですか?

qbc:
いや、顔見知りぐらいの人も含めて。

りん:
そうですね…最近は本当いろんな人とよく喋るようになって。広報の仕事柄、取材でいろんな島留学生と関わるんですけど、それをきっかけに仲良くなったりとかもありますね。あとは休日、どこかで島内でイベントがあるたびに必ず足を運んでみたり、МGにもよく行ったりするので、そこでまたいろんな島留学生と顔見知りになって、話すうちに仲良くなることが多くて。

qbc:
うん。

りん:
あとは、島留学って島内の事業所で働く人とプロジェクトとして働く人とで2タイプがあって。私の場合はプロジェクトのメンバーなので、別のプロジェクトの島留学生と関わる機会も多いので、それも大きいかもしれません。

qbc:
なるほどね。うん。

りん:
正直、こんなに人と関わるのは島に来てからが初めてです。東京いる時は、自分からいろんな人に話しかけに行こうなんて全然しなかったので、交流も少ないし、よく話す友達も数人ぐらいだったんですけど。

島に来てから一気に人との関わりが自然と増えたことで、いろんな人と仲良くなれて。みんな年齢もバックグランドも違う島留学生だからこそ、一人一人とさまざまな話ができて、すごく面白いし、濃いです。

2024年8月:島の夏

qbc:
8月は?

りん:
何したっけ、8月…。ビアガーデンをやっていて、自分は実行委員の方には携わってなかったんですけど、当日屋台で食べ物を作って販売してました。普段の仕事プラスで、同じプロジェクトのメンバーと屋台をやってより仲が深まったのはうれしかったですね。

あと、お祭りもありましたね。仲のいい友人と常にいろんな場所で夏らしいことをやってましたね。お祭りに行ったり海で泳いだり、砂浜でアイスにかじりつきながら星空を眺めたり。

qbc:
他の島へは?

りん:
他の島へは、あんまり行ってないですね。海士町のなかで、仲いい友達島留学生とか体験生とかと夏だからこそできることを思いっきり楽しんでました。

qbc:
誰と仲いいの?

りん:
もうその子、今離島しちゃったんですけど、元々4月島体験生の同期でした。今でも島体験生の同期で滞在を延長して島に残ってる子もいるんですけど。4月のころから仲いい子たちとよく遊びに行ってました。

qbc:
気持ちの面では、どうでした?8月は?

りん:
そのときは夏だからっていうのもあって、いろんな行事に参加したりとかしてて。日々めまぐるしく過ぎていくので、もう自分について省みる時間が本当になかったですね。いい意味で、上がりも下がりもないっていう感じで。とにかくその日その日を、全力で駆け抜けていた感じです。

qbc:
うん。うん。

りん:
日記を書く習慣もあったんですけど、本当に書かなくなってしまって。一週間に一回書けたらいいかな、みたいな。だから、余計自分の気持ちを振り返る時間が7月、8月はあんまなかった。結構、忙しかったです。

2024年9月:2on1

qbc:
9月は?

りん:
9月は…そうですね。9月からは2on1っていって、広報の上司と先輩に日頃について話す場が定期的にセッティングされるようになって。毎回の2on1を期に、自分の強みとかやりたいことについて、本気でめちゃくちゃ考えるようになりましたね。

2on1をするたびに、上司からいろいろこういったところが良かったとか、こういうところをもっと改善しなきゃいけないみたいなことを直で言われたので、より自分のモチベーションが上がりました。まだまだやるぞ!!みたいな。
ようやく自分が仕事として大切にしたい姿勢や、これからやっていきたいことが、解像度を増して見えるようになってきました。

qbc:
なるほど。よかったですね。

りん:
そうですね。さっき言い忘れちゃったんですけど、広報のメンバーとも8月中頃ぐらいから、ようやくコミュニケーションをちゃんと取れるようになっていって。ようやく笑 お互いの良いところとか、苦手なところもちゃんと共有し合ったことで、チームとしての結束力みたいなものがより強くなったと感じます。

やっと自分のやるべきこととかやりたいこと、できることの立ち位置みたいのがはっきり明確になってきました。8月から9月で。

qbc:
りんさんのやりたいことって?

りん:
やっぱり、誰かの話を聞くことがそもそも好きだし、自分の強みなのかなって気づいて。やりたいことは、やっぱり大きな事業を立ち上げるとかそういうことじゃなくて、目の前の1人1人の話をじっくり聞いて、その人にしか話せないもの、内側に眠ってるものみたいな、見えてない部分を引き出して気づかせることだったり伝えることなんだなって。

2024年10月:人と比べて50点になる

qbc:
10月を振り返ってはどう?半月過ぎてみて。

りん:
10月…。でも、この前ちょうど半年間の活動報告会があって、自分のこれまでを振り返って発表したんですけど、今までは、本当にいろいろぼんやりしてたんですけど、ちゃんと振り返って言語化することで、やっぱり自分はこういうことがしたいんだってわかりました。それと、今まで結構人と比べて落ち込むことがかなり多かったんですけど、先輩が言ってくれた一言で考え方が少し変わって。やっぱり自分は、別に社会や地域のために大きな規模で何かをやりたいんじゃない。自分の目の前にいる身近な人だったり、一人の誰かを元気にしたり喜ばせたりできたらそれで充分だなと思うし、それは自分にとって一番のやりがいだから、評価軸もそれでいいのかなって思うようになって。自分がやっていることの規模間は関係ないし、そこで人と比べる必要はないんだと考えられるようになりました。

qbc:
うん。

りん:
ただ、見えてきたはいいものの、実際これから何しようかって考えたときに、今の広報のやり方、ただ投稿を作って発信してるだけで終わってる気がするので、これからよりその見えない部分を引き出して伝えるっていう部分を実現させるために、何ができるのかなっていうのは模索中って感じです。具体的な手段みたいな。

まだその具体的な方法がぼんやりしてるけど、そのままにしておいたら、もうまた半年どんどん過ぎていくのは怖いなとは思うので。割と今はいろんな人のところに自分から足を運んで、リアルな声を聞くっていうのを大事にしようって思ってて。

最近も、とあるプロジェクトの取材で一緒に山の中に入って、クロモジの収穫作業を体験したりとか。今日もリビングラボの工事の現場に自分もお手伝いという形で入ってみたりとか。とにかく体を動かしてリアルな声を聞くっていうのは、大事にしていきたいって、この一週間で思いました。

qbc:
なるほどね。楽しい?楽しくない?

りん:
楽しいです。

qbc:
楽しさグラフで、島に着いたときが100だとすると、それはどういう感じになってきてるんです?4月5月6月…と。

りん:
4月はずっと一定。だけど、5月6月7月でだんだんがんって下がって、8月はそのまま、9月ごろに一旦また下がったけれど徐々に上がっていきました。落ち込んだときには、すごくかっこよくてずっと憧れている広報のその先輩が気持ちをぶち上げてくれるんですけど。9月にそうやって一対一で話す時間が増えたりして、先輩のおかげで徐々に自分を肯定できるようになっていきました。プラスに上がってって、今10月は、割と80くらい?割と元に戻りつつあるって感じ。

qbc:
下がっていったのね。最低は何点ぐらいだった?
50の時ある?

りん:
あります。周りの島留学生がキラキラして見えて焦って落ち込んでいたときは、50は切ってたと思います。

qbc:
いつ頃?

りん:
8月9月とかで余計人と比べてしまって。その時期に島留学生も、みんな生活に慣れてきたから、どんどん新しい取り組みを始めたりしてる人も現れてきて。そういう人達が身近にいる中で、自分は相変わらず取材をして、編集作業の時はひたすらパソコンの前で地道に投稿を作ってばかり。自分はゼロから新しいことってなにかできているのかなと、焦りを覚えたというか。このままでいいのかなみたいなのがあったので、その時期ですね、多分。
一気に比べて落ち込む。ずんと下がる。

これからどうするの?

qbc:
今後は、何をやっていく? 島にいる期間も、残りあとわずかだよね。
人の話を聞くだけじゃなく、自分も一緒に参加していくってことは、目標としてかかげていましたけれど。

りん:
はい。自分も体験する。
あとは、今までは投稿を作るにしても、うまくいっているところやキラキラしているところみたいに、目に見えやすい部分だけを聞いて発信して、それで満足してしまっていました。でも今後は、実際に私がそうだったみたいに、周りと比べて悩んでたり動き出せなくてモヤモヤしたりしている人たちに向けたメッセージを届けたくて。取材の時には取材相手にとっての「結果」よりもその背景にある「過程」の部分や葛藤の部分、人間らしい部分を深く聞き出して、それをなるべくその人が語った言葉そのままの状態で発信していこうと思います。

ただうまくいっている・成功してることばかりじゃなくて、背景にある泥臭さとか葛藤とか、その人が当時感じていた悩みも全部ひっくるめて、人間味あるリアルなストーリーをちゃんと伝えていきたいです。

あとがき

「人はどこから来て、どこへ行くのか」というゴーギャンの絵がある。
私qbcは、子供のころから小説を書いてきて、人間ってなんなんだろう、って考え続けて30年以上が経過して、つい最近まではそれを小説にしてきたけど、4年前からはこの「無名人インタビュー」という場所、活動を通して、人間とはなんなんだろう? という好奇心を埋めている。
まあもちろん、あーこれはあれに似てる、あれはこれに似てるの連続ではあるんだよ。
でもね、一人の人間の個性と声で語られる物語には、いつもある力が備わっていて。
それはなんの力かって言えば、たぶん生きる力であって。
理解し、理解されあうことで得られる、群れをなして生きる人の喜びの正体なんじゃないかなと思う。

【インタビュー・あとがき:qbc】

【編集:むん】

#一度は行きたいあの場所 #この街がすき #インタビュー #地方創生 #地域活性 #海士町 #大学生 #休学 #島留学生

この記事は海士町関連のインタビューです。

この記事は「ローカルな人」インタビューです。

この記事は「《何か》と人」インタビューです。

無名人インタビューへの仕事依頼はこちらから!


いいなと思ったら応援しよう!

無名人インタビュー
いただいたサポートは無名人インタビューの活動に使用します!!