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クラスで騒いでたヤツに現在進行形で劣等感を感じている

大学生の春休みは長い。
実家へ帰省する鈍行電車の中で、これまでの学生時代を振り返っていた。



やりたいことなんてなにもない。
強いて言うなら、定時に帰れて、人間関係が良好なとこで働きたい。
給料は、平均くらいでいい。

学生時代、自分は要領がそこそこ良いって思ってた。
勉強は、量の割には順位が良かったはずだし、別に友達作りに苦労したってわけでも無かった。イケてるグループかと言われればそうではないけど、別に超陰キャってわけでもなかったと思う。

流れるように進路を決めてきた。
高校受験が初めてで、第一志望には受からなかったけど、そこそこの私立に入った。大学受験も第一志望の国立は落ちたけど、そこそこの私大には合格した。

就職活動もそこそこ要領よく進んだと思う。
応募した企業の数も少なく済んだし、内定をもらったとこも、そこそこ良い場所だ。百点満点では決してないけど、別に不満足ってわけじゃない。

そもそも就職活動なんてしたくなかった。
受験と同じ感覚で「できれば良いところへ」とは思ってたけど、喉から手が出るほどでは決してなかった。
どうしたら内定がもらえるのか?なんで落選してしまったのか?
受験と同じく偏差値と過去問があればよかったのに。

営業は絶対嫌だった。
知らない人と関わったり、何かをお願いしたりするいわゆるコミュニケーション能力が必要だから。特に根拠はないけど、なぜだか誰でもできると見下していた。

Slerがよさそうだと思った。
特にプログラミングが好きってわけじゃない。授業で受けたくらいだけど、自分でもできそうだと思えた。

ゲームやおもちゃ業界もよさそうだと思った。
これまで生きてきた中で何に一番時間を使ったのかと聞かれれば、まちがいなくゲームだった。一番接してきたのだから、別にできないことはないだろうし、やったことはないけれど何となく楽しそうだと思った。

就職活動は三年生の夏から始まった。
サマーインターンと言って同じ学生とグループワークを通して、その企業の内情を伺うことができる。そういえば「たくさん応募しろ!」と大学だったり、ほかの友人が話していた気がする。
でもなんとなくめんどくさくて、やる理由があんまり見つけられなくて、二、三社応募して終わった。特に合格通知も落選通知も来なかった気がする。

今思えば、結局その程度だったと思う。
でも一応大した選考を設けていない、名前を聞いたことがない会社の選考には進むことができた。事業内容を説明しろと言われてもできない。
そこは大して明確な理由はなく「なんか違う」って辞退した。

自分は要領がそこそこ良いって思ってた。
しゃべることは得意じゃないし、勉強だって別にトップクラスってわけじゃない。でもやればできるって、自分は絶対下位層じゃないって思ってた。

でも結局、自分が思い描いてた会社にはひとつも合格しなかった。
大手のSIer、ホビー系の会社のすべてに届かなかった。
いや違う。そもそも大して応募しなかった。

不合格が怖かった。
自分には見合ってない。自分じゃ無理をたたきつけられるのが怖かった。大学生になって、自己評価と他己評価の乖離に気づかされる場面が時折訪れた。

人前だとこんなにしゃべれないのか。
研究室の先輩と雑談ってなにをしゃべればいいのか。
服装に気をつけないとだめなのか。
アクセサリーを身につけたら少しは変われるのか。
髪を整えないといけないのか。
眉毛?そんなのいじったことなんてない。
グループディスカッションの時、どうふるまえばいいのかわからない。
誰に対して何を言えばいいのか。
いや、そもそも話についていけない箇所も多かった。

全部嫌だった。
身体が熱くなって、顔が赤くなったような気がする。ちゃんと喋れなくなって、一点を見つめるようになる。
そんなの周りに絶対悟られたくない。早くその場から立ち去りたい。

そんな目にもう遭いたくなかった。
気づけば就職活動に消極的になった。
もっともっとゲームとアニメに時間を使うようになった。
でも企業のロゴで思い出してしまう。
だからスマホのタブでゲームをずっと開いていた。Youtubeもずっと開いていた。

結局SIerに合格した。
自分の大学からも採用実績のある、大学内で説明会を開催している企業だった。とんとん拍子で合格した。教授から「あそこはいい会社ですよ」と言われた。受かってからその会社を調べた。
一応上場してるし、平均残業時間も少なかった。給料は平均くらいはある。高いってわけじゃないけど、自分の今の生活くらいなら余裕でまかなえそうだった。

自分が納得できる、諦めることができる材料をたくさん探した。
ブルーワークやブラック企業の動画を見漁って「かわいそうだな」って、自分の方がマシだって考えるようになった。

そうして就職活動を終えた。



大学生の春休みは長い。
実家へ帰省する鈍行電車の中で、これまでの学生時代を振り返っていた。

今の自分がこれからの自分について、納得できるような理由を探し続けた。


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