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創作大賞、気になる作品

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創作大賞応募作から、個人的に応援したかったり、気になった方の小説やエッセイなど。
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2024年6月の記事一覧

猫のお化けがでるほこら。でもそれは会いたい猫のお化けです。

猫のお化けがでるほこら。でもそれは会いたい猫のお化けです。

いつもランニングで走る場所です。
犬の散歩にもここを通ります。この公園の中に、ほこらがあります。何が祀られているのかは知りません。でも私が小さい時からあります。

もう12年前、いや14年前でしょうか?ここで不思議なことがありました。嘘のような本当のお話です。

今いる猫の前、虎猫を飼っていました。そのとら猫の名前はチャーリー。うちの英語教室に通う生徒が拾ってきた猫です。
茶色いからブラウンにしよ

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言の葉ノ架け橋【第1話】

言の葉ノ架け橋【第1話】

第1話 かけはし
まだ夏は遠いけど、紫外線の強くなる季節。
首元に日焼け止めクリームを丹念に塗り込んでいると、「希生先生、希生先生」と庭から優しい声で呼ばれて慌てて振り返った。

「ヨウちゃん、そんなところにいたの。びっくりさせないで」
「希生先生、いそがんと学校に遅れるよぉー」

私はふぅと息を吐き、手の甲にもクリームをたっぷり塗り込んだ。
「サチ祖母ちゃんの声マネするのいい加減やめて欲しいわ。

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ぐりとぐらのカステラを探しに、絵本の世界を散歩する。

ぐりとぐらのカステラを探しに、絵本の世界を散歩する。

本棚から取り出したる1冊の本。

絵本「ぐりとぐら」のすべて。

と銘打たれたこちらの本が、今回のお散歩のガイドブックである。

ぐりとぐらのカステラ

子どもの頃、もしくは子どもと一緒に、はたまた大人になってから、耳にしたことはないだろうか。

〝ぼくらのなまえは ぐりとぐら
 このよで いちばん すきなのは
 おりょうりすること たべること〟

というあの歌を。
作者の中川李枝子さんは、節をつ

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元町中華街癒やしの薬膳飯店   第1話【創作大賞2024漫画原作部門応募作】

元町中華街癒やしの薬膳飯店 第1話【創作大賞2024漫画原作部門応募作】



【あらすじ】

 売れない漫画家の進藤昇は、祖父に言われ元町中華街の細い裏道にある「薬膳飯店 シャンチー」の住み込みのオーナーになる。

 そこは、明るく活発な可愛い女子、明々と、無口だけど料理の腕は確かな小龍の姉弟が店員で、客の体や心の不調を読み取り、個々に合わせた薬膳料理を出す中華屋だった。

 そして実は明々と小龍は、何十年たっても老けない、不死身のキョンシーなのだった。

 心や体の不

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【小説】僕らは二度目でようやく恋をする(一)

【小説】僕らは二度目でようやく恋をする(一)

一、 ジーーっと虫の鳴く声が聞こえるのを合図に少し風が吹いた。

 金色と銀色の間のような色の髪がふわっと浮かび上がると、夜空に溶け込んで天の川のようであった。

 彼女は右手を空に高く上げ、ゆっくりと下す。くるりと一回転をし、おじぎのように頭を下げると、少し長めの袖が生き物のように後を追った。

 神秘的なその空気の中、すっと伸びたつま先は誰もが見惚れるほど美しい。誰に見せるわけでもないが、華麗

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