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短歌

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57577のふるえ
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#創作

連作短歌7:「アーリー・ブルー」

連作短歌7:「アーリー・ブルー」

産声をいつ上げたっていい たとえばおのれが産まれたいとき

どこまでも走っても走っても終わらない 朝も夜も永遠じゃない

爪が伸びることが許せなくてもいい 生きたい気持ちがあればいい

塩に触れとけゆくおのれをただ見つめ 梅雨に死ねるならそれでもいい

雨粒が肌に触れる冷たさは冬より命のぬるさがある

風鈴の「リン」の音だけを拾ったら硬くて冷たくて孤独だった

雲太陽雲雲雲雲 青葉闇 ひとつ

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連作短歌6:「まあ別に春でもいいけど」

連作短歌6:「まあ別に春でもいいけど」

穴開けてピアスはつけなかった 春見えるはずだった星は眠った

じゃがいもを潰すくらいの握力で人は潰えて生ゴミの中

炭酸の抜けたサイダーというものはどうしてこうも甘くて邪魔で

梅と桃、桜の区別がつかなくて平等主義者を標榜するクソ

桜が咲いてしまったら春になり春になったら なったら な

幸先が不安だとしても花は咲く 咲いてこぼれて土になる人

連作短歌2:「今ここだけが四季」

連作短歌2:「今ここだけが四季」

「日焼けだけ痛む夏のことどう思う?」空全部眠る汗だけが光る

「かたつむりずっと家がついてまわる」エアコンはまだ使えない まだ

「花火って音を出す針みたいだね」きみの痛みきみだけの傷

「花弁だけかがやく花だけあってほしい」ヒトだけが持つ鮮やかな欲

「ひびきれが映える指!ほら一等星!」ハンドクリームは手だけを癒す

「飽きがこないのが秋なわけがないでしょう」焼き芋銀杏いちょうの並木

「死体に

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連作短歌4:「月のまなざしはるか先」

連作短歌4:「月のまなざしはるか先」

月はたぶんひとりでいるから月でありたくさんあったら愛せなかった

月はたぶん鏡とか見たがらなくてだから宇宙にいたいのでしょう

月はたぶん丸くはないかもしれない でも それでもきみを愛しているよ

月はたぶんすっぽんに謝り続けているけれど祈りの先は骨

人の目を潰さないきみを愛してる 愛の言葉は洒落じゃないんだ

連作短歌3:「ぬかるみに浸す顔」

連作短歌3:「ぬかるみに浸す顔」

泥団子握り潰してこれが愛、これも愛だ、きみが好きだ

ぴかぴかの魂わたしが磨いてる手垢が離れてきえてゆく

振り向かない 振り向けない でも愛してる ふつうのことをしているだけだ

肉 骨 脳 ヒトの主成分がなくたって きみはきみ だけど わたしはわたし

あの世まで連れてはゆけない 焼かれたらきみは砂になる人魚姫

愛するということ愛されないということ 人がひとりであるということ

まっすぐな光

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日記27:「短歌を詠んでみる」

日記27:「短歌を詠んでみる」

昨晩から唐突に短歌を詠んでいる。
細かい決まりごとをまったく知らず、どころか細かくない部分もそもそも知らない可能性もある。私が把握しているのは57577のリズムで組んで季語は必要ないという、これが四国ゲームだったら速攻で爆発していること請け合いだというレベルだ。注釈すると、四国ゲームとは西尾維新の長編小説である「伝説シリーズ」に登場する出来事で、魔法少女が究極魔法を求めて行われる実験である。なにを

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連作短歌1:「ワンナイト・ムーン・ナイト」

連作短歌1:「ワンナイト・ムーン・ナイト」

月に逢う月を見ている月が指すうなばらの背の道 ほらさざなみ

ああ砂浜きみが記させた足跡が私のもとから遠のいて

あおぐろの水面に利き足浸したらどこまでもゆけるどこまでもゆこう

離島とは離れた島と書いて離島 夜空とつま先ふちがにじんで

サン・アンド・ムーンと子どもが口にした 笑顔のまるみはあたまのうえに

宇宙ならどこまでもいける気がしても地球はどこまでも球球球

しらなみがぶくぶくふくれて弾

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