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ココがポイント!「売らない店×ポップアップストア」の歩き方&ブランドに支持される理由

ここ数年、「体験」を提供することを目的とした実店舗「体験型ストア」や「ポップアップストア」が小売業界で注目を集めており、私たちのnoteでも海外のトレンド情報や有識者へのインタビュー記事を通じて様々な情報を発信してきました。

この度、国内で売らない店のパイオニア的存在であるb8ta Japanが、期間限定のポップアップストア「b8ta Pop-up Nagoya」を開催するということで、私たち東芝テック CVC note編集チームは体験型ストアとポップアップストアを同時に味わえる絶好の機会と思い、足を運んでみることにしました。
まだ体験型ストアに行ったことがない人や“売らない店”とはどんな店舗なのか気になっている人にとって、私たちのレポートが参考になれば嬉しいです。
そして後半では、b8ta Japan代表取締役 北川卓司氏にポップアップストアを開催して得られた学びやこれからの展望などをお聞きしたので、こちらも合わせてお届けします。

★ふと訪れたポップアップストアで、思わぬ発見や驚きがある!?

今回b8ta Japanが開催した「b8ta Pop-up Store 2022」は、2022年8〜10月にわたって、ブランド・メーカー様からイベント開催を望む声が多かった3都道府県を期間限定店舗として巡業する試みとのこと。大阪府の梅田、福岡県の天神に続き、最終地点として10月に愛知県の名古屋で初開催されたのが「b8ta Pop-up Nagoya」です。

展示場所は名古屋駅前のJRゲートタワー1階イベントスペース。通勤・通学などで多くの人が往来する開放的なエリアで、合計17ブランドの商品やサービスを体験できる空間が展開されていました。

正面入り口付近のb8taロゴ型のカウンターには、言葉をメロディに乗せて会話するロボット「Charlie」や、本格ビールサーバーの「THE DRAFTERS」、頑丈でフィット感・防水性・耐久性に優れたバッグ「DAILY BACKPACK」、美しいデザインのタイプライター「QWERKYWRITER®️」など、個性的な製品が並びます。

実はこの展示、あえてカテゴリ別に陳列しないことで、思わぬ発見や驚きが生まれ、来店客により興味を持っていただけるという効果があるようです。

奥のスペースに進むと、電気自動車の「日産サクラ」、小松製作所の電動マイクロショベル「PC01E-1」など大型の製品が並ぶほか、VR空間で野球のバッティングの傾向をデータ可視化・分析するNTTデータの「V-BALLER」があり、実際にVRヘッドセットを着けてVR空間でのバッティングを体験できます。

各製品のブースにはタブレットが設置されており、紹介動画が再生されています。詳しい製品情報や価格、イメージ画像なども自由に閲覧できるので、「b8taテスター(店舗スタッフ)さんに聞くほどではないけど、ちょっと気になる」という時に効率よくチェックできる点が良いと思いました。

このように、気になる製品を触ってみたり、タブレットで詳しく調べてみたり、b8taテスターに話を聞いたりしているうちに、気がつけば時間を忘れて新しい製品との出会いを楽しんでいました。そして、体験型ストアやポップアップストアの魅力もだんだんと分かってきたので、発見したことをシェアしたいと思います。

★b8ta Japanポップアップストアの“歩き方”をご提案~こんな楽しみ方はいかがでしょうか?

「体験」ができるポップアップストアといっても、「普通の店舗と何が違うの?」「どうすればいいの?」と思う方もいるのではないでしょうか。そこで、ここからはb8ta Japanのポップアップストア体験を通して発見した、楽しむポイントをご紹介します。

  • その①:効率的に体験したい人ほど、b8taテスター(店舗スタッフ)に声をかけて
    空いた時間がある時やちょっと気になった時に、気軽にフラっと立ち寄れるのがポップアップストアの魅力。名古屋の会場は駅前ということもあり、足を止める時間がない、話を聞いていると時間がかかりそう、と思って立ち去ってしまった人もいると思います。でも、もしも気になる製品があるならば、そんな時こそ、b8ta テスターさんに声をかけると良いと思います。どのテスターさんでもすべての商品のことを熟知していて、こちらが気になることに何でも答えてくれるので、自分の時間に合わせて必要な情報だけを聞くことができます。

    声をかけることを躊躇してしまう人もいると思いますが、b8taの場合は「接客」も魅力的な体験の一つだと感じました。話を聞いてみると、b8ta テスターさんは体験型ストアに特化した専用のトレーナーのもとで、接客に関するトレーニングを受けているようです。

    以前、noteの有識者インタビューでも、ポップアップストアを展開する際に欠かせないのが「商品知識のある接客」であり、実際にお客さんを「おもてなしする思想」を体現しているのがb8taである、というお話がありました。b8taの接客、ぜひ体験してみてください。

  • その②:メーカーの商品企画の方と会えるかも!?
    今回のポップアップストアではb8taテスターだけでなく、メーカーの製品企画や開発に携わっている方も店頭に立って接客をしていました。その中でも特に印象的だったのが、ビールサーバーの出店ブースで接客をされていたアサヒビールの方です。この方はビールサーバーの製品開発に携わっている方で、ふだん店頭に立つことはないそうです。だからこそ、「自分が携わったプロダクトを、実際に試していただいて、感想や意見を直接聞ける機会はすごく新鮮です」と、ポップアップストアならではの魅力を教えてくれました。

    これはユーザー目線でも同じで、イチ消費者として製品の開発担当者と直接話せる機会はなかなかないですし、もしかすると自分の意見が製品改良に反映されるかもしれないと思うと、ここぞとばかりに自分が理想とするビールサーバーについて語ってしまいました。

  • その③:どんなに試しても「買わなきゃ」というプレッシャーがない、やさしい体験
    サロンクオリティの美容家電「デンキバリブラシ®︎2.0 +ボディ」のブースを興味津々で眺めていると、b8taテスターさんが「こんにちは!」と声をかけてくれたので、いろいろと話を聞いてみました。すると、製品の特徴や他製品との違い、使い方などの基本情報だけでなく、充電時間はどのくらいか?痛くないのか?男性のユーザーはどんな用途で使っているのか?なぜこの金額なのか?といったこちらの質問にもスラスラと答えてくれます。

    テスターさんの(あくまでも個人的な)意見や使ってみた感想も忖度なく教えてくれるので、こちらも気を遣わずに率直な感想や意見を伝えやすいと感じました。お店で製品を試すとつい買ってしまいがちな人や、試したからには買わないと申し訳ない、断りにくいと思ってしまう人にとっては、「売ることを主目的としない」体験型ストアはありがたい仕組みだと思いました。実際に買いたいと思ってもこの場で購入することはできず、タブレットの二次元バーコードから購入可能なウェブサイトなどにアクセスする必要があります。そのような仕組みが確立されているからこそ、気兼ねなく、存分に製品を試すことができるし、テスターさんとも安心して会話することができました。

  • 他にも、フジッコの大豆ライス「Beanus ダイズライス」はプレーン味だけでなく「高菜チャーハン」や「きのこクリームリゾット」といった色んな種類の味を試食できますし、バッグ「DAILY BACKPACK」は実際に自分の持ち物を入れてサイズ感やフィット感を存分にチェックすることができます。どんなに試してもその場で買う必要はないので、気になるものはとことん試してみましょう!

  • その④:ポップアップストアならではの体験を楽しむ
    ポップアップストアでは限定キャンペーンや特別な体験を提供しているケースがあります。例えば今回ですと、会場入り口に大きなデジタルサイネージが設置されており、ここに表示されている二次元バーコードをスマートフォンで読み込んで特設ページにアクセスすると、オリジナルグッズがもらえるスタンプラリーに参加できました。

    店内の製品を体験したあと、各製品のブースに設置されている二次元バーコードから簡単なアンケートに答えるだけでスタンプが獲得でき、スタンプ数に応じてノベルティをもらえます。アンケートと聞くと記入するのが面倒に感じてしまいますが、スマホですぐに入力できて、操作性もスムーズだったので、これならストレスなくスタンプを集められます。

    また、環境にやさしい軽自動車として注目を集める電気自動車(EV)「日産サクラ」は、常設店舗だと試乗したい方にはメーカー本社やディーラーさんをご案内しているそうなのですが、名古屋では近くの駐車場に試乗車を用意し、その場で試乗予約ができるとのことでした。このように期間限定のポップアップストアならではの体験を楽しむのもおすすめです。

  • その⑤:展示商品は一期一会
    期間限定のポップアップストアだからこそ、気になってもう一度体験したいと思って数日後に再訪しても、イベントが終了してしまうとお店はありません。

    だからこそ、もしその場で気になる商品があったら、ぜひ他の情報やオンライン販売の情報をゲットしてください!分からない時は、b8taテスターさんに聞くと親切に案内してくれますよ。

    そして、すでにお伝えしたとおり、自分のペース・時間に合わせて自由に体験できるので、くれぐれも時間配分に気を付けてください。ハマってしまうとうっかり時間が過ぎてしまうかもしれません。

ご参考になりましたでしょうか?

★ポップアップストアでの気づきが、出品ブランド・メーカーへの価値提供につながる

「b8ta Pop-up Store 2022」は多くの取材に取り上げられるなど、3拠点でのポップアップストアを通して、より多くの方がb8ta Japanのことを知り、体験型ストアに触れる良い機会になったと思います。エンドユーザーはもちろんのこと、出品するブランド・メーカーからの反応や反響も大きかったのではないでしょうか。

b8ta Japanは今回のポップアップストアを、認知拡大というだけではなく常設店舗拡大のためのテストマーケティングとしても位置付けているようです。同社にとってどのような学びがあり、それが今後どのような強みにつながるのか、b8ta Japan代表取締役 北川氏に伺った内容からポイントをまとめました。

  • 立地を最大限に活かした集客施策
    イベント集客において「立地をどう活かすのか?」はとても大事なポイント。これは数をこなしてこそ得られるノウハウだと言います。今回は3拠点、様々な場所で実施した結果、例えば、お客さんの「買い物の場所」なのか、それとも「移動する途中の場所」なのか?雨など天気の影響を受ける場所か?近くで他のイベントが行われているか?出入り口が4方向など複数作れるのか、ほぼ1か所しかないのか?など、環境に応じて集客施策を調整することで「立地を最大限に活かした店舗展開ができることを体感した”とのこと。

  • ブランドの世界観を意識した展示
    体験型ストアは、ブランド・メーカーの製品を「理想的な形」でユーザーに体験してもらうことが重要だと言われています。どのような点を工夫されているのか伺ったところ、「前回のポップアップストア開催時の学びを生かして、フレキシブルに展示できる棚を開発しました。それにより今回は電気自動車から大豆ライスまで幅広いジャンルの製品が出品する中、各会場で展示フォーマットを同じにするのは難しかったのですが、魅力的に展示するための視認性の高い置き方や、ブランドの世界観を伝えられるような置き方を実現することができたと思っています」とのことでした。

  • ポップアップストアならではのフィードバックのしくみ
    b8ta Japanの常設店舗は店内のAIカメラで来店客の滞在時間などのデータを収集していますが、今回はタブレット内蔵カメラによるデータ収集にチャレンジ。「問題なくトラッキングができて、タイムラグなく分析結果をメーカーにフィードバックできた」と言います。また、b8taテスターが接客を通してお客様から頂いた意見や感想もデータ化し、メーカーにフィードバックしているようです。

このような「b8ta Pop-up Store 2022」での経験から次回のポップアップストア展開に向けた知見やノウハウが得られたと、プロジェクトに対する手応えをお話しいただきました。実際、出品されたメーカーからの反応も好評で、メディアや他メーカーからの問い合わせも増えているようです。

★「ポップアップストアだから学べる」b8ta Japan今後の展開に期待!

最後に、今回の取り組みも踏まえて、今後チャレンジしていきたいことを北川氏に教えていただきました。

「私たちは2025年までに常設店舗を8〜10店舗に拡大することを目指しているので、そこに向けたトライアルとしてポップアップストアを今後も展開していきたいと考えています。同時にアジアへの進出も検討しているので、海外でのトライアルにも挑戦していきたいです。

また、当社の新事業として、売ることを主目的にしない店舗を商業施設や実店舗が独自に開業、導入、運営できるよう支援する「by b8ta」をスタートしました。by b8taは「ソフトウェア」「ハードウェア」「什器のデザイン、制作支援、店舗レイアウト」など8つの項目から構成されるサービスで、ソフトローンチ第1弾として「売らないトレーニング」の外販をスタートし、年末にはソフトウェアのローンチも予定しています。この事業をいかに早く拡大していけるかが、我々としての最も大きなチャレンジになると捉えています。

新事業の展開も含めて、b8ta Japanのビジネスモデルが小売業界の新風になることを楽しみにしています。

東芝テックは2022年4月より、b8ta Japanに出資させていただき、同社が持つノウハウと東芝テックが持つ店舗向けのソリューション販売網、保守網などのケイパビリティを掛け合わせることで、両社で新たな店舗フォーマットの拡大に寄与していきたいと考えています。

今後もb8ta Japanの新たなチャレンジに向けて、弊社の持つネットワークやアセットを活用し、さらなる成長をご支援してまいります。


【b8taとは】
b8taは2015年に体験型ストアを米サンフランシスコ近郊のパロアルトでオープン。Retail as a Serviceのパイオニアとして約6年間新しいソリューションを先導。ミッションとして「リテールを通じて人々に“新たな発見”をもたらす(Retail Designed for Discovery.)」を掲げています。実店舗への出品をまるでオンライン広告を掲載するのと同じくらい手軽なものにし、消費者に世界中のイノベーティブな製品を発見、体験、購入できる場を提供します。

なおb8ta japanは、米国b8taから独立した法人で日本での事業展開を行っています。

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