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Dusty Storeroom

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オリジナルの小説を集めたマガジンです。意味は「埃っぽい書庫」。日の当たらない場所でも、文章を読んで楽しめるようにという思いと、あまり明るい作風のものが多くないことから名づけました…
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2016年2月の記事一覧

L'étoile brillante -l'autre côté-

二人一緒にいなきゃ成り立たない。

そんな状況を作ってしまうことは避けたかった。

足場が崩れることで、立つことすらままならなくなるのを嫌がったからだ。

心のなかの、1つの答えを悟られたくなかった。

誰でも弱いところはある。そう言っても

自分で其れを受け止めることと、君に其れを見せるのは別の話だ。

背中合わせで過ごす時間は、常に目を見られていると何か悟られそうだから。

通わせようとする心

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L'étoile brillante

夜を照らす星。あなたの目に写した星。

私の近くで不安をかき消してくれる星。

背中合わせで過ごすことさえある

あなたとの時間は、目を合わせるだけで有耶無耶が解れる事もある。

数多ある選択肢の中、一つの感情と答えという

絶対的な拠り所を求めて、手元の糸と目の中の本意を手繰る。

其の行為は自分でも意識しない内に、

どれだけ時間をかけて心を通わせても、

どれだけ覚悟を決めて唇を重ねても、

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Forget-me-not

散り際は常に誰かの涙を呼ぶ。

この劇場が、長い歴史に幕を下ろす。

そう言った時、多くの人がご多聞に漏れず終幕を惜しんだ。

自分が思っていた以上に、多くの思い入れやドラマが生まれていたんだと言う

場面を見せつけられた時には、コレでよかったのだと安心すら覚えた。

学生時代、寝食も忘れ熱を上げた演劇という様式に対し、

自分が還元できることを考えた結果、

自分が演者として、主催として一番近い

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Into Deep Blue

天から射した光が揺れる。

潮の流れに揺さぶられる草は碧を彩る。

口から漏れた気泡が上昇し、水面に行き着く。

目の前を見たこともない生き物たちが駆け巡る。

普段息の出来無い水の中で、生を感じながら命の多様性と触れ合うのは、

出会いと楽しさのギフトボックスだ。

普段、地上から見る碧とは異なる様相の其れが、心と目を惹く。

嫌に冷たく、鉄を錆びさせる潮風が体を通り抜けることもなく、

全身水

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S.S.F. (Sun Shines Forever)

S.S.F. (Sun Shines Forever)

冷たい風を切って、足早に家路を辿る。

足を進めながら今日一日の出来事を、脳内で巡らせていく。

訪問先での取引の話、企画の進捗、昼食の中身、明日の業務リスト。

こうして社会に組み込まれているという輪郭を指でなぞりながら、

足形の残るほど強い抑圧と、肌を差す冷たさの刺激と、

腸を煮えくり返らせる憤怒とを抱えて、1日24時間という予算を使い果たす。

降りかかってくる猛吹雪に晒されながら、時折

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S.I.RE.N.(Stars Illuminate in Relentless Night)

S.I.RE.N.(Stars Illuminate in Relentless Night)

一粒の星灯り。

それは、地球上一帯を照らし出すには心許なくとも、

夜という限られた時でしか存在感を発揮できなくとも、

その場の主役となりうる。

ある日は子どもたちに願いを託される。

小学生の頃に短冊に描いた「おもしろいことをする!」は

その後テレビに釘付けになり、流行していたお笑い芸人のモノマネをして

瞬く間にクラスの人気者になったという事で叶った。

またある時は愛しあう二人の浪漫

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