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短編小説

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普段noteでは日記ばかり書き散らかしていますが、時折人様の企画に乗っかって短編小説を書くようになりました。創作って、恥ずかしくて楽しい。
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#小説

【小説】もがいた足跡を照らして

【小説】もがいた足跡を照らして

無我夢中で雪玉を投げていた。
丸めては投げ、丸めては投げるモーションはまるで、重く粘ついた暗い沼からもがき出ようとしているみたいで。
どちらをしているのか、自分でもよくわからなくなってきた。

* * *

「なあ、雪積もってる」
しゅうちゃんが私のノートの端をつついて、言った。
「ふーん」
窓にかかるブラインドを少し上げて、私はまたノートに目を落とした。
「集中できてないんだろ」
彼はノート

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【小説】栃栗毛のペガサス

【小説】栃栗毛のペガサス

事の発端は、狸とアマビエの喧嘩だった。
狸は最近アマビエがやっている動画サイトに度々出演し、人気ボーカロイドやアニメのキャラクターに化けてさまざまな歌を歌っていた。
その声の野太さと音痴な歌声に「見た目とのギャップがウケる」と固定のファンがついたが、次第に飽きられてしまうであろうことをアマビエは見越しているらしい。

「おめえもそろそろさ、なんか新しいことやろうよ。このまんまじゃ飽きられちまうから

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