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老父と娘の"ちょっといい時間"

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認知症の実父と娘の"ちょっといい時間"を綴ったエッセイ。介護の中には、幸せがいっぱいでした。
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#父

父と迎える7回目の節分

父と迎える7回目の節分

私「今日は節分だでね。歳の数だけお豆食べてね^ ^」

父「そんなの関係ねぇや」

テレビでは、各地の節分の様子が紹介されています。動物園で、恵方巻きや豆に見立てたエサが、動物たちにプレゼントされた様子を見て、父がククッと笑いました。

私「お父さんは何歳ですか?」

去年の投稿を見ると、最初は70歳から始まり、80歳→90歳と言い直したようです。

今年は、何て言うかな…?

少し考えると、私の

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お風呂、それは長い長い修行のような道のり②

お風呂、それは長い長い修行のような道のり②

※これは、「お風呂、それは長い長い修行のような道のり①」のつづきです。まだの方は、こちらからどうぞ↓

こうしてやっと、父の入浴がスタート。

服を脱いで裸になると、父は体を流し、粉末の入浴剤を風呂に投入。そして、まずはゆっくりお風呂につかる。

この時、身体が温まっていないと、いつも以上に長~く風呂につかってしまうか、さらにはそれでも温かいと感じられなくて、風呂の温度設定を「ピッ!」とあげてしま

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父を抱きしめる

父を抱きしめる

コロナの到来により、ハグの文化は、世界中で当面の間お預けだが、近頃は日本でも、再会や別れなど様々な場で、友人とハグすることは珍しくない。

8年程前、私はふと

「両親とハグできるだろうか」

と、思った。

当時両親は、あちこちが歳相応に錆びついてはいるものの、おかげ様で、まぁなんとか普通に元気に暮らしています、という状態だった。それでも、70代後半という年齢を思えば、そう遠くはない未来に必ず別

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父と「まんま」でランチ

父と「まんま」でランチ

 先週、老父を総合病院に連れて行った。検査と診察で長くかかると思っていたが、思いのほか早く終わったので、ランチに出かけることにした。
認知症生活は、穏やかで単調な毎日と、気持ちが沈む期間の繰り返し。折を見ては、父を連れだして刺激を与えている。

 私がその店に初めて行ったのは、2週間前のこと。友人に声をかけられ参加した、「震災支援ネットワーク・被災移住者交流イベント」の会場が”Kumi's L

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干し柿の腕

干し柿の腕

 先日、持病の定期健診のため、老父を総合病院へ連れて行った。検査は昼過ぎからで、食事はとらずに来院。長い時間はかからないので、検査を終えたら、父と一緒に遅い昼食を食べようと、私も食べずに出かけた。

 父の体にはあまりよくないが、父が好きな醤油ラーメンを食べに行こうか、それとも早く帰宅した方が父は気楽かな、などと考えながら検査が終わるのを待った。暫くすると、看護師だけが私の元へやって来た。

「今

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甘栗

甘栗

縄手通り商店街にある越中屋さん(フルーツ専門店)の天津甘栗、鉱泉せんべい、市田柿の干し柿、落花生。

わが家で、ほとんどお正月にしか買わない可能性が高い定番のお茶菓子です。

毎年、お正月に甘栗を剥いていると思い出すのが、私が幼い頃、両親が2人がかりでせっせと栗を剥き、小さい私が1人でパクパク食べていたと話しながら、クスクス笑う亡母の姿です。

今年のお正月も、早速、父の手が甘栗に伸びました。不器

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