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「ニンジャキャンパス」 003 あんね

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003 あんね


「うひょ〜、やっぱ放研ほうけんのみたらし団子は最高だねえ!!」
「ちょっと、あんね!売り物なんだから食べすぎないでよ!」
「味見担当ですので!学祭の屋台っていっても、ちゃんと美味しくないと売れないからね!」

あたしは佐々木あんね。C大学の文学部2年生。

今日は待ちに待った大学祭だ。うちのサークル - 放送研究会では、毎年みたらし団子の屋台を出している。あたしはお祭りごとが大好きだから、こういう時は先頭になって騒ぐタイプだ。

こんなあたしだけど、実は「裏社会」と呼ばれるところで、いろいろとヤバいことをやっている。
そう、誰にも言えないんだけど、あたしは「ニンジャ」で、「ニンジュツ」っていう特殊パワーを使えるんだ。

「うん、うまうま〜!バクバクいけちゃうね!」
「あんねってば!ほんとに食べ過ぎじゃない?ちょっと見せて!
……ま、まあ、まだあるからいいけど……」
「よっしゃあ!じゃあ売り子で回ってくるね!(もうちょっとつまみ食いしようっと)」

秋のキャンパスは紅葉こうようがキレイだ。
C大は、やれ田舎だのやれ山奥だのって言われてるけど、あたしはこのぐらい自然に囲まれている方が好き。
……あれ?校舎のこっち側にもこんなに桜の木あったっけ?
マジ景色が大学じゃないよw

「桜は春」ってみんな思うかもだけど、あたしは桜紅葉さくらもみじのほうが好きだ。特に今年は、めちゃくちゃ色鮮やかでボリュームがあって……
まるでパワースポットだよ、ここは!

「あ!あんね先輩ッ!ちょっとォ!聞いてくださいよ!!」

まるで狐の鳴き声のような(聞いたことないけど)カン高い声が、あたしを呼び止めた。

「あれウカちゃん、どこにいた?放研の仕事、ちゃんとやってる?」
「あ、私、けんサーしてて、アメフト同好会のマネージャーもやってるんで。今日はそっちでタピオカミルクティー売ってて……」

ウカちゃんは放送研究会の後輩。ちょっとわがままというか自己中なところがある。でも可愛い💕

「なんですけどォ!」
「けど?」
「さっき売り子で回ってた時、ぶつかって派手にこぼしちゃって!最悪ゥ!今日売り上げゼロっすよ、もう!」

ウカちゃんの後ろに「俺のタピオカミルクティー」という看板が見えた。
なるほど、アメフトのユニフォームを着たガタイのいい男子たちが何やら揉めている。

「ウカちゃん、落ち着いてってば。ねえ、ちょっと見てもいい……
へえ〜、大鍋に入れて売ってたの?豪快だね」
「ミルクティはペットボトルでいっぱい買ってあるんですけどォ、肝心のタピオカが……」

<チョンチョン>

「あ、でも結構残ってるよ!お鍋の底に、ほら」
「……あれ!?本当だ!!何でなんで!?……じゃあミルクティ足せばまだいけるかな?」
「いけるんじゃない」

あたしの「ニンジュツ」は「コピー(物)」。

増やしたいものをチョンチョン、と突くだけで、コピーを作って増やすことができる。
団子とか、タピオカとか、グミとか、キャンディとか……小さいものだったらどんどん増やせる。

見つからないように術を使うのが一番大変なんだけど、それもだいぶ上手くなった。
文学部で心理学を専攻してるんだけど、色々応用できるところがあるんだよね、心の隙を突くっていう……いやホントに!

大学で「実学じつがく」を学んでるって感じだわw

でも、今のところ、小さい物- お菓子とか文房具ぐらいしか「ニンジュツ」が効かない。
それも気分によって出来たり出来なかったり……前に500円玉をコピーしようとしたんだけど、急に胸が苦しくなって出来なかった。

10円玉も、1円玉さえも出来なかった──なんか心のブレーキが関係してくるみたい。罪悪感だろうなあ。

……でもそれが出来ちゃうと、逆にヤバイよなあ。

これから先「裏社会」で自分の「ニンジュツ」が一体どんなふうに使われていくのか……考えるとちょっと憂鬱になってくる。

──おっと!みたらし団子を売らねば!
売って売って売りまくって、部費を稼がねくちゃね。

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(その夜 自宅の部屋 パソコンのミーティングアプリにひとりの女性が映っている)

「あんねちゃん、今月は97ポイントね」
「はい〜……最近100いかないですね涙」

オトさんはあたしたちのボスだ。
目が大きくて、口はおちょぼ口というか小さめで、鼻はそれほど高くないけど整っている、女優の高畑たかはた充希みつきに似ていてとっても可愛い女の子だ。
ま、あたしには負けるけどw

それにオンラインでしか会ってないし、もちろんバーチャルだろう。

「あのね、日本のお札、紙幣がね、今度デザイン変えるんだって」
「!!!!」
「でさ、あんねちゃん、『コピー(物)』の練度のほうは──」
「あやややや〜、オトさん、あたし最近体調悪くって…この前、言われたようにまず500円玉でやったんですけどお……そのお……コツがつかめないっていうか、何ていうか……」
「あれ、あんねちゃん、勘違いしないで。お札を『コピー(物)』で増やせ、なんて言うつもりないよ。」
「あ!そ、そ、そうですよね!いやだあ、あたしったらw」
「wwww」
「wwww(汗)」
「wwwwwww──国立印刷局
「!!!???」
「国立印刷局の工場設備- つまり機械だけでいいから、まるごとコピーできる? ガワはどっか、樹海あたりにでも作るから」
「じょ、じょ、冗談ですよね!?」
「────────そ、冗談ww」
「wwwwww(汗)」

オトさんは冗談か本気か分からないときがよくある。
だけど……今のはもしかしたら「ガーナ計画」に関係しているのかな……?
「ニンジャ」たちのあいだでは、近く 組織がとんでもない計画を実行するんじゃないかという噂で持ちきりだ。

「でもそろそろ大きいものもコピーして欲しいんだよねえ」
「鋭意訓練中であります!(ビシッ)」
「やっぱ難しいよね、私も試してみたけど普通の精神状態だと出来ないわ……」
「え??」
「大学のサクラ、試しに5本ぐらいコピーしてみたんだけどね、色が濃くなりすぎちゃったわ。葉っぱもなんだか大きめになっちゃったし」
「!!!!」
「逆にキレイでよかったかもだけど笑 誰も全然気づいてないっぽかったからw 人間ってさ、コピーとか模倣品に慣れすぎちゃってるよねw」

(つづく)

第一話はこちらから↓
#01 コハク
https://note.com/trec001/n/nec99ec4e5432

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佐々木あんね C大学 文学部心理学科2年
お調子者 お祭り好き 甘いもの好き
後輩の面倒見がいい
【ニンジュツ】「コピー(物)」
増やしたい物を突いて、コピーを作る

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<登場人物とエピソード>

オト 「組織」のボス 経歴不明

【BEATWAVE】
大神コハク C大学 商学部金融学科2年
https://note.com/trec001/n/nec99ec4e5432
五條咲耶 C大学 法学部政治学科2年
https://note.com/trec001/n/ncda10af219c7
高見隼人 C大学 経済学部経済学科2年
https://note.com/trec001/n/n1ae615e16433
最上ひな C大学 総合政策学部政策学科2年
https://note.com/trec001/n/nd6f832fe48a4
今井風太 C大学 経営学部経営学科1年
https://note.com/trec001/n/na561974d8f62

【放送研究会】
佐々木あんね C大学 文学部心理学科2年
https://note.com/trec001/n/n9c5e05ed4bc4
森 ウカ C大学 情報学部情報学科1年
https://note.com/trec001/n/n9c5e05ed4bc4
葛城 結 C大学 理工学部生命科学科1年
https://note.com/trec001/n/n67c2be17669c

岡田ダン C大学 情報学部教授
https://note.com/trec001/n/nc5751b386939

【DNTFMT(ドントフォーマット)】
https://note.com/trec001/n/nbe0dddb67f3e
Vocal Torika
Guitar 弁天
Bass カルマ
Drums コンガ

※この小説は『CryptoNinja』(https://cryptoninja.space/)の二次創作です。

#500円玉 #学園祭 #屋台 #団子  #俺のタピオカミルクティー

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