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Fの話

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二次~五次創作の廃棄場。こんなものに意味とか価値とかはない
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初恋

友達の誕生日を祝して。

――。

――いつの間にか見上げていたぎらつく日差しに根負けして視線を元に戻すと、そこに広がっているエメラルドの海原、真珠のような砂浜。

 立ち並ぶ露店を物色する人々に賑わう雑踏をかきわけ歩みを進める。普段使いの冬物のジャケットは、いつの間にかアロハシャツ。

 やがて現れた急な階段を踏みしめるように歩く。この先に何かがある、予感に従って一段、また一段と踏み越える。

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Silhoutte( Swan Lake "Returns" part-III )

※五次創作です。二次創作、作品クロスオーバー等が苦手な方は申し訳ございませんが、ご理解の程、宜しくお願い致します。

前回 #5

「お前、この……脅かすんじゃねえよ!」
「ハハハ、セリフと表情が一致していませんよ、イヌイ」
「……るっせーな」

 破顔談笑する男二人。

「あなたやアーチャー、バーサーカーと合流するつもりが随分と手間取ってしまいましたが……なに、これでどうにかなるでしょう」
「あ

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影法師、光を背に伸びる

むかーし書いたお話です。せっかくなのでこちらに再掲

――。

 スカサハは影の国を統べる女王であり、しかしスカサハ=スカディは世界を統べた女神でもあった。

「これ、キャスターと呼ぶのはよさぬか。お前が私に仕えているのであり、私こそお前の主なのだからな」

 マスター。召喚者。魔術師。人間。生命……エトセトラ。彼女の手を取ったこの男を解釈する上で用意できるいかなる視点を用いても、神霊である己を尺

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For The Love Of You( Swan Lake "Returns"part-II )

※五次創作です。二次創作、作品クロスオーバー等が苦手な方は申し訳ございませんが、ご理解の程、宜しくお願い致します。

――ジル・ド・レェは罪を犯した。少年の命を己の夢の薪に変え、ただただ聖女に尽くす己に溺れ。

――ジル・ド・レェは罪を犯した。少年の夢を己の命の薪に変え、ただただ聖女に尽くす己に溺れ。

ジル・ド・レェは――。

――。

「ジャンヌ、ダルク……!」
「グヒャ、ウヒャ、ハハハハハ!

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Silly ( Swan Lake "Returns" part-I )

※五次創作です。二次創作、作品クロスオーバー等が苦手な方は申し訳ございませんが、ご理解の程、宜しくお願い致します。

前回 #3

――。

 巧は己の所属するカルデアの外郭、己とスタッフたちのこれまでの道筋、そしてセラフィックスの異常調査に至るまでの大まかな経緯と、BBの介入について。
 メルトリリスはBBの関与をきっかけに巧を拾おうと判断したこと、そもそもの自分とBBの関係、さらに遡り因縁の基

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新雪を濁す夢の名残

――フォウ、キュウ。フォーウフォウ。

 馴染み深い鳴き声と、鼻頭を舐められるしっとりした感覚。

――先輩?

 目を覚ますと、さかさまの少女が己を覗き込んでいた。

――。

「質問よろしいでしょうか、先輩」
「……なんだよ」
「ふー……お休みのようでしたが、通路で眠る理由が……クク、ちょっと。硬い床でないと眠れない性質なのですか?」

 天地逆さの少女は硬い表情を作ろうとしているものの、ぴく

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バーン・トゥ・シンダー! 4

「――なんのつもりだよ」

 管制室の扉を開く直前で、巧は不意に振り向いた。

「おやぁ、お久しぶりのご対面なのに随分な物言いですね、たっくん?」

――愉快そうに漏れ出る含み笑いに同調するように、光源と物理法則を無視して己の影が立ち上がる。それは次第に巧の像としての形すら歪め、気づけば彼のものではなくなった影は色素の薄い紫色の髪を伸ばした、無貌の少女の像を取っていた。

――。

――特異点Fを

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灰に還る。 3

「アンタ、もうそろそろ寿命みたいね」
「……だったらなんだよ」

 顔を合わせるなり不躾な女。眼鏡をかけた東洋風の女性が睨みをきかせ、巧も反射的にガンを飛ばす。

「というか……ここ俺の部屋だぞ、なんでお前がいるんだよ」
「お前とは何よ、無礼な奴ね。理由なんて簡単でしょうが……」

 少し俯く女性。巧は決して自身の現状を悲しんでのものではないだろうと予感しており、これから爆発する彼女の台詞もまた、

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ばぁん・とぅ・しんだぁす 2

 カルデアは静まり返っていた。どこかへ顔を出せば厄介で賑やかな面々が必ず居合わせた頃が、まるで夢のよう。

「どうすっかな」

 あてもなく管制室を出たものの、どこへと足を運んだものか。
――ふと耳に入る、騒がしい電子音。

(あれは確か……)

――。

「なんだ、お前かよ」
「あ……マスター」

 レクリエーションルーム。
 本来、マスター候補生やスタッフらが職務の合間に憩うための設備だったと

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――! 1

――噛み砕きたくなる程の憎悪、飲み込むのも躊躇われる不快感。鼻を刺す、憤怒に繋がる臭い。

――ヒトは嫌いだ。どこで、いつ、どのようにして。怨讐に至る原点どころか自分にまつわる記憶さえも、何も覚えていない。確かなことは一つ、自分が抱くこの殺意。故に何ら問題はない、これの他には何もいらない。

(――新宿? なんだ、真名が開示されないサーヴァント? ……アヴェンジャーの霊基反応!? たっくん、警戒を

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Burn to Cinders ジャンクション

 ――さあ、どこへ行こう。

1.世界を包む炎の消え失せたエントランスから、獣の遠吠えが聞こえた。

2.もはや誰もいるはずのない一室、光と音がこぼれている。

3.通りがかった自室の前で不意に立ち止まる。まさかとは思うが。

4.突然背後から漂う気配に振り返ると、己の影が不自然に伸びている……。

5.“瞳を開け“と告げる声を聞いた。

Burn to Cinders 微睡み

――玉座を残して神殿は崩壊した。もはや獣の兆しはない。

「コフィンからの覚醒に一時間ほどかかったし、筋肉疲労、魔術回路の消耗、細かな外傷は山ほどある……が、キミは無事このカルデアに帰還した」

 レフ・ライノールの手で屠られた二〇〇余名のスタッフ、今もなおコフィンでまどろむ四十七人の凍結されたマスターたち、熾烈な最終決戦にその身を投じたメンバーの中でただ一人生じた未帰還者、そして――。
 彼……

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Reunited ( Swan Lake "Returns" part-I )

※五次創作です。二次創作、作品クロスオーバー等が苦手な方は申し訳ございませんが、ご理解の程、宜しくお願い致します。

前回 #2

――あの。朝でも夜でもありませんから、起きてください先輩。お休みのようでしたが、通路で眠る理由が、ちょっと……。固い床でないと眠れない方なのでしょうか?

「あ? ……ああそうだ、こんぐらいの方がちょうどいいんだ。わかったら、どっか行けよ」

――君は……ああ、招集さ

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Tell Me Why ( Swan Lake "Returns" part-I )

※五次創作です。二次創作、作品クロスオーバー等が苦手な方は申し訳ございませんが、ご理解の程、宜しくお願い致します。

前回 #1  

――確かにそれは廃棄された。そこにいる筈のないモノが、しかし確かにここにある。理解を拒む現実。事実との齟齬が生む、目のくらむような不快感。ああ……ならばきっと、これも悪い夢なのだろう。

――。

「――どうしてアンタが」
「ふふっ、素敵な顔してるわよスズカ。”廃

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