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『光る君へ』におけるケアと物語
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の第32話「誰がために書く」を観た。紫式部を主人公に据えた今年のテーマは、文学であると睨んでいた。長い序章を経て、ようやくその本質に切り込み始めた回だった。
一条天皇は、最愛の中宮・定子を失って、絶望していた。その悲しみを癒すために、彼は定子に仕えていた日々を描いたききょう(=清少納言)の著作『枕草子』を読み耽る。同書は、一条天皇にとって定子の生きた証であ
『生きることは頼ること』を上梓しました
講談社現代新書さんから、『生きることは頼ること──「自己責任論」から「弱い責任」へ』を上梓いたしました。本日から書店で販売されています。
この本のテーマは、自己責任論を批判しながら、かといって無責任さをただ肯定するのでもなく、もう一つの責任概念として、「弱い責任」を提唱するというものです。
自己責任論は、基本的に、誰にも頼ることなく、自分のことを自分自身で決定することができる、自律的な人間像
愛の帰結としての怪物化──安亜沙「一角獣の謎」を観て
安亜紗がO Gallery eyesにて2024年6月24日から6月29日にかけて実施した個展「一角獣の謎」を観覧した。今回はその感想である。
今回の展示には三つのモチーフが存在する。まず、心斎橋に存在するスクエアセンタービル、次に、古代ギリシャのミノタウロスをめぐる神話であり、そして最後に、ルネ・マグリッドの結婚論である。
スクエアセンタービルは、1970年に建築された建物で、地上6階、地下
「AIゆりこ」について
東京都知事の小池百合子氏が、「AIゆりこ」というコンテンツを、公式SNSで発信している。
これについては色々と考えるべきことがあるけど、さしあたり指摘するべきこととしては、欧州を中心にAIの倫理的課題を指摘され、包括的な指針の策定が進められている中で、こうしたコンテンツを政治家が発信するのはいささか不用意である、ということだ。
しばしばAIは人間の責任の領域を曖昧にするとして批判される。そもそ
糖質ゼロカルパスとショート動画
糖質ゼロのカルパスというものがある。
おやつについつまんでしまう。
糖質ゼロだから、基本は無である。
口が寂しいときには、いつ食べてもよい。
朝食の直後だろうが、夕食後だろうが、寝る前だろうが関係ない。
いくら食べても太るということはない。なんといっても糖質ゼロなのだから。
そんな馬鹿なことを考えていくと、当然太っていくわけだが、糖質ゼロ=いつ食べても構わないが、危険なのだ。無はいくら足しても
格闘技の技を道場の外で使用するのはやめましょう
僕は大学生のときに、大学の近くにある空手の道場に通っていた。大学でフルコンタクトの空手部に入っていたのだが、練習が激しすぎてやめた。何かめちゃくちゃな稽古やトレーニングを強いられたわけではないのだが、先輩が強すぎて、ゲーム性が崩壊していたのだ。
大学近くの道場はライトコンタクトだった。これは、組手のときに本気で相手を強打するのではなく、いいタイミングで技が入ったらポイントを取って、そのポイントの
ミニマリストについて
ミニマリストには二種類いると思っている。一つは、最適化されたミニマリスト、もう一つは、反時代的なミニマリストだ。
最適化されたミニマリストは、その都度の状況に応じて、必要最小限の道具だけを持とうとする人である。こうした人は、実は、たくさんの商品を買っては、そのほとんどをろくに使いもせずに廃棄したり、転売する。なぜなら、どのように最適化するかはその人が置かれた状況によって左右されるのであり、最適化