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筋肉との対話

筋トレが好きな人は、しばしば、筋肉をある種の友達として表現する。筋肉に語り掛け、筋肉と対話し、筋肉と合意を交わす。そうすると筋肉はこちらの期待に応えてくれる。筋肉は裏切らない。そういう言説をよく見る。

僕は筋肉が友達だとは思わない。なぜなら僕は筋肉を傷つけているからだ。もし僕が筋肉だったら、僕のようなやつを決して好きにはならない。できれば僕の肉体から離れて、穏やかな筋肉たちが住まう農村的な筋肉共同体でつつましく生きていきたい。

ただ、友達だとは思わないが、筋肉と対話することはある。それは、激しい筋トレのせいで、筋肉が痙攣を起こしそうになっているときだ。あとちょっとでも身体を動かしたら、身体攣る。筋肉がそう僕に予告する。「怒るよ?」と。そう言われることは、実際に怒られるよりも、ずっと怖かったりする。

そういうとき、僕は筋肉のご機嫌を伺うような気持ちになる。「まぁまぁ、ごめんごめん、悪かったよ」と。筋肉の様子を見ながら、その怒りのボルテージを気にしながら、大人しく動かないようにしておく。

それに比べて脂肪は軟弱だ。なんなんだこいつは。筋肉のように誰かに歯向かうでもなく、かといって自分から行動するわけでもない。何もせずにだまってそこにいる。そこから一歩も動くまいとしている。起きているのか寝ているのかもわからない。

やっぱり筋肉の方が友達になりたいかも知れない。ジャイアンに対するスネ夫のような関係であったとしても。

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